エネ貯蔵「先進国」日本「お家芸」を活かし次の一手に踏み出す時【蓄エネの総合会議「ESSJ」開催特別インタビュー】アクセンチュア 戦略コンサルティング本部マネジング・ディレクター 伊藤剛氏

ESSJ2020、12月8日にオンライン開催決定
企画委員・アクセンチュア戦略コンサルティング本部マネジング・ディレクター伊藤剛氏のインタビュー(2020年2月24日号)を再掲載します。

IEA()によれば2018年の世界のエネルギー貯蔵の導入拡大は記録的な水準に達し、2017年のほぼ倍になった。特に「Behind-the-meter」、すなわち需要家側に設置された設備はほぼ3倍に達し、2年連続で系統側(グリッド規模)と同等の投資がなされている。また両方のカテゴリで韓国、オーストラリア、日本、ドイツ、米国が大幅に成長した。

エネルギー貯蔵分野の導入量で先行する主要国は韓国であり、中国、米国、ドイツと続くが、「海外と日本の市場環境は近づいている」とアクセンチュア戦略コンサルティング本部マネジング・ディレクターの伊藤剛氏は話す。「新しいエネルギーシステムのために双方が知恵を出し合う環境が整った」と分析する同氏に、エネルギー貯蔵の国際動向についてうかがった。

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―エネルギー貯蔵の国際動向で注目しているのは

実は一番注目しているのは、日本です。日本は2015年ごろまでは、おそらく世界一のエネルギー貯蔵大国でした。揚水発電のほか、ビルなどでの蓄熱式空調、住宅ではエコキュートとして普及が進む蓄熱設備など、エネルギー貯蔵技術の普及が進んでいたためです。

最近では蓄電池も着実に売れ行きを伸ばしていて、数年内には経済性に見合う価格となり、一気に普及が進むでしょう。

エコキュートなど国内市場に定着している様々なエネルギー貯蔵技術と結びつき、新しいビジネスを生み出す可能性がある。そうすれば、日本はもう一度エネルギー貯蔵大国に返り咲くのではないかと考えています。

―4月には発送電分離が始まります

一連の電力システム改革と再エネ電源の急速な拡大により、日本と欧米各国の事業環境は近づいています。例えば太陽光発電では、屋根置き自家消費型が基軸になろうとしていますが、この状況はドイツとよく似ています。蓄電池については、日本はまだBCPなどの理由で設置することが多いですが、ドイツは電気料金が高いため、コストを勘案しても蓄電池を太陽光発電に組み合わせて自家消費率を上げるユーザーが増えています。日本も今後は蓄電池の値下りが予測されますし、先行するドイツは参考になるはずです。

一方で以前とは異なり、海外のプレーヤーも日本の市場を注視しています。海外のエネルギー企業から投資対象となりうるスタートアップに関する問合せを受ける機会も増えてきました。海外から吸収するだけでなく、日本から提供できるものが出てくる。双方が新しいエネルギーシステムを生み出すために、知恵を出し合う環境になってきたと感じます。

―そのような環境で、エネルギー貯蔵はどんな役割を担うのでしょうか

私はエネルギー貯蔵の国際会議であるESSJ(エナジー・ストレージ・サミット・ジャパン)の企画委員を務めているのですが、「都市のレジリエンス」、「モビリティ」、そして「次世代エネルギーネットワーク」に、エネルギー貯蔵の果たす役割は大きいと考えています。6月(※12月8日オンライン開催に変更)に開催するESSJ2020では、この3つのテーマを中心に議論を展開する予定です。エネルギー貯蔵はこれらの社会変革、産業構造変革を支えるキーデバイスとなります。

昨年のESSJ会場より
―エネルギー貯蔵がまちづくりのキーデバイスになる

日本は今、将来にわたるまちづくりを考える機会が訪れています。短期的にはこの数年の自然災害によって露呈した都市インフラの脆弱性への対応、長期的には老朽化したインフラの更新が不可欠なことが理由です。どのように地域のレジリエンスを高めるのか。電力インフラとしては分散型電源に移行していくとしても、太陽光や風力といった再エネ電源は変動性という特有の問題がある。エネルギー貯蔵技術と一体で導入することで、電力インフラのレジリエンスを高めることが期待できます。

2020年1月にHSBCが発表した気候変動リスクのレジリエンスで67カ国中1位になったフィンランドでは、同国の配電会社エレニアが積極的に蓄電池活用に取り組んでいます。ESSJではオーストリアやフィンランドの政府関係者をお招きして、レジリエンスと街づくりについて議論する予定です。

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