【トーヨーカネツ/東京工業大学】1万㎥級液体水素タンク開発開始。「水素発電」時代の需要増見据え

[画像・上:現行のLNG貯蔵タンク(左)と、開発予定の液化水素タンクの構造比較。極低温で貯蔵するために、魔法瓶のような内外の二重殻で保温性を確保する(提供:トーヨーカネツ)]

タンク製造の世界的大手であるトーヨーカネツ(東京都江東区)はこの11月、液化水素の1万㎥級タンク建設の開発に着手したことを発表した。開発は東京工業大学教授の井上剛氏及び轟章氏と共同で進め、今後3年間をかけて液体水素貯蔵用大型タンクの技術的基盤確立を目指す。

国内では現下、燃料電池自動車(FCV)の市販が開始され、家庭用燃料電池(エネファーム)には都市ガス改質を必要としない純水素型も登場し実証が始まった。水素関連市場は今後成長を続け、経済産業省「水素・燃料電池戦略ロードマップ」によると2030年頃には1兆円規模に、2050年頃には8兆円規模に到達することが予想されている。

「ロードマップ」の時間区分で言えば、フェーズ2や3が開始されるとされる時期にあたる。この際、水素そのものの需要を加速度的に増やす水素利用の要素技術は、水素を燃焼して発電する大規模水素発電であると言われている。同じく「ロードマップ」では、2030年頃から「発電事業用水素発電の本格導入」が開始されるとされている。

事業系発電開始によって水素需要が大幅に増える理由は、大規模水素発電で必要とされる水素使用量の桁違いの多さだ。液化天然ガス(LNG)火力発電や原子力発電を、将来的に水素発電が代替すると想定すると、出力も同等レベルの1基あたり100万kWが必要になる。この規模の出力を発揮するために使用される水素量は、1基あたり年間約23.7億N㎥との試算が経産省「水素・燃料電池戦略協議会」では示されている。FCVの223万台分、純水素形エネファームの105万台分に相当する莫大な量を、事業用水素発電は1単位で消費する計算だ。

常温常圧で気体の水素を大量運送・大量貯蔵するための「水素キャリア」技術も、国内で開発が進められている。川崎重工などが開発中の、水素の液化もそのひとつだ。同じく水素キャリア技術である有機ハイドライドなどとは違い、水素使用の局面で化学的な改質を必要としない利点がある。

一方で貯蔵タンクに関しては、川崎重工が種子島宇宙センターに持つロケット燃料用でも1基あたり約540㎥。また形状も、耐圧の関係から球形、もしくは葉巻型(FCVの蓄圧タンクのような形状)が一般的だ。桁の違う水素をひとつの施設で必要とする水素発電普及を見据えれば、水素タンクの容量そのものを大型化する必要があり、大型タンクに向いた形状を採用する必要もあると言える。

そこでトーヨーカネツは、これまでLNGなどで培ってきた豊富な貯蔵タンク建設技術を液化水素用タンク開発に応用させる方針だ。タンク形状も、LNG用としてなじみの深い平底円筒竪型と呼ばれるタイプを採用。東工大・井上氏の熱工学の知見と、轟氏の構造制御の知見とを合わせ、開発チームを形成する。

トーヨーカネツが手掛け岡山県倉敷市に構築した、容量16万kℓのLNGタンク。1万㎡液化水素タンクにおいてもこの「平底円筒竪型」の外形を採用し開発が進められる(提供:トーヨーカネツ)

トーヨーカネツが手掛け岡山県倉敷市に構築した、容量16万kℓのLNGタンク。1万㎡液化水素タンクにおいてもこの「平底円筒竪型」の外形を採用し開発が進められる(提供:トーヨーカネツ)

ただし液化や貯蔵において水素は、マイナス162℃のLNGよりさらに低温のマイナス253℃という極低温状況が必要で、求められる技術的レベルはもう一歩高くなる。対応の一環として、内槽と外槽からなるタンクの2重殻構造は踏襲しつつ、槽の間の空間には熱伝達を極限まで低下させるべく真空状態にする予定だ(LNGでは窒素を充填している)。タンク底面には繊維強化プラスチックと硬質ウレタンを用いて、さらなる断熱性と強度向上を図る。

加えて、水素独特の現象として脆性の問題もある。金属面の被毒対策、特に溶接部の技術的ブレークスルー達成、そしてその技術の経済性確立は開発の大きなテーマのひとつとのことだ。

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