連載「100%自然エネルギー地域をゆく84」日本の100%自然エネルギー地域 ~エネルギー永続地帯の最新データ

都道府県や市町村別などの地域毎に評価することで、より大きな割合で自然エネルギーを供給している地域を見出し、自然エネルギーにより持続可能な地域を将来に渡り増やしていくことが重要です。そのため、2007年から毎年、「永続地帯研究会」(千葉大学倉阪研究室と環境エネルギー政策研究所[ISEP]の共同研究)として日本国内の地域別の自然エネルギー供給の現状と推移を明らかにしてきています*1

「永続地帯2019年度報告書」の表紙。全文が以下のURLからダウンロードできる。永続地帯の専用HPはリニューアルされ見やすくなった https://sustainable-zone.com/sz2019report/

地域における自然エネルギーの割合が、その地域の持続可能性の指標として有効であり、その地域の特性に応じて太陽光や風力、小水力、地熱、バイオマスなどの様々な自然エネルギーを活用した実績を指標として評価することにより、これまで経済的な指標などでは捉えられなかったその地域の持続可能性を評価することが可能となります。

2020年4月に「永続地帯2019年度版報告書」*2で公表されたエネルギー永続地帯のデータ(2018年度推計)より、地域別の自然エネルギーの割合から各地域の特徴をみていきたいと思います。

地域の資源を活かして拡がる「永続地帯」

日本国内では、自然エネルギー(大規模水力を含む)の年間発電量に占める割合がようやく2018年度に17.5%になりましたが*3、2019年(暦年)では18.5%に増えています*4。2018年度の自然エネルギーの年間発電量の内訳をみると水力(大規模水力を含む)が7.5%と最も大きな割合になっていますが、太陽光が6.7%とその次に大きな割合を占めています。

このエネルギー永続地帯のデータで市町村別にみると2018年度の地域的エネルギー自給率(民生および農林水産部門のエネルギー需要に対する地域での自然エネルギー供給の割合)が100%を超える地域が119市町村に達しています。エネルギー需要には電気と熱の年間需要量を都道府県データから世帯数や従業員数などで按分することで市町村毎に推計していますが、運輸部門は含まれていません。

地域での自然エネルギーの供給では、太陽光、風力、地熱、バイオマス(地域資源による)、小水力(1万kW以下)による年間発電量、太陽熱、バイオマス熱、地熱(地中熱や温泉熱)の供給量が含まれています。電気だけを評価して地域の電力需要量に対して自然エネルギー供給の割合で100%を超える「電力永続地帯」と評価された市町村は186と日本全国の市町村数(約1,700)の約1割を超えました。

都道府県別にみると、エネルギー永続地帯の2018年度の推計では大分県、秋田県、鹿児島県、宮崎県、群馬県の5つの県で、民生(家庭、業務)および農林水産用の電力需要と比較した地域的な電力供給の割合が40%を超えていますが、都道府県毎に特徴があります()。さらに12の県で、その割合が30%を超えています()。

[画像・上:=都道府県別の自然エネルギーの供給割合のランキング(2018年度推計値)出所:永続地帯研究会(千葉大学倉阪研究室+環境エネルギー政策研究所)]

第1位の大分県では地域的な電力供給の割合が約50%に達し、その中で地熱発電が約14%に対して、太陽光発電の割合が約25%と上回っています。太陽光の割合が20%を超える都道府県は、割合の高い方から群馬県、宮崎県、栃木県、三重県、茨城県、栃木県、鹿児島県、大分県、岡山県、徳島県、山梨県、福島県、熊本県を含めた12県となっています。

=県別の地域的電力 自給率(トップ5)出所:永続地帯研究会

第2位の秋田県では風力発電の割合が約20%と全国で最も高く、小水力が約10%、地熱が約9%とバランスが取れていますが、太陽熱は約5%と低くなっています。風力では、青森県が16%と秋田県に次いで高くなっています。第3位の鹿児島県では太陽光の割合が29%と高くなっているほか、6%の風力、5%の小水力、4%の地熱発電があります。また、バイオマス発電は宮崎県が11%と最も高く、高知県7%と大分県5%が続いています。小水力では、第14位の富山県で24%、長野県で15%、秋田県が10%と高くなっています。

期待される「ご当地エネルギー」のさらなる発展

電力需要に対して100%を超える割合の自然エネルギーが供給されていると推計される市町村は186あります。そのなかで風力発電だけでも100%を超える市町村は33あり、地熱発電では5市町村ですが、小水力発電では64市町村あることがわかりましたが、あまり増加はしていません。

一方、2012年にFIT制度がスタートして太陽光発電の導入が急速に進み、42の市町村では太陽光発電だけで100%を超えており、増加傾向にあります。これらの発電設備のほとんどは、地域外の企業が所有・運営しており、地域の自然エネルギー資源を地域主体で活用するコミュニティパワー(ご当地エネルギー)としての取り組みが期待されています。また、地域での普及の遅れがみられる自然エネルギーの熱利用(太陽熱、バイオマス、地中熱など)への本格的な取り組みも期待されています。

熱も含み地域的な自然エネルギーの供給の割合が100%を超えるエネルギー永続地帯が119を超えましたが、まだまだ電力による寄与が大きい状況です。全国の地域的エネルギー自給率の平均値は約13%ですが、電力供給分が約12%、地熱などの熱供給分はわずか1%となっています。

全国の熱需要に対する自然エネルギーの割合は約5%ですが、その中で、19%の大分県(地熱)、17%の鳥取県(バイオマス)、15%の宮崎県(太陽熱、バイオマス)、14%の熊本県(太陽熱、バイオマス、太陽熱)、14%の島根県(バイオマス)、13%の高知県(バイオマス、太陽熱)、13%の秋田県(バイオマス、地熱)は自然エネルギー熱の割合が比較的高い県になっています。

(松原弘直=認定NPO法人環境エネルギー政策研究所(ISEP)理事・主席研究員)

*1:永続地帯ホームページ
*2:
ISEP「永続地帯2019年度版報告書」公表
*3:ISEP「国内の2018年度の自然エネルギーの割合とFIT制度の現状(速報)」
*4:
ISEP「2019年(暦年)の国内の自然エネルギー電力の割合」

《参考記事》
連載「100%自然エネルギー地域をゆく83」2050年までに二酸化炭素排出実質ゼロを目指す自治体 ~地域から目指す脱炭素社会
連載「100%自然エネルギー地域をゆく82」世界の風力発電市場の最新動向 ~安定成長を続ける世界と日本の課題

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