2030年度に燃料電池は4兆円市場に成長へ =富士経済調べ
- 2020/5/7
- 水素
- 新エネルギー新聞2020年(令和2年)04月06日付

民間の市場調査会社である富士経済(東京都中央区)は、モビリティ用から定置用まで各種ある燃料電池(FC)の世界市場の動向を調査。その結果を発表した。
これによると、2019年度の燃料電池の世界市場規模は2,513億円と見込んでいる。これは2018年度比で27.1%増となった。そしてその2018年度の世界市場は2017年度比で12.0%増となっており、市場拡大が続いた。タイプ別の構成比としては定置用が多数派であるものの、燃料電池自動車(FCV)や、本調査で駆動用と呼ばれるモビリティ部門で非乗用車搭載が伸びたことが全体を押し上げたという。
FCVは世界各地で堅調に伸びているが、さらなる普及のネックになっているのがインフラ整備と指摘されている。その一方で駆動用は、FCフォークリフト(FCFL)に続きFCバスFCトラック商用車の市場が本格的に立ち上がりつつある。脱炭素で大きな役割を果たすことが期待されている水素だが、まだ導入期であり社会実装の割合は高くない。
その中にあって駆動用は稼働率とも水素関連インフラの利用率とも高く、そのぶん相対的なコスト負担が小さい。さらに、駆動用には公共性が高い形で導入されているケースもある。例えばFCバスにはFCVの数倍の量の水素を搭載できる。トヨタ自動車のFCバスである「SORA」の蓄圧タンク(水素燃料タンク)容量は600リットルで、同じくトヨタの量産型FCV「MIRAI」のタンク容量122.4リットルの約5倍だ。またSORAは最高出力9kW供給電力量235kWhという大きな外部給電能力も持つ。従って災害停電の際に避難所における非常用電源としての活用が期待されている。
駆動用燃料電池の持つこの公共性により、環境行政交通行政を始めとする政策的な後押しが世界で進められている。本調査によると中国ではFCバスの普及が急速に進み、北米や欧州でも今後数年で1,000台以上が運行される計画があるとのことだ。
市場拡大に勢いがつくのは2025年と予想されている。これに関しては、主要各国が作成している燃料電池の普及ロードマップの目標設定が2025年以降であること、またこの時期から市場拡大に伴うコスト低減効果が表れて燃料電池の脱補助金市場自立化が進むこと、の2点の予想を根拠としている。
また2030年以降の展望として、FCVが燃料電池市場を牽引して長期的持続的に伸びると予測。その頃の市場の中心はFCVに加えて駆動用が占めるとする一方で、定置用である産業業務用や家庭用も堅調に伸びると予測。2030年度の燃料電池の世界市場は4兆4,724億円と、2018年度の22.6倍になると算出している。

