「分散型エネルギープラットフォーム」全4回終了 需給一体型再エネ活用モデル構築に向け多様な課題抽出

●多様な参加者の議論から映し出される「再エネの現在と未来」

参加者の属性は、自治体職員、シンクタンク・コンサルティング、旧一般電力事業者と新電力、商社、メーカー、太陽光関連、金融関連など、正に多種多様だ。第1回には約350企業・団体から約450名が来場。第2回・第3回の個別ディスカッションでは約190企業・団体から各回約240名が参加した。そしてディスカッションでは参加者がターゲットとしている需要地の規模ごとに「家庭」・「大口需要家」・「地域」に分類。そこからテーマ分けし、さらにグループテーマ分けした上で24のテーブルグループが設けられた。

テーマごとにファシリテーターが任命され、各テーマの整理役を務めた。ファシリテーターは、環境エネルギー政策研究所(ISEP)の松原弘直氏・山下紀明氏・古屋将太氏、(公財)自然エネルギー財団の石田雅也氏・相川高信氏などの有識者13名が務めた。

再エネが様々なステークホルダーを持つことの証明のような参加者の多種多様ぶりだが、その議論で指摘された課題取組案も実に様々だ。

需要地「家庭」では、「FIT売電に代わる選択肢の検討」を大きな柱として、合計4グループ・38人が個別の議論を展開した。その中では「自家消費のインセンティブの検討」や「電力需要側・供給側が得るメリットの見える化」などが話題に上った。さらに再エネの持つ環境価値の課題として、その付加価値を安価かつ容易に取り扱うことのできる環境整備の必要性が指摘された。その解決策として、電力消費量だけでなく環境価値も直接算出できる方法などを開発・導入することによる環境価値の測定方法の多様化推進が指摘された。

需要地「大口需要家」では、「多様な需要家への普及」「自家消費しない余剰電力の取り扱い」をテーマに、合計7グループ70人が議論した。その中の話題の一つとして、ここでも環境価値に関する課題が指摘されている。現行の環境価値取引制度における認証方法とトラッキング方法の手続きが複雑煩雑で事務コストとなり、活用しづらいとの意見だ。これには電子化推進による手続きの簡略化などが解決への取り組みとして提案されている。

第三者所有モデル(TPO)の類型(資料:経産省資源エネ庁/環境省)

第三者所有モデル(TPO)に関しても、需要家側リスクの対応という側面から課題が指摘されている。欧米のRE100加盟企業は自社の消費電力用として、PPA(Power Purchase Agreement)を中心とするTPO形態の大型再エネ発電案件の開発を進めている。しかしTPOでは長期契約が必要になるため、需要家の信頼力が重要になる。そのために契約期間中の需要家の建物移転や倒産などのリスクがTPO導入の障害になっている。このリスク低減のための保険の開発や、中古パネル市場の整備が指摘された。

「大口需要家」においては、調整力に関する課題も指摘されている。これに対しては蓄電池の充放電を活用した上げ代・下げ代確保に加えて、余剰電力を熱にも活用する、つまり再エネ熱製造にも言及されている。

再エネ熱に関しては、需要地「地域」のテーブルでも話題となった。需要地別で最多となる、合計13グループ・124人が話し合った「地域」では、「地域課題を解決する再エネ導入」と題したテーマが掲げられた。そして、エネルギーの面的活用や地域マイクログリッドを念頭に置いた際に電力と共に融通される熱の重要性が強調されている。熱に関してはそもそも電力と比較してまだ理解が進んでいないことから、まずは地域資源としての未利用熱・再エネ熱の利活用の普及啓発・教育が重要と整理された。

エネルギービジネスを担う人材不足も「地域」の課題だ。この点に関しては民間提案制度のさらなる活用が提案されているが、その一方で地域におけるエネルギービジネスのハブや基礎として自治体の介在の重要性を指摘する意見もある。

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