経産省、「水上太陽光」安全・設備管理を指示 電事法改正で水上設置固有の技術基準制定へ

溜め池や湖などの水面にパネルを敷設するタイプの発電所である水上太陽光発電所に対して、経済産業省は発電設備に関する構造の健全性や保安規程の規定を指示した。

[画像・上:野立てと水上設置型の支持部の技術的相違点。経産省は電気設備に関する技術基準の解釈の改正を進めている(資料:経産省)]

背景にあるのは、2019年9月に千葉県市原市で発生した水上太陽光発電所の破損事故とそれに伴う火災がある。当時上陸した「観測史上最強」クラスの勢力を持った台風15号の強風に設備があおられた結果だった。

事故原因を検討するべく、実務者協議の場である経産省の産業構造審議会 保安・消費生活用製品安全分科会 電力安全小委員会 新エネルギー発電設備事故対応・構造強度ワーキンググループ(WG、座長=勝呂幸男・横浜国立大学産学連携研究員)で議論が行われてきた。その場で、①台風による強風と波によりアイランドと呼ばれる水面の浮体構造群(野立ての架台・基礎に相当)に応力集中、つまり一部のフロートに荷重が偏る現象が発生し、②この応力集中がフロートを引張応力により係留するための土中・水中のアンカー・係留索などの設計耐力を上回り、破損に至り、③破損し隆起したアイランド内で幹線のPN間アークの発生により近傍のフロートが発火し延焼が発生した、という連鎖のプロセスがあったと結論付けた。

同WGの検討結果を踏まえた今般の指示は、野立てと異なり付加的に考慮する必要のある水上太陽光における外力・荷重への対応・確認を事業者に対して指示している。指示の具体的な内容はまず、(1)強風・豪雨や積雪、凍結、地震などの気象時特有に発生する外力・荷重に対して十分考慮されて設計・施工がなされていることをメーカー・施工企業に改めて確認すると共に、その設置環境を踏まえた安全確保策の検討だ。また必要に応じて新たに対策・補強なども行い、事故防止に向けた安全管理に万全を期すことも指示されている。

水上設置型太陽電池発電設備の設計時に考慮・検討すべき荷重・外力など(資料:経産省)

次に(2)水上太陽光発電設備の支持物(架台・フロート・係留索・アンカーなどの一式)について、アンカーとの係留部やフロート間などの接合部に損傷が無いことや、フロートの樹脂部材の劣化が無いことなど、特に当該設備について留意するべき内容を巡視点検時に確認するよう保安規程に規定することを指示。さらに(3)破損事故が発生した場合、感電や樹脂製部材による火災が発生するおそれがあることから、破損事故の覚知後、これらの二次被害を防止する措置や第三者の立ち入りを禁止するなどの措置を速やかに講じること、またこれらの対応を保安規程などに規定することも指示している。そして、電気事業法の第42条第2項に基づき(4)必要な保安規定の変更については、5月末までに管轄エリアの産業保安監督部へ届け出ることとしている。

WGでは、支持物の要求性能に関する現行のJIS規格や民間ガイドラインは野立てを前提に作成されており、水上太陽光はその想定から外れる部分があることも指摘された。そこでJIS規格およびガイドラインが根拠としている電事法における電気設備の技術基準の解釈において、設計時に考慮・検討するべき水上特有の荷重・外力(波力・水位など)や部材性能について、電気設備の技術基準の解釈第46条第2項に盛り込むべく経産省は規定改正に動いている。改正案はパブコメを経て6月に公布・施行される予定だ。

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