NDC決定 GHG削減30年目標据え置き<2030年に26%削減>エネルギー政策との更なる連携 不可避に

パリ協定に定められた、「世界的な平均気温上昇を産業革命以前に比べて2度Cより十分低く保つとともに、1.5度Cに抑える努力を追求する」目標達成に向けたNDC(日本が決定する貢献、国別目標とも)が、3月30日、政府によって決定された。将来的な見直しに含みを持たせたものの、2030年の温室効果ガス(GHG)削減目標を据え置くとの内容は、もはや環境政策だけで気候変動対策を構築することが不可能であることを浮き彫りにする。

NDCは、内閣総理大臣を本部長とし首相官邸に設置された地球温暖化対策推進本部で決定された。パリ協定やCOP21(2015年)の合意により条約締結国は5年ごと(直近だと2020年まで)に国連気候変動枠組条例(UNFCCC)事務局に提出することが義務付けられている。

現在の各国のGHG削減目標では2度C目標の達成が難しいと指摘されており、また国連も目標値の上積みを求めている。そのような状況下で注目された中期目標に関してNDCは、2030年度にGHG26%削減(2013年度比)とのこれまでの数値を据え置いた。

一方で中期目標を「確実に達成する」と共に、現行の中期目標の水準以上も視野に中長期の両面で更なる削減努力の目標を模索すること、削減目標の検討は、エネルギーミックスの改定と整合的に更なる野心的な削減努力を反映した「意欲的な」数値を目指すこと、年限である5年を待たずに次の削減目標を提出すること、などの文言が添えられた。

「エネルギー政策が制約になった」。NDC決定を受けて開催された緊急の記者会見で、GHG削減目標を据え置いた理由を尋ねられた小泉進次郎環境大臣は異例の指摘を行った。数値は変わらなかったが「パリ協定の理念である野心的・意欲的な温暖化対策という理念に水を差してはいけない」、「26%削減目標から更に上を目指す意欲を明記できたことは大きい」とも付け加え、GHG削減目標に関する関係各省庁間の調整の苦労もにじませた。

小泉大臣はまた、関係各省庁と連携して今年11月に英国グラスゴーで開催されるCOP26までに削減目標の上積みを行う可能性にも言及している。エネルギー政策においてGHG削減と密接に関係するのは、来年改定されることが予想されるエネルギー基本計画(第6次)と、エネルギーミックスだ。

現行の第5次エネ基のエネルギーミックスにおいては、2030年の電源構成においてGHGを排出しない非化石電源である原子力発電が20~22%、再エネが22~24%となっている。この非化石電源44%の上限、および非化石電源の中で原子力と「キャップ(上限)はない」とされている再エネとの比率、それぞれが、従来の積み上げ式だけではなく、2度C目標とその後も見据えた視点によりリンクされた形で議論されることが求められている。

環境系NGOが改善求める声明発表

今回のNDC決定に対して、CO2排出削減脱炭素社会実現などを目指すNGO団体からは一斉に改善を求める意見が持ち上がっている。

世界最大規模の環境保護団体であるWWF(世界自然保護基金)は、日本の支部組織であるWWFジャパンを通じて、「日本は「世界第5位の(GHG)排出大国である」にも関わらず、今回のNDCは「国際社会で求められる脱炭素に向けてのリーダーシップとは真逆」の内容であり、「深く失望し、強い抗議の意を表明」した。またエネルギー政策主導の削減目標強化は、既得権益である「石炭原発温存を指向」することが先行し、脱炭素化に不可欠な再エネ中心の社会システムへの移行が妨げられると批判している。

この他、脱炭素化を目指す企業・自治体・各種団体合計460者以上が加盟する日本気候変動イニシアチブ(JCI)は、代表である末吉竹二郎氏のコメントとして、脱炭素に後ろ向きな日本とのレピュテーションリスクが発生して日本企業の海外進出に障害となることへの懸念を表明。また、世界120カ国以上1300以上の団体からなる気候変動NGOのネットワーク「クライメイト・アクション・ネットワーク」(Climate Action Network:CAN)の日本拠点、CAN-JapanもNDCに改善を求め声明を発表している。

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