FREAの2020年度シーズ事業・17件が採択 「先駆けの地」目指す地で再エネ技術の実用化目指す

(国研)産業技術総合研究所の中の、再エネ最先端研究機関である福島再生可能エネルギー研究所(FREA)が実施している「被災地企業等再生可能エネルギー技術シーズ開発事業化支援事業」の令和2年度(2020年度)の実施課題の採択決定がされた。

[画像・上:3月に福島県浪江町で開所した大規模再エネ水素製造施設「福島水素エネルギー研究フィールド(Fukushima Hydrogen Energy Research Field (FH2R))」。20MWの太陽光発電から得た再エネ電力で水電解するが、その太陽光パネルにはアンフィニ・福島工場(福島県楢葉町)で製造した「Made in 福島」のパネルも一部で導入されている]

同シーズ事業は、2011年3月に発生した東日本大震災の被災地である福島県宮城県岩手県の3県に所在する企業が持つ再エネに関するシーズ(技術発明能力人財など)の開発に際して、FREAの持つノウハウや研究設備などを活用した技術支援事業を平成25年度(2013年度)から行ってきた。これまでのべ138件が採択されて、そのうち昨年時点で19件が研究開発を経て既に実用化商品化されている。

平成30年度(2018年度)からは、複数の企業や団体などから構成されるコンソーシアム型も設定された。事業実施の体制面も、福島県の外郭団体である(公財)福島県産業振興センターの再エネ関連産業集積に特化した機関であるエネルギーエージェンシーふくしまが、許認可などの側面で実用化を支援する形態に強化された。

今年度は、コンソーシアム型9件、個別企業型8件の計17件が採択された。採択された案件は今年度末まで、FREAによる技術支援が実施される。

今年度採択案件の中で、アンフィニが代表を務める福島モデル太陽電池モジュールの開発(代表地域:福島県楢葉町)、北拓が代表を務めるウィンドファーム安定運用支援技術開発(代表地域:福島県いわき市)、北芝電機が代表を務める再エネ水素熱利用技術開発(代表地域:福島県福島市)などが昨年度から継続採択された一方で、日本カーネルシステムによる車載用太陽電池計測システム開発(代表地域:福島県福島市)や、いいだてまでいな再エネ発電によるメガソーラーと風力発電を併設するクロス発電の実証(代表地域:福島県飯館村)などが新規採択されている。

被災地である東北地方は風力をはじめ再エネ資源の賦存量が元来大きいこともあり、再エネに対する期待度は高い。特に福島県は「再エネ先駆けの地」を目指して、関連企業誘致に加え、2040年に再エネ発電総容量を県内電力需要総量以上にする目標を掲げるなど、導入にも積極的だ。FREAのシーズ事業では事業終了後3年以内に全体の30%が実用化されるというハードルの高い目標が設定されている。地域の再エネに対する高い意識にも支えられて、今後、技術の実用化に向けて一体的な開発が展開されることになる。

令和2年度(2020年度)「被災地企業等再生可能エネルギー技術シーズ開発事業化支援事業」採択案件(各項目は、課題名実施企業名代表地域の順。コンソーシアム型の企業名冒頭は代表企業)

【コンソーシアム型実施課題】
[太陽光発電分野]
●「福島モデル太陽電池モジュールの開発」アンフィニ/アサカ理研/カナメ/クニミネ工業/山王/さんのう(福島県楢葉町)
●「廃棄太陽光発電パネルガラスの有効資源としての利用促進に関わる研究開発」廃ガラスリサイクル事業共同組合(岩手県奥州市)
●「融雪型太陽電池モジュールの事業化支援」アンフィニ/大日本印刷(福島県楢葉町)
[風力発電分野]
◇「大規模風力開発に資する複雑地形風況アセスメント技術開発」福島発電/JR東日本エネルギー開発(福島県福島市)
◇「風力大量導入を支える被災地発ウィンドファーム安定運用支援技術の開発」北拓/朝日ラバー/アルプスアルパイン/シンクランド(福島県いわき市)
[地熱地中熱分野]
■「耐熱型ボアホールスキャナーによる地熱井温泉井の健全利用技術の実用化」ボア/地熱エンジニアリング/三井金属資源開発(宮城県栗原市)
■「地質調査孔を用いた熱応答試験の標準化と福島県見かけ熱伝導率分布図の作成」福島県地中熱利用技術開発有限責任事業組合(ふくしま地中熱LLP)福島県郡山市
[蓄エネルギー分野(水素熱)
▽「再生可能エネルギー利用拡大に向けた水素熱利用関連技術開発」北芝電機/IHI/アネスト岩田/アポロガス/クレハ/山王/ジュークス/日本化学工業(福島県福島市)
[再生可能エネルギー管理分野]
★「分散電源制御技術と統合エネルギーマネージメントシステムの適合性評価」会津ラボ/FEP/日本工営(福島県会津若松市)
【個別企業型実施課題一覧】
[太陽光発電分野]
●「高性能高接着強度実現に向けた結晶シリコン型太陽電池電極ペースト用ガラスフリットの開発」AGCエレクトロニクス(福島県郡山市)
●「車載用PV計測システムの開発と評価」日本カーネルシステム(福島県郡山市)
[風力発電分野]
◇「風力発電機用ブレード保護シートの改良」藤倉コンポジット(福島県南相馬市)
◇「小型液滴エロージョン試験装置の開発」トミー精工(福島県浅川町)
[地熱地中熱分野]
■「岩手県の温泉地における小型温泉発電装置の長期実証試験支援」リナジス(宮城県仙台市)
■「地熱発電所操業データを用いた異常検出システムの開発」奥会津地熱(福島県柳津町)
[蓄エネルギー分野(水素熱)
▽「水素貯蔵のための新規アンモニア合成触媒の開発」堺化学工業(福島県いわき市)
[再生可能エネルギー管理分野]
★「クロス発電の実証」いいたてまでいな再エネ発電(福島県飯館村)

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