≪真相インタビュー≫FAプロダクツ、非FIT電気「市場拡大のキー握るP2P取引拡大」
- 2020/4/7
- 太陽光
- 新エネルギー新聞2020年(令和2年)04月06日付

太陽光発電システム機器販売などを手がけるFAプロダクツ(東京都港区)は先ごろ、需要家と再生可能エネルギー発電事業者が直接合意できる電力取引(P2P電力取引)の実証プロジェクトを開始すると発表した。「FITに基づかない仕組みを使って、再エネ発電所の建設を今までどおり続けてもらえる市場づくりを目指す」と話すSmart Energy事業部長の今野彰久氏と、同部技術部長の菅原悠氏に、同社の狙いを訊いた。
[画像・上:Digital Energy Networkのイメージ]
FIT売電における太陽光発電ビジネスで多くの企業は、開発可能な用地を探し、各種許認可・申請対応ののち発電所を施工、投資物件として販売する事業を行っていた。一部の発電所は自社で所有するが、基本的には発電所を「作って売る」。工事単価や設備費などのコストは太陽光発電の普及に伴い圧縮されたが、FIT制度の抜本的改正などを受け、調達価格はそれらを上回る急速な低下を見せる。今野氏は「作った太陽光発電所を売って利益を出す事業は、もう成り立たない」と現状を分析し、「建設するとすれば、自社で投資する物件となる。さらなる再エネ普及のため、この新たに建設される発電所の非FIT電力に売り先を提供したい」とP2P電力取引実証の目的を語った。

再エネ由来電力に対する需要は世界的に急増している。日本でも同様だが、国内では調達する選択肢は限られており、安価では困難だ。FAプロダクツによれば、企業が既存電力会社から再エネ100%電力の供給を受ける場合、通常支払っている15~20円程度の電気料金に追加して、大手電力会社で1kWh当たり4~5円、再エネ新電力で1kWh当たり1.5円が目安の費用がかる。証書を購入もする方法もあるが、数量が少ない。
今回の実証は、同社の提唱する新たな再生可能エネルギー取引モデル「Digital Energy Network」の一環として、需要家が1kWh当たり1円程度の追加費用で、希望の再エネ電源から選択購入できる取引システムの構築を目標とする。取引システムは実証後に参画企業を募り、プラットフォーム化する予定だ。菅原氏は「P2P取引プラットフォームなら、需要家にそのまま売れるので、FITと同じ感覚で売電できる。『Digital Energy Network』に参加してもらえば、小売電気事業者でなくとも可能だ」と意義を説明する。

再エネの調達手段としては太陽光自家消費市場が拡大しているが、今野氏は「例えば製造業なら、3年から5年で投資回収する。10年掛けて回収するような設備に投資は難しい。大手など潤沢な自己資金がなければ再エネを入手できない。再エネが必要な企業はもっと多い」と見る。当面は高圧受電の法人需要家をターゲットとする。また菅原氏は「P2Pは、第三者所有モデルやVPP、DRなど様々なサービスとも連携できる」と強調。新たな非FIT市場を開拓するのに有用だという。
今野氏は「将来的には太陽光だけでなく、風力やバイオマスなどの取引も検討している。O&Mなど派生ビジネスも含め、業界を盛り上げていきたい」と意気込みを示した。

