≪解説≫Ampt 太陽光発電「リパワリング」の可能性(下):リパワリングに伴う電圧区分の変化への解決策としてのストリングオプティマイザ

【前回(上)より続く】

今年でFIT制度は施行から9年目を迎えようとしている。そのような中、再エネ主力電源化の要件の一つである「長期安定電源」となるべく、これからも持続的に発電事業を行うためのメソッドとしての「リパワリング」を提案するのが太陽光のスペシャリスト、アンプトだ。その要点を説明していただく第2回目では、リパワリングの具体的な方法論を語っていただいた。

[画像・上:ストリングオプティマイザの設置状況]

【◆説明するスペシャリスト◆】アンプトジャパン 日本支社長 近藤 茂樹 氏
最新PCSへの交換で対処が必要なケースも

リパワリングの方法としてのPCSの交換は、以下二つの点で有効である。

①PCS交換時に新たに保証期間が始まる、特にメーカーが撤退したPCSを使用している発電所では残りのFIT期間の安定した発電を担保するためには交換は必須かもしれない。
②最新のPCSはFIT開始当時に比べ変換効率が高く、新PCSに交換するだけで3~5%の発電量向上が期待できる。

PCS交換するにあたり技術面と制度面で以下内容の考慮すべき点がある。

 [技術面]
FIT開始当時のPCSは最大直流入力電圧が600Vの仕様がほとんどであり、太陽電池のストリング動作電圧はPCSに合わせて400V程度になるような直列数となっている。例えば結晶系太陽電池モジュールの場合14直列が多い。最新のPCSでは技術が進んで変換効率を上げるために最大直流入力電圧が1,000Vの仕様になり、太陽電池のストリング動作電圧は600V程度が必要である。従って現状の14直列を20直列に変更する作業が必要になる。ストリング動作電圧が600Vの場合、直流のストリング開放電圧は800Vを超えることになる。

 [制度面]
電気事業法に基づく電気設備技術基準の電圧種別では、低圧(直流750V以下、交流600V以下)と高圧(直流750V以上、交流600V以上~7,000V以下)とがあり、直流のストリング開放電圧が800Vを超えると種別が変わることになり発電所の工事仕様や安全基準が変わることになる。14直列から20直列に変更すると同時に電気設備技術基準に準拠して高圧仕様ケーブルへの交換やケーブル敷設の工事仕様の変更が必要になる。工事が大変になるため工事期間が長くなりその間の発電損失を考慮すると投資に見合わない場合もでてくる。

図1:新型PCSへ置き換えた場合の結線図

ストリングオプティマイザはこの問題を解決することができる。ストリングオプティマイザが直流電圧を調整することで、太陽電池の配線工事や法的な高圧区分への変更なしで、低圧区分の電圧範囲で最新の1,000V系PCSを使用可能になる。図1に1,000V系PCSに置き換えた場合の結線図を示す。1,000V系のパワコンがフルに動作できるように、ストリングオプティマイザが太陽電池ストリングの出力電圧を調整するため、太陽電池ストリングの直列数を変更する必要がない。また、電圧は直流750V以下に保てるので「高圧区分」へのケーブル変更なども必要ない。

PCSの置換えは出力容量が同じであれば、経済産業省への届け出と電力会社との協議は必要であるが、調達価格が変更されることはない。また、集中型から集中型、あるいは集中型から複数のストリングPCSへの変更も可能である。将来のメンテナンスコスト削減を目的として集中型PCSから複数のストリングPCSへの変更も考えられる。

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