木質バイオマス導入事例レポート:群馬県上野村(下) 地域のバイオマス生産量に見合った規模で設備導入

《「木質バイオマス導入事例レポート:群馬県上野村(上)」から続く》

バイオマス・コージェネレーションへのステップアップ

その後、群馬県上野村では木質バイオマス利用によるコージェネレーション導入に進む。ペレット工場が稼働を始めた2011年は、再生可能エネルギー普及拡大が始まった時期であり、さまざまな情報が飛び交っていた。しかし、平地が少なく、谷間では日照時間も短いため太陽光には適さない。村では唯一日射条件の良い老人福祉施設で蓄電池付き太陽光発電が導入されているだけだ。さらに風況も発電に適するほどではなく、温泉もない。地域条件からはバイオマスだけが可能性のある選択肢だった。一般に木質バイオマス発電では、規模が大きいほど発電効率が良いというが、熱出力が膨大となり利用しきれないと考えた村は、逆に発電出力180kWのブルクハルト社製超小型ガス化発電の導入を決定する。

[画像・上:ガス化発電は「燃料を選ぶ」側面も持つ。その意味でも燃料製造・調達が重要になってくる]

木質ペレットガス化熱延併給装置は、木質ペレットを脱水して熱分解し、酸化還元を経て燃焼用ガスを製造するもので、これ自体も熱出力を有する。発生したガスは、ディーゼルエンジンの燃料として、発電機を駆動し、また熱を供給する。

ガス化発電は燃料の選択肢が狭まるのが実態だ。幅広い燃料が利用できると謳うガス化炉もあるが、タール発生などの難点があるという。幸い、ペレット燃料とガス化炉の相性は良い。この点、上野村は先にペレット工場を稼働させており、ガス化コージェネレーションに適した環境にあった。

こうした経緯で、2014年9月から建設を開始した上野村村営発電所は、2015年4月から稼働を開始した。総事業費は3億5,000万円で、平成26年度群馬県森林林業再生基盤づくり交付金により2分の1の補助を受けた。燃料としては年間約900tのペレットを消費する。

発電した電力はFIT制度による売電はせず、村内施設で利用している。電力のほかに、270kWの熱供給が可能だが、この熱は、関東最大のシイタケ工場である「きのこセンター」で利用している。暖房利用ではなく、吸熱式冷凍機を介して、冷房用に利用しているのが特徴だ。さらに、いちごの温室への利用も考えているという。

シイタケの栽培では菌床が発熱するので農業ハウス内では冷房が必要だ。そこでこの冷熱に関して、発電由来の熱を吸熱式冷凍機に通すことで賄っている

シイタケの栽培では菌床が発熱するので農業ハウス内では冷房が必要だ。そこでこの冷熱に関して、発電由来の熱を吸熱式冷凍機に通すことで賄っている

成功する木質バイオマス利用のあり方とは

超小型ガス化発電を導入したことで、上野村は「域内の木を使い、森を守る」というスタンスを変えずに木質バイオマス発電を開始できたと言える。ここでは、20年にわたる燃料調達ができるかといった疑問は起こらない。持続可能な森林資源利用のサイクルの中で発電用の燃料資源も調達可能な量になっている。加えて、ガス化システムは、ガスエンジンとの組み合わせとなるため、大形化は困難だが、規模のわりに発電効率は高めだ。

難しい点としては、燃料の許容範囲が狭いところで、上野村の導入したブルクハルト社のガス化炉では、欧州のENPlusA1規格を満たすペレットが求められる。上野村ではスギ、カラマツ、さらに広葉樹を原料にこれを生産している。ペレットは品質が規格化されていることがメリットであり、機器が対応しやすくなる。インドネシアやマレーシア、タイなどでもこうした規格に準拠した生産体制がある一方、日本国内ではペレットの規格作りが遅れており、こうしたところも木質バイオマス利用の障壁となっている。

上野村が幸運だったのは、Iターンした新しい村民を中心に、あらたな林業従事者が確保できた点もある。林業従事者が今後とも地域に存在するということでなければ、資源がいくらあろうと、継続的な利用は不可能だ。また、新参入した林業従事者は、旧来の林業の固定的なスタイルに拘泥せずに、林産資源のカスケード利用といった概念を受け入れやすいということもあったかも知れない。

いずれにしても、木材は建築用材や家具材料などとして使えるならばそうするべきだ。一方で、そうした利用が図れないC材も、廃棄物ではなく資源である。これを前提とした上で、エネルギー利用をいかに効率的に構築するかを考えることが大切ということを、上野村の事例は示している。すなわち、エネルギー利用が木材需要の規模を決定するのではないし、発熱を伴うバイオマス利用は、熱利用が効率的になされてこそ意味がある。

上野村の年間予算規模は30億円程度という。このうち、エネルギーコストは4.6億円あり、重油を燃やせばこの分は村外に流出する。もちろん、買電分も流出といえる。ペレットを利用することで、これが村内経済として還流する効果は大きい。さらに、村内各戸でペレットストーブを導入することで、こうした経済効果はさらに大きくなる。地域活性化に成功した木質バイオマス利用として、上野村の事例は関心を集めており、全国各地からの視察が絶えないという。

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