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【セミナーレポート】IoT・AIのエネシステム適用を考える ~関西スマートエネルギーWeek
- 2017/10/4
- エネルギーマネジメント
- 新エネルギー新聞2017年(平成29年)10月02日付

大いに沸いた関西スマートエネルギーWeekのセミナープログラム。その中で3日目に開催された特別講演「IoT技術、AI技術のエネルギーシステムへの適用」は、経産省近畿経済産業局の主催によるもの。この講演会は、一昨年の2月に同局が立ち上げた関西スマートエネルギー・イニシアティブの活動の一環である「第2回スマートエネルギー推進セミナー」にあたる。狙いはスマートエネルギー分野そしてエネルギーシステムへのIoT技術、AI技術の適用可能性を探ることだ。
☆AI開発の立ち遅れ

基調講演した産総研の西田氏はAIと人の協業について語った
基調講演を行ったのは、産業技術総合研究所人工知能研究センターの西田佳史首席研究員。同センターは2015年春に設立され、国内外の大学・企業から多くの研究者の参画を得ている。
AIの技術開発の現状はと言えば、米国では巨大IT産業にリソースが集中しているのに対し、日欧ではデータも研究者、技術者もばらばら、資金も欠如しているという。ここからスタートするには、開いたエコシステムで、様々な関係者が繋がって、課題を解く、技術を作る、検証するという仕組み作りが大切。このため、産総研では人工知能研究センターにおいて、言語理解、行動分析、予測技術、計画、パターン認識など、様々な企業に利用して貰うためのモジュールを開発しているという。
☆AIと人の協業による問題解決
西田氏の考えるIoTやAIによるイノベーションは、多くのデータから、それまで分からなかった、変えたいもの(=目的変数)を発見し、さらに、この目的変数を変えられるもの(=操作可能変数)を見つけ出すことで、「変えられる」構造に変化させるというもの。課題を見つけ出すのはAIが行い、その対策は人が考えるという、AIと人の協業体制というべき事例が多いとのことだ。課題設定は大切だが、意外に人は適切な課題設定ができない。このため、AIによるビッグデータの分析に意味がある。
一方で、西田氏は、国連で2015年に採決されたSDGsに触れた。その17のゴールには相互関係が存在し、一つだけを解くのではなく、同時多発的に解く必要があると言う。そのため、生活の中に課題を探り、職種横断的に課題解決する。これにはIoTが適しており、個々の生活に接近できる。こうした我々の生活の中に課題を探り、イノベーションにつなげるというアプローチだ。
☆快適に制御する法ではなく「快適さ」を学ぶ
続いて3つの講演は、企業事例の紹介。パナソニックエコソリューションズ社エナジーシステム事業部の磯崎典夫伸事業推進センター所長は、同社のIoT・AIに関する取組について述べた。
IoTとは言うが、ものがインターネットにつながるだけなら10年前からあたりまえだったと磯崎氏は言う。大切なのは、それで何に役立つかという点だ。
消費者向け最終製品を扱うことの多い同社だけに、AI導入による暮らしの変化を住民視点で分析。AI以前は、あくまでも判断は人間が行ったが、AIにより、人間の意図を汲み、状況に応じた自立判断を機械が行うようにできる。そのためにはAIは機器の個別の制御ではなく、「快適さ」とは何かといったことを学ぶ必要がある。
☆データ流通の仕組みづくり
オムロンの技術・知財本部SDTM推進室の村上英明政策渉外担当は、IoT・AI活用の要となる、データの流通について紹介した。
オムロンは医療機器メーカーと誤解されているかも知れないと話す村上氏。講演の冒頭、同社の血圧計により、血圧と測定時の気温データがセットで得られることで、健康のためには気温は何度であるべきかを考える例を提示。もともと、そうした目的のために集めたデータではないが、既にあるデータが様々に利用可能な可能性を持つという。その際に重要なのが、これらデータを流通させる仕組みだ。
既に多くのセンシングデータが存在しているが、利用者が、利用したいデータを見つけ出し、データシェアして付加価値を生み出すために必要な、APIなどの標準化がまだできていない。必要な時に必要なデータを引き出せる仕組みが必要であり、それがSDTM(Sensing Data Trade Market)だという。
こうした動きは、近く、経産省及び総務省の支援のもと、民主導でルール策定及び普及促進のための枠組みが設立されるとのことだ。
☆人の行動を学んで、より精確な判断が下せるAIへ

FKAIRの尾藤COOは「優しい人工知能」を目指している
エネルギー分野への応用事例を語ったのは京都の人工知能ベンチャーFKAIRの尾藤美紀COO。AIによるPVの発電量予測を既に実現している同社だが、三層のニューラルネットワークだけで意外に精度の高い予測ができたという。AIはどうしても計算資源を費やすことになる。数理モデルも併用しながら、計算速度を高める研究などを進めているとのこと。
今後、スマートシティなどにAIを役立てたいという同社。そのためには消費電力予測などを行うが、消費電力予測は極めて高い精度が要求されるとともに、突発的な変化への対応も必要だ。
多くの人の振る舞いを予測するため、チャットボットを介して、AIに人間行動を学習させる作業を進めているという。
三社の事例に共通するのは、IoT・AI技術によって人間のふるまいを解き明かそうとしている点だ。エネルギー消費は人の営みに寄り添うもの。だからこそ、IoT・AI技術がエネルギー分野にもたらす恩恵に期待する機運は高い。

