連載「100%自然エネルギー地域をゆく82」世界の風力発電市場の最新動向 ~安定成長を続ける世界と日本の課題

導入が進む洋上風力発電

近年注目されている洋上風力発電については、2019年に5.6GWが世界全体で新規導入され、累積導入量では約28GWに達していると推測されます(風力全体の約4%)。イギリスでは風力発電の導入が洋上風力を中心に進み、累積導入量24GWのうち洋上風力として世界第1位の10GWが導入されています(世界全体の約35%)。

2019年には中国で2GWが新規に導入されイギリスを抜いて世界一の洋上風力の市場になっています。欧州ではイギリスで約1.8GWの洋上風車が新規に導入され第2位になり、第3位はドイツの約1.1GWでした。

日本国内でも、環境アセス中の洋上風力の案件は2019年末時点で約14GW以上あり*6、2018年12月には「再エネ海域利用法」が施行され、海域利用のルール整備が進んで、一般海域の促進区域の指定が始まっています*7。促進区域での事業の実施にあたっては公募や入札が前提となっており、系統接続のコストを決定する電源接続案件募集プロセスの入札や2021年度からのFIP(Feed-in Premium)制度や入札制度の導入など洋上風力発電を取り巻く制度には多くの制度的な課題もあります。

世界の後を追う日本の風力発電市場

中国以外のアジアの新興国では、インドの新規導入量が2019年に2.4GWとなり、累積導入量は約38GWに達して世界第4位の風力発電導入国です。一方、日本の新規導入量は約0.27GWで、累積導入量は3.9GWでようやく4GWに近づいた段階です。年間発電量に占める風力発電の割合も日本全体の1%未満とまだまだ非常に小さい状況です。

それに対して、FITの事業認定は約10GW(2019年9月末、運転開始を含む)近くに達し、環境アセスメントが手続き中のプロジェクトが約29GW(2019年12月、JWPA調べ)あり、今後の風力発電市場の成長が国内でも期待されています。電力系統への接続済みの風力発電の設備はすでに4GWを超えており、接続申込み承諾済みでは約15GWに達しています。

これに対して現行のエネルギー基本計画が想定する2030年の電源構成では風力発電の導入目標は1.7%(10GW相当)とかなり低く、中長期的な導入目標の上方への見直しと共に、環境アセスメントの手続きや電力系統の接続ルール改善や送電網の拡充、新たな電力市場を取り入れた電力システムの改革などが課題となっています。

(松原弘直=認定NPO法人環境エネルギー政策研究所(ISEP)理事・主席研究員)

*1:新エネルギー新聞コラム(2020年1月27日付)
*2:
China Energy Portal “2019 electricity & other energy statistics(preliminary)”
*3:
AWEA Blog
*4:
Wind Europe “Wind Energy in Europe in 2019”
*5:
Agora Energiewende “Emission certificate prices push greenhouse gas emissions and coal-fired power generation to record lows in Germany in 2019”
*6:
日本風力発電協会「2019年末日本の風力発電の累積導入量」
*7:資源エネルギー庁「洋上風力発電関連制度」

《参考記事》
連載「100%自然エネルギー地域をゆく81」世界で進む自然エネルギーの電力分野での導入状況 ~2019年の最新データより
連載「100%自然エネルギー地域をゆく80」欧州各国の自然エネルギー割合の推移と目標 ~欧州のエネルギー・気候政策の実績

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