【年頭所感・2023年:学術・研究⑨】柏木 孝夫(東京工業大学 特命教授・名誉教授)「カーボンニュートラル社会へ向け バランスの取れたエネルギー需給構造の構築を」
- 2023/2/7
- 特集
- 新エネルギー新聞2023年(令和5年)01月09日付

謹んで新年のお慶びを申し上げます。
国内外でエネルギー政策がカーボンニュートラルに向けて大きく舵が切られる中、昨年は、自然変動性再エネの増加や旧型火力発電所の閉鎖等の影響により電力逼迫問題が顕在化し、さらにロシアのウクライナ侵攻によってエネルギー価格の高騰等日本のエネルギー需給構造の脆弱性も浮き彫りになりました。私たちは、これらの問題に取り組みつつカーボンニュートラル社会を目指すという極めて困難な課題に直面しています。特に、そのトランジション期においては、「S+3E」のエネルギー政策の基本に則り、しなやかでバランスの取れたエネルギーシステムの構築が極めて重要であると考えます。再エネの普及と同時に、先ず消費エネルギーを削減しながら、CO2と燃料コスト削減を図る事が重要です。日本は優れた省エネ技術を保有していますので、コージェネレーションなども活用し、地域での省エネ型エネルギーネットワークを形成していく事だと考えます。
次に、自然変動性再エネのボラティリティを考慮しつつ、エネルギー需給構造を変革していく必要があります。再エネ電力の調整力を蓄電池に頼るのは限界があります。水素に変換し、貯蔵する方法が現在のところ最もリアリティがあると考えます。これも最初からグリーン水素(再エネ由来)にだけ頼るのではなく、ブルー水素(化石燃料由来)などにより、国際サプライチェーンを形成していく事が求められます。このことがCCUS(CO2の回収・貯蔵・活用)技術の進展や水素を活用したe-fuel、e-methane等の合成燃料の生産に結びつきます。もしかしたら、日本が合成燃料の輸出国になる可能性もあります。
日本は、カーボンニュートラル社会の実現に向け、様々な選択肢によってバランスを取りながら、持続的発展を目指すことが必要であると強く感じます。皆様にとりまして本年が良き年になりますよう祈念いたしまして、新年のご挨拶とさせていただきます。

