《オピニオン》「新国立競技場に『地中熱を』」地中熱利用促進協会が提言

2020年東京オリンピック・パラリンピックに向けて新国立競技場の整備計画再検討が進むなか、地中熱利用促進協会が提言を発表した。8月に行われた首相官邸の意見募集に応えたもの。東京オリンピック・パラリンピックが猛暑日と重なる時期に予定されていることを踏まえ、猛暑対策として地中熱の活用を訴える内容だ。

再生可能エネルギーの積極的な導入・利用は、日本の招致委員会が世界に向けてアピールしていたことでもある。国際公約を果たすという意味からも、同協会の提言は前向きに検討されるべきだろう。以下、その内容を抜粋する。

[画像:新国立競技場の建設配置図 資料:新宿区]

『地球環境に配慮を、猛暑対策に地中熱を』 ―新国立競技場の整備計画見直しに向けての提言―
NPO法人地中熱利用促進協会 理事長 笹田政克

真夏の大会では選手や観客などの健康を考えた時に、冷房の工夫が必要であることは言うまでもありません。予想される猛暑の中でも多くのエネルギーを消費せずに冷房を行う方法に地中熱利用があります。夏でも地中はひんやりとしており、東京では10m下の地中の温度は、年平均気温と同じ17℃です。35℃を超える猛暑日では、気温と地温との差は20℃近くになり、この温度差が冷房に活用できます。四季のある日本ならではの再生可能エネルギーの利用法です。

地中熱ヒートポンプの利用では、通常のエアコンと比較して消費電力が3分1程度削減でき、大きなCO2排出量削減効果があります。また、猛暑日でも通常のエアコンのように電力消費量の大きなピークをつくりません。電力需給が逼迫した真夏に適した冷房といえます。また、競技場からの排熱を大気中に放出しませんので、都心のヒートアイランド対策にも役に立ちます。

地中熱は夏の冷房ばかりでなく、冬には温熱として暖房に利用できます。冬も東京では地中の温度は17℃ですので、気温の低い日や夜間に必要な暖房が効率的にできます。

地中熱は冷暖房以外にもスポーツ施設特有の熱需要に適用できます。新国立競技場ではグランドに天然芝を育成し、サッカー、ラグビーなどのフィールド競技を行う計画があります。しかし、観客席が屋根に覆われ日照の制約があると、天然芝には地温管理等が必要となるといわれています。広いグランドの温度管理には多くのエネルギーが必要となりますが、グランドのすぐ下には地中熱があります。地中熱の利用により化石燃料を最小限に抑えた天然芝の育成が可能になります。

また、真夏の大会では60℃を超えるトラック舗装材の冷却も必要となるでしょう。特に短距離のスタート地点の冷却はより必要性の高いものと思います。トラックの冷却は舗装材に冷水パイプを埋め込むシステムで実現できますが、その冷熱源にはグランドのすぐ下にある地中熱が最適です。地中熱の利用によりアスリートが良好な競技環境で活躍でき、しかも地球環境に配慮したシステムができます。

地中熱利用では地中に熱交換器を設置しますので、その分導入コストがかかりますが、この度建設される新国立競技場は長期にわたって利用されるものですので、ライフサイクルコストで考えれば、ランニングコストが安い地中熱を利用した方が経済的になります。また、運転経費が安く済むことは維持管理上の大きなメリットです。地中熱利用設備は十分な耐久性をもっており、地中熱交換器の耐用年数は50年以上あります。したがって、長く使うスポーツ施設の設備には最適です。

地中熱は、これまでに羽田空港の国際線ターミナルビルや東京スカイツリーなどの施設に、又地方でも公共施設、農業施設、介護施設等で利用されており、年々認知度が向上してきています。近年のオリンピック・パラリンピックでは、2008年北京大会でメインスタジアムに地中熱ヒートポンプが大規模に導入されています。

地球温暖化が進む中、猛暑対策も含めて、大会運営に地中熱などの再生可能エネルギーが活用されることを強く望みます。

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