①市民エネルギーちばin千葉県匝瑳市:「ソーラーシェアリングの郷」が目指す卒FIT【特集「ポストFIT時代のソーラーシェアリング」】
- 2019/10/1
- 太陽光, 特集
- 新エネルギー新聞2019年(令和元年)09月30日付

農地で営農しながら太陽光発電も行うソーラーシェアリング(営農型発電)。これまでであれば、FIT制度を活用して得られる売電益は、営農者にとって大きな収入源になっていた。しかし買取価格の逓減とFIT制度抜本改革の議論が進展する中、ソーラーシェアリングも大きな岐路に立っている。そのような背景において「FITの次の段階」を見据える事例・技術・産業をクローズアップした。
「地域で自家消費・災害対策」も視野
林の道を抜けると視界が開けた。小高い丘の前に「ソーラーシェアリングの郷」の大きな看板が見える。その向こうには銀色に輝くいくつかの発電施設が見える。その下に農地が広がっている。農作業が盛んに行われていることはすぐにわかる。こうした光景は国内ではここだけではないだろうか。ここは千葉県匝瑳市。ソーラーシェアリング(営農型太陽光発電)がこれだけ集積した場所はない。日本のこれからのエネルギーと食料生産のあり方を示唆する重要な地域だ。
[画像・上:千葉県匝瑳市飯塚地区には数多くの発電所が集まっている]
◆地域に合計2.4MWも集結 着想は「食もエネも自給自足」
ソーラーシェアリングとは農地の上にソーラーパネルを設置し、農業生産を続けながら発電する施設のことだ。いわゆる太陽光発電と違う点は、営農を継続することだ。この施設は、これからの日本には不可欠として各地で建設が始まっている。「ソーラーシェアリングの郷」は運営方法や各種技術においても全国をリードする存在となっている。

だが、ここに至るまでの道のりは決して平坦ではなかった。市民エネルギーちばがここにソーラーシェアリング1号機を設置したのは2014年。同社の代表取締役である東光弘氏が地元の農業生産者である椿茂雄氏や千葉県内の環境団体に声をかけて同社を設立した。「農業で食べるものを地域で自給して、エネルギーも自給したい。地産地消を目指している」と狙いを語る。市民発電に参加している人々の様々な思いが交錯している。
関係者の努力もあって、2017年4月には当時、国内のソーラーシェアリングでは最大規模となる出力1,000kWのメガソーラーも竣工した。来賓挨拶では小泉純一郎元総理大臣が壇上に立ち「これは全国のソーラーシェアリングの魁となるのではないか。手本となるように頑張ってもらいたい。農業と自然エネルギーをうまく活用する素晴らしいアイデアだと思う。ここのソーラーシェアリングが成功することによって全国で農家の所得が増える自然エネルギーの事業所数も増える。原発ゼロにして十分に自然エネルギーでやっていけるという模範となるように仕事をやって下さい」と関係者を激励した。

◆台風15号原因の停電時にはケータイに充電サービス実施
ソーラーシェアリングの理念に賛同する人たちが次々と集まっている。50kW未満の低圧発電所は20カ所ほどになり、メガソーラーも含めた全体の発電量は2.4MWほどまでになった。面積では10haほどまでにわずか5年で成長した。

現在の課題は、「転換期を迎えている事業用太陽光のFIT制度抜本改革にどう対応するか」にある。買取価格もさらに低減することが予想される中、同社代表の東光弘氏は「我々の会社では、ソーラーシェアリングの導入コストは現在、1kWあたり13万5,000円。新しい技術を採用することで、これを10万円までに下げたい。一方で売電では、FIT制度を活用しなければ卸す売電価格に環境価値が乗せられる。安い設備の導入と、付加価値のある売電を同時進行させることで、非FITで十分やっていけるのではないか。将来は蓄電池も安くなるだろうから、我々の地域のように太陽光発電所が多くあるエリアでは自家発電で十分となり、買電無しとなることも可能と考えている」としている。FITを卒業し、正に究極の自給自足まで到達することを視野に入れている。
千葉県では台風15号による大停電の混乱が続いている。ここも停電したが、ソーラーシェアリングからの電気を利用し携帯電話の充電サービスを行うことで、災害時にも役に立つことを周辺住民にPRした。ソーラーシェアリングは売電にとどまらず、そこでできた電気を農業生産に活かすことも考えている。ソーラーシェアリングの下では土を耕すとともに未来も耕している。

