【ルポ】青森県横浜町の「小形風力ガイドライン」を追う(上)

青森県横浜町(野坂充町長)は10月、小形風力発電(20kW未満)施設建設に関するガイドラインを制定し、公表した。風力発電施設の事業成立性は風況に大きく左右される。青森県の下北半島は風力発電では以前から注目を集めていたエリアであり、東通村や六ケ所村などともに、大型風力発電設備が既にいくつも立地している。適地として関係者には有名だった町で何があったのか、現地で話を聞いた。

[画像・上:菜の花と風力発電施設が町を代表する風景といえる横浜町。町も風力発電推進の立場なのだが]

20kW未満施設を対象に

同町のガイドラインは、20㌗未満の小型風力発電施設及び付帯設備の建設にあたって、町民の安全・安心や環境保全、景観形成の観点から遵守すべき事項や調整の手順を示すもの。基本的に住宅地周辺への建設は避けることとし、住宅から500mの離隔をとることや、500mから700mまでを緩衝地帯として、全ての世帯や公共施設などから建設の同意を得るよう求めている。他にも、最も近い住宅等での騒音が昼間55デシベル、夜間45デシベル以下に抑えられていることや、低周波音、電波障害、景観、光害、文化財への配慮について基準を規定している。

手続き面でも、計画段階での関係住民などを対象とした事業説明の実施及びその結果の町への報告を規定。設備認定通知や接続契約などの写し、周辺居住者の同意書などの町への提出を求める。建設後についても、事故や故障、さらには騒音や電波障害などのトラブルに対し、原因調査及び誠意ある対応と町への報告を規定。更に事業終了時の施設撤去も求めている。

同町の担当者によれば、ガイドラインは10月5日に取り急ぎ策定し、その時点では求めに応じて文書を提示していた。その後、町への問い合わせが多いこともあり、10月27日には同町の公式ウェブサイトで公開した。あわせて、10月26日付けにて内容を精査したとのこと。

リスクコミュニケーションの重要性

横浜町は以前から風力発電の立地を契機とした地域振興には積極的だった。そのスタンスは今も変わりはない。しかし、ガイドライン制定が関係者の知るところとなってから、町の担当者はガイドラインに抗議する多くの電話の応対に追われている。

関係者の間では知られた話だが、横浜町がこうしたガイドラインを作るきっかけとなったのは、10月3日に発生した小形風力発電施設の事故だ。運転開始して間もない風車が強風で暴走したと見られる。原因などは今後の調査を待つ状況だが、一般的に、強風時には発電せずに風車を止めるのが風力発電の常識であり、暴走した風車にも停止装置が設置されていたという。一体何があったのかと首をひねるような事故だ。加えて、町の担当職員の話によれば、一番近い民家までは40~50mの距離とのこと。業者も現場に駆けつけたというが、停止させることはできなかった。夜間に轟音を上げて回転する風車を誰も止められない事態に、近隣住民は恐怖を抱いただろうことは想像に難くない。

町では、これまで小形風力の立地をコントロールする制度は持っていなかったという。住民の不安の声に、自治体は規制に乗り出さざるを得ない状況だったようだ。一方で、多くの事業者において、ガイドラインの撤回なり要件緩和がなければ、予定していた風車の建設・運転が実現できないこととなる。

特に問題視されているのは、住宅から500m以上離れなければならない規定だ。事業を企画する側からすれば、小形風力に適する風況の地点は海岸沿いが多く、一方海岸沿いには民家が多い。大型風力なら民家の少ない内陸側にも適地が求め得るが、ハブ高の低い小形では難しい。

500m、700mというのは、先の事故時の影響範囲を勘案したものという。町に寄せられる反論には、そうした稀な事故を元に基準を決めるのかという声もあるという。しかし、事故は絶対起こらないなどと言えるはずもない。

こうした状況を解きほぐす上で大切なのは、リスクコミュニケーションである。施設毎に、具体的なリスクを定量化して関係者間で共有することが望まれる。もちろん事業者に説明を求めるのは当然で、ガイドラインでも説明会が義務づけられている。しかし、事業者の説明は事業者毎にまちまちであろうし、町が説明会の場を設け、説明すべき項目や進め方を規定するなど、主体的に関わる方が望ましい。

もちろん、様々な事故を想定して、どう対処するか、どうした被害がありうるかといった事項の説明は必須だ。そして、その説明の信憑性を高めるのは、多くの事故事例の分析・評価結果である。現在調査中ということだが、今回の事故についても、もちろんそうした事例評価の対象とされなければならない。(

《「青森県横浜町の「小形風力ガイドライン」を追う(下)」に続く》

)今回事故を起こした機種(C&Fグリーンエナジー「CF20」)は、11月21日付けで日本海事協会の小形風力形式認証が一時停止とされた。認証を一時停止した風車は新規出荷停止となる。また、日本海事協会が指定する期日までに問題解決ができない場合は認証取消しとなる。

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

Find us on Facebook

アーカイブ

カテゴリー

ページ上部へ戻る