≪特集:環境省「太陽光モジュールリユースガイドライン」策定≫「適切なリユースモジュール」の判断基準として重要度増す「I-V検査」・「EL検査」

太陽光巡る「循環型経済」形成に向け求められる市場と検査体制の構築

5月、環境省は、「太陽光モジュールの適切なリユース促進ガイドライン」を策定した。今後増加していくことが予想される、排出モジュールへの対応を念頭に置いたガイドラインだ。一方で実際にはモジュールのリユース・リサイクルビジネスは既に動きだしている。そこで本稿では、再エネを巡り導入時や稼働時のみならず、廃棄時にも「経済と環境の好循環」を生み出すものとして、その取り組みの一例を取り上げる。

[画像・上:排出太陽光モジュールの処理のフロー(環境省資料を一部改編)]

5月に発表された「太陽光モジュールの適切なリユース促進ガイドライン」。モジュールの延命や資源の有効活用の手段の一つとしてリユースは捉えられている。策定した環境省はモジュール排出の本格化の時期について、FIT制度導入初期案件の買取期間が終了する2030年代後半からと予測している。但し現時点でも災害などにより突発的に排出が増加する事態は発生している。

そのような中、環境省は学識経験者や関連団体・企業などを交えてモジュールリユースに関する検討会を2020年度から開催してきた。検討会で議論された、モジュールのリユース品としての客観的な状態、流通できるための条件や対処するべき事項をまとめたのがこのガイドラインになる。ガイドライン策定にあたってはパブコメも実施されている。

今後の太陽光モジュール排出量推移の予測(資料:経産省)

ガイドラインではその具体的な目的について、「太陽電池モジュールをリユースしようとする際、関係する事業者がリユース品として必要な状態とそれを確認、証明する方法を示すことにより、太陽電池モジュールの不適正なリユースを防止するとともに適切なリユースを促進すること」としている。対象となるのはモジュール、モジュールと一体的にリユースされるジャンクションボックス、及び接続ケーブルなど。PCSや接続箱は「汎用的な電気機器や部品となる」ために対象外とされている。また対象となるモジュールの種類に関しては、少なくとも当面の間、排出モジュールの太宗を締めることになる結晶シリコン系を想定している。

リユース品判断基準は、既存の一般的な電気・電子機器リユース基準をベースとしてより太陽光モジュールに特化し、モジュールの「製品情報・外観」、「正常作動性」、「梱包・積載状態」、「中古取引の事実関係及び中古市場」についての各要素を示し、「リユース促進の観点からリユース品としての客観的な状態、流通できるための条件や対処事項」が示されている。

太陽光モジュールのリユース・リサイクル・埋立処分に係る企業のイメージ(資料:環境省)

重要なのは、これまで制度上存在しなかった「モジュールがリユース品であるか否か」を把握することのできる最低限の基準が示されたことだ。さらには、把握にあたってより正確な性能や安全性を得るために、発電性能の検査例としてI-V(電圧電流特性)検査やEL(エレクトロルミネセンス)検査、そして絶縁検査として目視検査や水槽浸漬、絶縁抵抗検査などの具体的な電気検査手法が例示された点も重要になる。

本基準に基づき示される機能性から、買手はリユースモジュール購入の判断を行うことになる。つまり本ガイドラインは、モジュールリユースの市場が形成されるにあたり最低限の基準を示すことにもなる。基準の閾値がガイドラインで示されていないのは、具体的な状態や条件については市場の「取引者間の合意によって決められる」とされているからだ。さらに海外に輸出されるリユースモジュールでも、輸出者が廃棄物ではなくリユース品としての機能を有することを自ら証明できるとしている。

廃棄物行政を所管する環境省は、2018年には太陽光モジュールのリサイクルに関するガイドラインの最新版も策定している。今般のリユースガイドラインと相まって、太陽光発電にまつわる循環型経済、及び環境と経済の好循環の形成に向けて、また一歩踏み出したことになる。それは、太陽光が主力電源となるためにも不可欠の要素の一つだ。

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