連載「100%自然エネルギー地域をゆく82」世界の風力発電市場の最新動向 ~安定成長を続ける世界と日本の課題

2020年を迎え世界の自然エネルギー市場は過去10年間、急成長を遂げていますが、その中でも風力発電は太陽光発電に先行して1990年代から導入が始まり、特に欧米や中国で導入が進んだ主力の自然エネルギーです。

世界全体の風力発電の累積設備容量は2015年末の時点ですでに原子力発電の設備容量(約400GW)を超えて安定した成長を続けていますが、速報では2019年には累積の設備容量が600GWを超えて、同じく600GWを超えた太陽光と合わせて約1.2TW(1,200GW)以上に達しています(1GW=100万kW)*1

世界全体では2019年に風力発電は1年間に60GW以上が新規に導入された推計されますが、太陽光と風力を合わせると年間導入量が180GWに達して史上最高だったようです。世界の風力発電は、2015年に新規導入量が約63GWと過去最高を記録しましたが、その後は50GW以上で安定した市場となっています。

その結果、2009年から2019年までの10年間に安定した成長を遂げた風力発電の累積導入量は約4倍になっています。

安定した成長が続く中国の風力発電

この風力発電市場は2010年以前には欧州の一部の国(ドイツやスペインなど)や米国が牽引していましたが、2010年以降は中国が風力発電市場を先導しており、欧州各国(英国、フランス、イタリア、トルコ、スウェーデン、ポーランドなど)や他の新興国(インド、ブラジルなど)でも導入が進んでいます。

中国での風力発電の年間導入量は2014年以降、毎年20GWを超えており、2019年の年間導入量は約26GWでした。世界全体の風力発電の年間導入量約60GWの約4割を中国が占めており、日本国内での年間導入量0.27GWの実に100倍近くに達します。

[画像・上:図1=世界各国の風力発電の累積導入量の推移(IRENA,EWEA等のデータよりISEP作成)]

中国は2019年末には累積導入量が約210GWと風力発電が200GWの大台を超えています。いまや中国は世界一の風力発電の導入国であり、ヨーロッパ全体での累積導入量205GWを上回り、日本国内の累積導入量3.9GWの50倍以上に達しています(図1)。2019年末の時点で風力発電は中国内の全発電設備容量の約10%に達しており、2019年の風力による年間発電量は406TWhで中国全体の年間発電量の5.5%に達しています*2。中国では自然エネルギーによる年間発電量が2019年に全発電量の26.4%に達し、その中で風力発電は、火力発電や水力発電に次ぐ第三番の電源としての地位を固めて、原子力発電の年間発電量の割合4.8%を超えています。

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