大気乱流の影響評価技術研究、産学で展開 九州大学/九電工新エネルギー/西日本技術開発/日立製作所(下)

(上)から続く】

[画像・上:数値風況診断技術「RIAM-COMPACT」の計算結果の一部。弁財天山を原因とする、東風の風車への影響シミュレーションを比較(提供:九州大学応用力学研究所准教授・内田孝紀氏)]

10号機の東側約300mには弁財天山がある。この標高519mの山が風車機器に大きな荷重をもたらす乱流を引き起こしていることが予想される。研究チームは、内田氏が中心となって開発した流体工学CFDモデル「RIAM-COMPACT(リアムコンパクト)」や、メソ気象モデルで気流性状及び風況のシミュレーションも実施。弁財天山からの剥離流などが風車の構造強度に与える影響を詳細に析出した。

乱流のシミュレーションを検証し、評価指標も打ち出した。この乱流評価指標が高いと、観測されたDELも高くなるという強い相関関係を確認している。

10号機における、メソ気象モデル「WRF-ARW」の計算結果。ハブ高(地上60m)における速度ベクトル図(提供:九州大学応用力学研究所准教授・内田孝紀氏)

これを応用すれば、風力発電所の設計・計画段階で一定の乱流評価指標以下にする風車配置なども検討できるようになる。

このような研究の背景には、山岳地域にも立地せざるを得ない日本国内特有の陸上風力発電事業の事情がある。風力発電施設に関するシミュレーション及び風車設計用要件の規定は、先行する欧州では平坦な地形とそこでの風を前提にしている。国内のように複雑な地形によって急激に特性が変わる風が存在するケースでは、風況予測が難しく、ひいては風車の耐久性の予測も困難になる。

現地では強い東風は、全体の5㌫しか起きないという。それにも関わらず事業に大きな影響を及ぼす発電停止や長期的な風車の機械疲労蓄積などの大きな要因になっている。それらの事業リスクを最小化もしくは回避するためには、リスク要因を「見える化」して把握する必要がある。精密な観測とシミュレーションはそのための第一歩だ。

こちらも数値風況診断技術「RIAM-COMPACT」の計算結果の一部。弁財天山がもしなかった場合を想定し乱流の影響を解析。このような「if」を基に比較して、より精緻な検討ができるのもシミュレーションならではの手法だ(提供:九州大学応用力学研究所准教授・内田孝紀氏)

研究チームは今後、三次元超音波風向風速計や小型ドップラーソーダを設置して、風況観測の精度をさらに高める。そのデータをシミュレーション解析と擦り合わせることで、地形起因の大気乱流が風車の構造強度に与える影響の定量化、その予測手法、風車事故分析の手法確立を目指す。

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