連載「100%自然エネルギー地域をゆく85」世界の自然エネルギーとグリーン・リカバリー ~世界各国の最新トレンド(2019年)
- 2020/6/5
- コラム
- 新エネルギー新聞2020年(令和2年)05月25日付
急成長が続く世界の太陽光発電
新型コロナウィルスの影響で世界全体の経済活動が停滞し、一時的に化石燃料の消費量が減少することで温室効果ガス(GHG)の排出量も減っています*1。しかし、このコロナ後の回復(リカバリー)の過程において積極的に自然エネルギーを取り入れた「グリーン・リカバリー」が国際自然エネルギー機関(IRENA)の行動連合(Coalition for Action)などから提案されています*2。さらにIRENA行動連合では、自然エネルギー100%やコミュニティエネルギーに関する提言のレポートもリリースしています。
世界中で自然エネルギーが急成長するなか、すでに主力電源となっている水力発電や風力発電に続き、太陽光発電の導入が世界各国でさらに進んでいます。IRENAでは世界各国の自然エネルギー発電設備の過去10年間のトレンドをまとめたレポートを毎年発行しています*3。
それによると世界全体の自然エネルギーによる発電設備は累積で25億kW(2.5TW)に達し、2019年には1年間で1億7,500万kW導入されて約7%増加しました*4。この累積導入量は全世界の発電設備の約3分の1にすでに達しています。2019年には世界全体で1年間に導入されている発電設備の約75%が自然エネルギーとなっており、さらにその9割近くを太陽光(約55%)および風力発電(約34%)が占めています。
世界全体の水力発電の設備容量は約13億kW(1.3TW)に達し、すでに原子力発電(約4億kW)の3倍以上になっています。風力発電も年間導入量が約6,000万kWで、累積では原発の約1.5倍以上の約6億kWに達しています。太陽光発電は、10年前の2010年には世界全体でわずか4,000万kWだった累積導入量が2019年末には前年から約1億kW増加して6億kW近くに達し、10年間で15倍以上になっています。すでに風力発電に続いて太陽光発電の設備容量も2017年末には原子力発電の設備容量を超え、風力と太陽光を合わせた設備容量が2019年末には原発の3倍以上の12億kW(1.2TW)を超えてさらに増加しています。太陽光発電の累積導入量では2015年以降、中国が世界第1位となっており、2018年に国レベルの買取制度が中断したにも関わらず、さらに導入が進んでいます。すでに中国が、世界の太陽光発電の年間導入量の3分の1近くを占め、約3,000万kW(30GW)を1年間で導入して累積導入量でも世界第1位です。
[画像・上:図1=国別の太陽光発電の累積導入量のトレンド(出所:IRENAデータ等よりISEP作成)]
その結果、2019年末までに中国は累積導入量で2億kW(205GW)を超え、圧倒的な世界第1位となっています(図1)。米国の累積導入量については、米国太陽光産業協会(SEIA)からの発表では、2019年末には7,700万kW(77GW)になり、世界第2位となっています*5(IRENAのデータでは約6,000万kWで第3位)。これに日本が約6,200万kWで続き第3位(IRENAのデータでは第2位)となっています。
太陽光大量導入の「新興国」が増加
ドイツは、2014年まで世界1位の累積導入量でしたが、2019年末では約4,900万kW(49GW)で第4位です。以下、累積導入量が1,000万kW(10GW)を超える国が10カ国(前年は8カ国)あり、急成長しているインドが約3,500万kW、イタリアが約2,000万kW、オーストラリアが約1,600万kW、英国が約1,300万kW、フランスが約1,100万kW、韓国が1,100万kWとなっています。
世界全体で累積導入量が200万kW(2GW)を超える国は26カ国(前年は21カ国)に上ります。その中には東アジアで急成長するベトナム(約570万kW)、欧州での新市場のオランダ(約670万kW)やウクライナ(590万kW)も含まれています。さらに、100万kW(1GW)を超える国は2018年は30カ国でしたが、2019年には37カ国の大幅に増加しています。
年間導入量でみると日本は前年に引き続き約600万kW(6GW)を2019年に新規に導入しましたが、それに対して米国はその倍の約1,300万kW、インドは約800万kWを新規に導入しています(図2)。世界全体で年間100万kW以上の太陽光を導入している国は14カ国ありますが、そのうち6カ国(中国、インド、日本、ベトナム、韓国、台湾)がアジアです。ベトナムでは600万kW近くが一気に導入されました。欧州でも2019年は100万kW以上の年間導入量となっている国がスペイン(400万kW)、ドイツ(380万kW)、オランダ(220万kW)、ウクライナ(390万kW)と4カ国に増えました。オーストラリアでは約460万kWが南部を中心に新規に導入され急成長しています。北米のメキシコ(190万kW)、中東のUAE(130万kW)でも導入が進んでいます。
風力発電については第82回の連載ですでに報告をしていますので*6、自然エネルギーの中で累積導入量(約13億kW)が最も大きい水力発電の導入状況を紹介します。世界全体では2019年には約1,300万kWが新規に導入されており、中国を中心にアジアではその半分の約700万kWが導入され、南米ではブラジルを中心に約600万kWが新規に導入されています。累積設備容量では、中国の3億5,600万kWを筆頭に、ブラジルが約1億1,000万kW、米国も約1億kWと続きます。日本の水力発電の累積設備容量は約5,000万kWですが、電力系統の柔軟性に貢献する蓄電機能のある揚水発電が2,200万kW含まれています。揚水発電の導入量がもっとも大きい国は中国の3,000万kWで、欧州全体の揚水発電2,800万kWよりも大きくなっています。
日本を含む一部の火山国で大きな導入ポテンシャルのある地熱発電については、全世界で2019年に新規で68万kWが導入され、累積設備容量は約1,400万kWになりました。国別では米国が約260万kWで第1位、インドネシア約210万kWで第2位、フィリピン約190万kWで第3位と続き、トルコ約150万kW、ニュージーランド約100万kW、メキシコ約90万kW、ケニア約80万kW、イタリア約80万kW、アイスランド約80万kWで、日本は約50万kWで第10位に留まっています。
(松原弘直=認定NPO法人環境エネルギー政策研究所(ISEP)理事・主席研究員)
*1:IEA “Global Energy Review 2020”
*2:IRENAプレスリリース “IRENA’s Coalition for Action Calls for Green Recovery Based on Renewables”
*3:IRENA “Renewable Energy Capacity Statistics 2020”
*4:IRENAプレスリリース” New renewable energy capacity hit record levels in 2019”
*5:SEIA “U.S. Solar Market Insight”
*6:新エネルギー新聞2020年3月23日付
《参考記事》
◆連載「100%自然エネルギー地域をゆく84」日本の100%自然エネルギー地域 ~エネルギー永続地帯の最新データ
◆連載「100%自然エネルギー地域をゆく83」2050年までに二酸化炭素排出実質ゼロを目指す自治体 ~地域から目指す脱炭素社会