EV用次世代急速充電器の効率運用目指す実証実験開始【関西電力】更なる大出力対応視野にピークシフトの可能性探る

関西電力は、電気自動車(EV)用の大出力・超急速充電器を導入し運用する際の効率的な運用のための実証実験を3月24日から開始した。

[画像・上:最高出力90kWの超急速充電器を用いた実証実験のイメージ。新電元工業製の本充電器は車種を限定することなく充電が可能だ(提供:関西電力)]

実証実験は、近畿地方を中心にチェーン展開しているホームセンターの1店舗、コーナン西宮今津店(兵庫県西宮市)に設置運用されている実機を用いて行われている。同店舗では充電器の管理・運用会社であるジャパンチャージネットワークが行うサービスを導入しており、一般のEVユーザーが料金を支払い充電する際の充電開始時刻・充電時間・充電エネルギーなどの技術情報を充電データとして収集。その上でデータを基に実際の稼働状況を確認分析することにより、効率的な充電器の運用方法や、機器導入時における店舗も含んだ最適な電力設備の構築形態の検討に繋げる。

来たる充電器「出力3桁」時代に設置する企業・電力会社が必要な対応

今回、「充電器を設置する側」の利便性を考慮した実証実験を開始した背景には、現在進行しているEVの車両側・EVへの充電側双方の「大容量化・大出力化」がある。

近年、EVに車載されるバッテリーは大容量化の一途を辿っている。日産自動車のEV「リーフ」は、同モデル中最大となる62kWhの容量を持つグレードを2019年1月に設定した。また北米のEVメーカーであるテスラモーターズは、最上位モデルである「S」に100kWhのバッテリーを搭載した最新版を2019年4月に発表した。テスラ・モデルSの航続距離は最大で595kmにもなる。

車載バッテリーの大容量化に伴い、充電器も大出力化が進んでいる。コーナン西宮今津店に導入された充電器は新電元工業製。従来の急速充電器だと最大50kWが中心になっているが、本充電器は最大出力が90kW(45kWの充電ケーブル2本を装備したマルチアウトレット仕様)のモデルだ。2018年12月の発売当時にCHAdeMOの充電プロトコルである1.2認証を国内メーカーで初めて取得した。

CHAdeMOプロトコル1.2認証は最大出力150kWまで許容する。その後に発表された2.0認証では、350kWから400kWでの超急速充電を想定している。

充電器の出力が大きいがゆえに課題が発生するのは、多くの法人の契約電力で用いられている「実量制」の仕組みがあるからだ。それというのも実量制(デマンド料金制度とも呼ばれる)では、過去の電力の時間帯別需要実績の中から最大値を基に未来の契約電力が決まるからだ。

例えば関西電力の高圧契約電力500kW未満における実量制(デマンド料金制度)では、契約電力は契約者の過去1年間(当該月とその前の11カ月)の最大需要電力(デマンド)により決定される。より厳密に言うと計量器が刻々と変化する需要電力を計量し、30分単位で平均値(平均電力)を算出しており、そのうち月間で最も大きい値がその月の最大需要電力となり、これを基に契約電力が決まる。

実量制のこの仕組みから言うと、大出力充電器を設置した場合、充電が集中する時間帯だけに突出して電力需要が高まり、その部分が最大需要電力として切り出されて契約者の規模と不釣り合いな契約電力になってしまう事態が起こることが可能性として存在するのだ。

今般開始された本実証実験では契約電力のこのミスマッチ対応を念頭に、実稼働から得たデータ収集と分析を通じて電力のピークシフトの可能性も検討する。

90kWの大出力充電器を用いた運用の効率化などを目指す実証実験を旧一般電気事業者が行うのは今回が初めての事例。実証実験は2022年3月31日まで実施される予定になっている。

  • このエントリーをはてなブックマークに追加
Web版ログインページ
有料契約の方はこちらから
Web版ログインページ
機能限定版、試読の方は
こちらから

アーカイブ

カテゴリー

ページ上部へ戻る

プライバシーポリシー