【リポート】第36回水素エネルギー協会(HESS)大会(上) 幅広い領域の水素研究が一堂に

(一社)水素エネルギー協会(HESS)の、年のまとめの研究発表会である「大会」が、11月28日と29日の2日間にわたって都内で行われた。冒頭の挨拶に立ったHESS会長の西宮伸幸・日本大学教授は「巷では『水素は究極のエネルギー』と呼ばれることもあるが、実は究極とは『時期尚早』を意味する場合もある。水素を現在進行形の技術と認識してもらうためにも、『エネルギーシステム』としての提案が必要だ」と指摘。「水素社会」実現に向けた個々の水素要素技術を貫く研究開発の視点、さらには政治・経済・文化的な視点の重要性を強調した。

[画像・上:第36回水素エネルギー協会(HESS)大会の会場の様子。開会挨拶に立つ、HESS会長の西宮伸幸・日本大学教授]

製造・輸送・貯蔵・利活用まで、水素に関する幅広い研究領域をカバーするのが学会としてのHESSの特徴だ。今大会でも、(公財)鉄道総合技術研究所による「燃料電池鉄道車両の開発と燃料電池の劣化特性」、神奈川大学などのチームによる人工光合成の研究である「シアノバクテリアおよび紅色細菌のニトロゲナーゼに基づく光生物学的水素生産の諸特性と光及び培養条件の検討」、新エネルギー研究所ほかのチームによる「有機ハイドライド液相脱水素触媒とSOFCによる水素の再生と利用」など、基礎研究から応用の研究、そしてそれらを横断する研究まで、多岐に亘る研究開発の成果と経過が発表された。

第一線の研究者に交じり、若手研究者にも多くの発表の機会が設定されるのもHESS大会の恒例だ。今年も、口頭で6件、ポスター展示で20件の学生発表が行われた。そして、各大学で行われているこれら意慾的な水素研究の中から、優秀発表賞として次の4件が選出された。

東京大学・兼古寛之氏ほかによる「ZnSe:Cu(In,Ga)Se2光カソード及びBiVO4光アノードを用いた光電気化学的水分解による水素製造」は、太陽光と水のみから水素を製造する光触媒技術の分野での研究だ。この水電解において、還元反応から水素を発生する高効率な光カソードのひとつとして、ZnSe(ジンクセレン)とCu(In,Ga)Se2(銅インジウムガリウムセレン)系物質との固溶体が有力視されている。

しかしこの固溶体に太陽光を照射して実際に得られる電流値は、理論値を大幅に下回る。研究チームはその原因を固溶体生成プロセスにあると判断。特に表面近くの膜構造改善を目指し、新たな生成手法を開発した。

こうして製造した固溶体光カソードに、光アノード(酸化反応から酸素を発生する)としてBiVO4(バナジン酸ビスマス)とを組み合わせ、セルを形成した。このセルで、外部印加電圧を用いない水の分解反応を行った。結果、太陽光-水素エネルギー変換において1㌫以上の高い効率を達成している。

(下)に続く】

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