連載「100%自然エネルギー地域をゆく㉔」太陽熱地域熱供給とスマートエネルギーシステム ~デンマークでの先進事例

これまでもデンマークなど欧州各国での自然エネルギー(バイオマス等)を利用した地域熱供給について紹介をしてきましたが、2010年以降、太陽熱を利用した地域熱供給(SDH:Solar District Heating)の導入がデンマークを中心に進んでいます。

●欧州の地域熱供給はポスト・バイオマス視野に

欧州各国の地域熱供給では、これまで自然エネルギーの利用としてバイオマスの利用を進めてきました。しかし近年広まりつつある国内バイオマスの資源制約や輸入バイオマスの持続可能性の懸念などから、様々な自然エネルギーの導入が可能な第4世代地域熱供給と共にバイオマス以外の自然エネルギーの導入が始まっています。

昨年(2016年)には、SDHの施設数はデンマーク国内だけでも100カ所を超え、太陽熱パネルの総面積は100万㎡を超えています。=図1 *1

[画像・上:図1=デンマーク国内に導入されている太陽熱地域熱供給(計画を含む)出所:PlanEnergi]

欧州全体では250以上のプラント(出力350kW以上)があると言われており、その総出力は750MWに達し、年率30%のペースで増加をしています*2

地域熱供給での太陽熱の利用は熱需要の小さい夏季が中心となりますが、大型の蓄熱槽を活用することで夏季には100%近い太陽熱の利用も可能です。さらにヒートポンプを利用することで太陽熱が不足するときの熱供給の補填や、戻り温度を下げることによる蓄熱槽の利用効率向上が可能です。

●季節スケールの蓄熱も実施可能

通常の鉄製の蓄熱槽ではなく、埋設式の巨大な蓄熱槽を導入することで季節間の蓄熱も可能となります。夏に蓄熱した熱を秋に使う、さらにヒートポンプを使うことで冬季にも利用が可能となります。通常の太陽熱地域熱供給では年間を通じた太陽熱の利用割合は40㌫程度が最大となりますが、季節間蓄熱槽やヒートポンプを活用することで100%に近づけることが可能となります。

ヒートポンプについては、風力や太陽光からの余剰電力を利用して、ヒートポンプや蓄熱などによる電気と熱のスマート化(セクターカップリング)を実現する検討が始まっています。今年9月中旬にコペンハーゲンで開催された国際会議でも、第4世代地域熱供給と共にスマートエネルギーシステムに関する発表が、多数行われました*3

●「熱も100%自然エネ」の動き

図2:デンマークDronninglund村の太陽熱地域熱供給
出所:Dronninglund地域熱供給(資料に加筆)

デンマーク・ユトランド半島北部のDronninglund村(約1,300世帯)の地域熱供給協同組合では、2014年に世界最大規模(当時)の太陽熱地域熱供給施設を導入しています。環境税により高額になっている天然ガスのCHP(熱電併給システム)からの転換で、総面積約3.8万㎡の太陽熱パネル(熱出力26MW)により燃料を約50%削減することを目指しています(実績は約40%)。

デンマークでは、天然ガスからバイオマスへの転換が許可されないため、太陽熱が最適な選択肢となっています。季節間の蓄熱槽として、従来の蓄熱槽(800㎥)に加えて容積6.2万㎥の地下式蓄熱槽を設けて、バイオ燃料の熱で駆動する吸収式ヒートポンプで夏季以外に必要な加温を行っています。

さらに将来の計画では、風力発電からの余剰電力を活用した地中熱ヒートポンプを導入して、化石燃料をほぼゼロ(自然エネルギー100%)にすることを目指しています。

(松原弘直=認定NPO法人環境エネルギー政策研究所(ISEP)理事・主席研究員)

 

*1PlanEnergi “Solar Heating” http://planenergi.eu/activities/district-heating/solar-heating/

*2SDH(Solar District Heating) http://solar-district-heating.eu/

*3“3rd International Conference on Smart Energy System and 4th Generation District Heating” http://www.4dh.eu/conferences/conference-2017

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