「究極の省エネ技術」超伝導技術開発の現在地点

金属はある極低温まで温度を下げると物質としての電気抵抗がゼロになる。この現象が「超伝導」(「超電導」)である。超伝導状態の金属には強力な磁場も発生する。この特性を活用して、医療機器であるMRI(核磁気共鳴画像装置)内部の機構としても超伝導は実用化されている。

これからの展開として、超伝導線材を用いたケーブルシステムも期待されている。送配電中・通電中のエネルギーロスが最小化される、まさに「究極の省エネ技術」だ。

実用化を視野に入れた技術開発にあたっては、低温にするための消費エネルギーを勘案し、コスト面を念頭に置くことも求められる。これまでは液体ヘリウムを用いて冷却し、その沸点である-269℃付近で超伝導状態とすることが多かった。現在、沸点がより高く資源的に豊富な液体窒素などを用いた「高温(-196℃以上)超伝導」関連技術開発が各方面で進められている。

そんな超伝導技術開発において、このたび重要な3つの動きがあった。

【NEDO「高温超電導実用化促進技術開発」】総合開発4事業スタート

[画像・上:高温超電導ケーブルシステムのイメージ 提供:新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)]

新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)はこの5月、高温超電導に関して新たな開発事業をスタートさせた。

NEDOはこれまでも高温超電導の開発プロジェクトを展開。成果も多く、13年には古河電工らを委託先とする「イットリウム系超電導電力機器技術開発」において、275kV高電圧送電用の高温超電導ケーブル開発に成功している。

このたび開始された「高温超電導実用化促進技術開発」では、これら既存事業から事業化に近いと判断された4テーマを抽出。統合的に検討する中で、より実用化を意識した開発が実施される。

抽出されたテーマのひとつ「電力送電用高温超電導ケーブルシステムの実用化開発」では、送電線としての実用上不可欠である安全性能の確保、事故・故障発生時の復旧方法の策定を行う。事業を実施する予定となっているのは東京電力ホールディングスや住友電工らで、事業期間は2016年度から2018年度、もしくは2016年度1カ年となっている。

【産総研】「つくば応用超電導コンステレーションズ」設立

国立研究開発法人 産業技術総合研究所(産総研)は5月26日、超伝導技術の開発コンソーシアムである「つくば応用超電導コンステレーションズ」(ASCOT:Applied Superconductivity Constellations of Tsukuba)の設立を発表した。

産総研の呼びかけに対し、日立製作所三菱電機、各電力会社など19企業と、東京大学物質・材料研究機構(NIMS)など4研究機関が集結。全24機関が連携し、オープンイノベーションによって超電導技術開発に乗り出す。

開発は、材料や冷却といった基礎技術から、MRI・NMR機器、磁気浮上鉄道、送電、省エネルギー技術など応用技術まで幅広くターゲットとしていく。

【慶應義塾大学/NIMS/群馬大学】CNT活用・世界最小級の超伝導線材実現

この線材は幅17nmほどだが、最小約10nm幅の生成にも成功(提供:慶應義塾大学・牧英之研究室)

この線材は幅17nmほどだが、最小約10nm幅の生成にも成功(提供:慶應義塾大学・牧英之研究室)

超伝導の研究開発でも新たな動きがあった。6月1日、慶應義塾大学准教授の牧英之氏らの共同研究チームは、10nmオーダーの極細の超伝導線材製作に成功したことを発表した。なお本研究の一部は、科学技術振興機構(JST)日本学術振興会(JSPS)の補助事業の一環として行われている。

発表によると「世界最小クラス」の超伝導線材だ。その核心は、カーボンナノチューブ(CNT)と窒化ニオブ(NbN)との「ハイブリッド」構造にある。直径1nmのCNTを母材として、その上に超伝導体であるNbNを生成する。

本研究はシリコンチップ上で超伝導線材が生成できることを示した。NbNは広く使われている。多元系の材料であり、実用にあたっては大きなメリットとなる。

検証により、この超伝導線材に特異な現象も観測。その特性を活かし、量子ビットや超高感度光検出器などの新たな超伝導量子デバイスへの応用も期待されている。

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