【年頭所感・2023年:学術・研究⑪】山地 憲治((公財)地球環境産業技術研究機構(RITE)理事長)「真の『再エネ型経済社会』打ち立ての元年に」

皆様、あけましておめでとうございます。

振り返れば、エネルギー・再エネの世界では昨年も大きな出来事が相次ぎました。まず4月にはFIP(Feed-in Premium)制度が開始されました。再エネ電力の売電価格を市場と連動させることで、再エネの市場統合を促す制度です。FIT制度による国民負担の抑制、及びより安価な再エネ電力の実現という「国民の声」に応えることが期待されています。

再エネの価格に関することと言えば、洋上風力があります。促進区域における事業者選定では従来の延長線上にない下げ幅の価格で入札され、その対応が行われた1年でもありました。これまで「より安価」を追い求めてきた国内の再エネが迎えた、新たな局面の一つと言えます。入札で事業者から提示された供給価格は、「再エネでも大幅・急激にコストを下げることができる」ということを示すことができたという点で評価できます。他方、洋上風力は産業の裾野が広い。エネルギー政策と産業振興政策を、他の従来の再エネ以上に表裏一体で推進しなければならないという側面を持つことは事実です。

洋上風力は2040年の導入目標として最大45GWもの数字が示されています。「国内に『洋上風力導入』が進んだが『洋上風力産業』は育たなかった」ということのないように、今から官民で取り組んでいく必要があります。昨年行われた洋上風力入札公募要領の見直しは、見直しの決定とプロセスは矢継ぎ早に進められたものの、大局的にはこの「関連産業の育成」の視点を洋上風力により組み込むための一環であったと言えます。産業としての洋上風力において中長期的な視点から私が注目しているのは浮体式です。海洋国家である日本で、浮体式には技術的にも産業的にも世界をリードする存在になってほしいと思います。

洋上風力はとても大きなビジネスです。昨年策定が行われた、国内の広域系統マスタープランが念頭に置いたのは「2040年最大45GW案件形成」の洋上風力導入でした。電力ネットワークの整備は副次的なメリットが多く、広域の電力融通推進による電力需給逼迫の緩和への貢献もその一つです。この動きは、再エネが広域ネットワークを形作り、全体最適を形作るという、これまでとは異なる方向性が出てきている証と言えます。

提示されている「マスタープラン」案における広域電力網整備の概要(資料:経産省)

「電源としての再エネがネットワークを拓く」方向性は、広域・送電網だけではなく、当然、配電網や需要家サイドのネットワークにも拡大していくはずです。昨年6月、改正省エネ法が国会で可決・成立しました。改正法では一定規模以上の企業のエネルギー使用報告において、デマンドレスポンスが省エネとして評価されるようになります。再エネ出力制御時の需要量増加オペレーションや、電力需給逼迫時の需要量抑制オペレーションなどがこれに該当します。省エネが、これまでのように「電力消費を削る」だけではなく、「需要家の電力消費・需要の最適化」として捉え直されています。そのきっかけに再エネ・分散型エネルギーの導入拡大があるのです。

産業としての競争力を得つつあり、最適な関連社会インフラ整備の全体像が示されつつある再エネ。こうして見ると、昨年は「再エネ型経済社会」の絵姿が浮かんできたことを実感した1年だったと総括できます。ロシアの軍事侵攻によりエネルギー資源高騰が顕在化する中で、「国産エネルギー」としての原子力や再エネの価値が向上していることも追い風となっています。しかし、真に再エネ型経済社会を実現するためには、再エネの事業規律確立を進め、自律を進める必要があります。再エネの導入が進み設置形態が多様化した結果、地域からは再エネに対する懸念の声も上がっています。こうした声に応えて長期電源化するためにも、全体的な更なるコスト低減と共に事業規律確立は必須です。

社会の脱炭素達成の目標とされている2050年までにあと27年ほど、排出CO2の46%削減(2013年度比)達成の目標とされている2030年までにあと7年ほどとなりました。脱炭素の取り組みの中央にはエネルギー・再エネがあります。その短い時間スケールに合わせるためにも、それ以降を視野に入れても、再エネの自律的な在り方が求められます。FIT制度などにより制度設計の建付けが「再エネに対してすること」が中心だった従来から、「再エネでできること」・「再エネがするべきこと・果たすべきこと」も勘案する視点を組み入れていく元年として、今年は重要な1年になりそうです。

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