≪Close Up人物≫パナソニック ライフソリューションズ社・西川弘記氏「ポストFIT時代に求められる分散型の需給バランシングシステムを追求」
- 2020/5/15
- 地域
- 新エネルギー新聞2020年(令和2年)05月11日付

「再エネ長期安定電源化は地域の下支えがあってこそ」
令和元年度「新エネ大賞」の経済産業大臣賞を受賞した、「宮古島における『再エネサービスプロバイダ事業』の推進」。この宮古島市市営住宅に太陽光発電設備およびエコキュートを第三者所有モデル(TPO)で設置する取り組みに、パナソニックが協力している。また、地域で働く若い人材を雇用したい企業がEVを新入社員などに貸与する「多治見で『働こCAR』」も、同社は支援。こうした再エネ普及のためのビジネスモデル構築に携わってきた西川氏は、「再エネの主力電源化のためには、分散型で需要と供給を一致させる電源システムをしっかり作っていくことが肝要だ」と強調する。

宮古島で実証した需給一体型モデルの意義
宮古島は「エコアイランド宮古島宣言2.0」で、2050年にエネルギー自給率48.85%を目標にしている。そのため太陽光発電を208MW導入する計画だが、電力需給バランスを保つためには可制御できる負荷と一体での設置が必須となる。その一つがネットワーク化されたエコキュートだ。一台ずつタイミングを合わせて動作させ、グリッド全体で最適化するように制御する。この実証に同社は協力している。TPOでPVと共に無料設置し、温水熱を入居者に販売するという先進的なビジネスモデルも注目を集めている。「電力は安定性が必要で、長期に使える製品と、それを地域で支える体制があって可能となる。これを踏まえたビジネスモデルを構築しなくてはならない」と西川氏は指摘する。そのためには地域の電気工事店や工務店が重要なプレーヤーとして、地域の顧客と向かい合って継続的に事業を行える環境を整える必要がある。宮古島ではメンテナンスなどを、地元企業が連携して実行できる仕組みを確立するよう支援した。「各地にネットワークがあり、トータルソリューションを組み立てる課題解決能力がある」のが同社の強みだという。
「多治見で『働こCAR』」も、需要型分散電源であるEVを制御する試みで、バランシングに寄与するうえ、地域活性化に繋がるこれまでにない斬新なビジネスモデルだ。「働こCAR」では、太陽光販売施工店で再エネ新電力「たじみ電力」を経営するエネファント(多治見市)が、地域企業にEVを月額3万9,800円でレンタルし、EV充電器とソーラーカーポートを無償で施工する。地域企業は就業者にEVを貸与し、就業者は保険料を含む使用料として月額1万9,800円を支払う。就業時間中にEVはソーラーカーポートで充電されるので、「働こCAR」の採用企業が広がれば、レンタルしたEVの充放電制御により、電力需給バランスを調節することができる。
「kW・kWhからジュールの発想へ」
エネファントの発案に助言し、協働してきた西川氏は、「多治見のビジネスモデルは非常に将来性が高い。地域の自動車販売店やガソリンスタンドが『働こCAR』と同じような再エネによるEV事業を開始すれば、地域循環共生圏の実現に繋がる」と予想している。再エネ電気を小売りし、太陽光とEVをリソースとして管理、EV関連機器の販売も併せて手がけることで、地域に所得を還元できる。ガソリンスタンドの減少で懸念される移動の支障に対し、住民生活を維持する手段としても有効だ。

西川氏はスマートシティ推進について、自治体へ事業提案などを行う機会もある。「再エネ導入計画は2015年ごろに決定した自治体も多いので、見直しが活発化していく頃だろう。再エネ電気と電力需要、キロワット・キロワット時だけで考えず、ガソリンやガスも合わせて、一次エネルギー量、メガジュール単位で考えたほうが、熱やEVなど新しいエネルギーに対応できる。太陽光の余剰発電を蓄えるキャリアとして水素需要も考えていかなければならない」(西川氏)。さらに自治体には環境省の「地域経済循環分析ツール」の利用を勧める。分析のために入力する数値を整理することが、見える化の第一歩になるという。
「小規模な電源を各地に導入していくことは、メガソーラーなど大規模なエンジニアリングで完成するものと比較して、効率から考えると非常にコストが厳しい。そのためには資金確保にTPOを用いるなど工夫し、地域と向き合って課題を解決していく姿勢が問われる。運用を開始している宮古島と多治見の手法は今後生きてくる。情報を共有して活用してほしい」と西川氏は語る。
にしかわ・ひろき 氏
パナソニック ライフソリューションズ社 コミュニケーション部 統合プランニング課兼スマートエネルギー営業部
1986年松下電工(当時)に入社。工場生産技術を経て、次世代の住宅提案や住宅会社との次世代住宅建設コンセプト提案、省エネ推進などエネルギー関係提案業務に従事

