≪新エネルギー企業リポート≫NTTアノードエナジー:グループの持つICT・直流・DX・分散エネの技術を結集
- 2020/6/26
- 総合
- 新エネルギー新聞2020年(令和2年)06月22日付
地域のレジリエンス強化とさらなる再エネ導入目指す
NTTグループのエネルギー関連事業を一元化するため、2019年6月にNTTアノードエナジー(AE)は設立された。NTTグループの保有する資産やICT技術・直流給電技術を活用し、スマートエネルギー事業を推進。持続可能な社会の実現を目指す。
[画像・上:TNクロスらと協業して推進している、千葉市におけるスマートエネルギーシティー実現に向けた取り組み]
「系統を補完する当社の直流給電技術によって、地域のレジリエンス強化と、さらなる再エネの導入拡大が可能になる」と話すのは、取締役スマートエネルギー事業部長の谷口直行氏だ。NTTグループでは通信設備の安定運用のため、バックアップ電源として蓄電池を事業拠点内に設置しており、非常時には直流で電力を供給する。この直流技術と再エネを組み合わせ、新たな電力供給の仕組みとして提供する実証が、千葉市で行われる。
NTT-AEは、TNクロス、東京電力ホールディングスと共に、千葉市でスマートエネルギーシティーの実現に向けた共同実証を実施する。取り組みの一つは千葉市の避難所へ太陽光発電設備・蓄電池を導入し、電源バックアップ整備を支援することだが、NTT-AEは更なるレジリエンス強化のため、千葉市内のNTTビル敷地に太陽光発電設備・蓄電池を導入し、近傍避難所との間に直流自営線を敷設、電力を供給する。NTTビルから、避難所4カ所程度への給電を予定している。太陽光発電設備が十分に設置できない施設や、天候により発電できない場合にも、NTTビルから避難所の蓄電池を充電することで、電源を継続的に維持できる。最終的にはNTTグループの事業拠点内の蓄電池をはじめ、共同実証で導入されるNTTビル・各避難所の太陽光発電設備や蓄電池などを、予備力・調整力として既存の電力系統と高度に連携・制御するためのシステムを確立し、ICTによる地域のエネルギーマネジメントシステムを構築する。
NTT-AEは早期に地域エネルギーマネジメントをモデル化し、他地域にも展開する。全国にNTTビルは約7,300棟あり、各地域で避難所などに使用される公共性の高い施設に向け、再エネ電源と蓄電池から直流自営線で電力供給できる。またNTTグループは「EV100」に加盟しており、約1万1,000台の社用車を2030年までにEV化する予定だ。非常時にはEVにより電力供給できる。千葉市の実証でもEV駆付給電が計画されている。
NTT-AEの地域モデルは、再エネの導入を拡大し、平時にはエネルギー利用効率向上を、非常時には限られたエネルギーの有効活用を目標とする。「NTTグループでは通信技術とエネルギーのシナジーにより、瞬間的にニーズを把握し、平時には消費電力に合わせて、非常時には必要な場所へ必要な量を供給したいと考えている。将来的にはオールフォトニクス・ネットワーク『IOWN』によって、そのシナジーを最大化することを構想している」(谷口氏)。NTT-AEは旗振り役となり、エネルギーのスマート化を推し進める。