船舶用燃料電池システムの開発開始【ヤンマー】トヨタ製ユニットをベースに
- 2020/6/1
- 水素
- 新エネルギー新聞2020年(令和2年)05月25日付

ヤンマーとそのグループ会社でエンジンの開発・製造・販売を行うヤンマーパワーテクノロジーは、船舶用燃料電池システムの開発に着手した。
[画像・上:船舶用燃料電池ユニットパッケージングイメージ(提供:ヤンマー)]
ヤンマーはこれまで船舶用パワートレインとしてディーゼルエンジンや、LNGとディーゼル燃料の併用が可能なデュアルフューエルエンジンなどの炭素低排出内燃技術を投入し、世界各国の排ガス規制に対応してきた。その一方で世界的な環境規制は強化され続けており、排ガス規制により航行を制限されるエリアが制定され、また国際海事協会は今世紀中に船舶からの温室効果ガス(GHG)の排出ゼロを目指す目標を発表するに至っている。
このような背景からヤンマーは、船舶パワートレインの内燃機関の低炭素化のみならず、燃料電池を導入した脱炭素の方向性も探っている。2018年には(国研)海上・港湾・航空技術研究所 海上技術安全研究所と(一財)日本船舶技術研究協会と共にコンソーシアムを組成し、国土交通省より受注した「水素燃料電池船の安全ガイドライン策定のための調査検討事業」の一環として、燃料電池を搭載した試験船による実船試験を広島県尾道市沖の瀬戸内海で実施した。試験船に搭載した出力60kWの燃料電池システムはヤンマー製の固体高分子形燃料電池(PEFC)で、豊田通商との共同研究によってカナダのバラード社製モジュールを搭載し製作されている。
今般の開発では車両用の燃料電池ユニットをベースに船舶用に仕立てる計画だ。2020年2月には、量産型燃料電池自動車「MIRAI」を製造・販売しているトヨタ自動車と覚書を締結。MIRAI用の燃料電池ユニットと高圧水素タンク(タンク本体が非金属素材で構成されるタイプ4のタンク)を使用した船舶用燃料電池システムの開発を目指す。
開発した燃料電池システムはヤンマー製のボートに搭載し実船の実証試験を実施する予定。この試験船の詳細なスペックは未定だが、船体はヤンマーのボートのラインナップ中で38ftクラスのモデルを中心に検討されている。MIRAI用燃料電池モジュールや水素タンクは複数導入される予定であり、マリナイズと呼ばれる船舶搭載用設計による搭載性の向上がキーになる。実証試験は2020年度内からの開始が予定されており、実船の運用を通じて商品化・実用化を見極める。

