世界最大の「脱炭素技術オープンイノベーション」東京湾エリアで実現へ 「東京湾岸ゼロエミッションイノベーション協議会」設立総会開催
- 2020/6/22
- 政策
- 新エネルギー新聞2020年(令和2年)06月22日付

「自前主義」脱した脱炭素シナジー発揮がカギに
6月2日、水素や電力ネットワークのデジタル化、カーボンリサイクルなどのゼロエミッション技術の研究開発のための産学官連携の場である「東京湾岸ゼロエミッションイノベーション協議会」(ゼロエミベイ)が(国研)産業技術総合研究所により設立された。同15日には第1回の会合である設立総会も開催され、「脱炭素版シリコンバレー」を目指す協議会の全体像が示されている。
[画像・上:協議会が公開している「ゼロエミベイマップ」。湾岸エリアの脱炭素の取り組みをプロットしている。今後順次付け加えられていく予定だ(出所:https://unit.aist.go.jp/gzr/zero_emission_bay/members.html)]
東京湾岸ゼロエミッションイノベーション協議会の構想は、気候変動問題の解決に向けて今年1月に閣議決定された「革新的環境イノベーション戦略」で立てられた。東京湾岸エリアには電力、ガス、石油、化学、電機、自動車など、多様な企業・工場・研究機関・大学が存在している。これらはエネルギーの需要・供給双方に幅広にまたがっており、脱炭素・ゼロエミッションに一体的に取り組むシナジー効果は大きいことが予測できるからだ。
協議会の会長には柏木孝夫氏(東京工業大学特命教授・名誉教授)が就任した。また実務を取り仕切る事務局は、産総研内の「ゼロエミッション国際共同研究センター」(GZR、研究センター長=吉野彰・旭化成名誉フェロー/名城大学教授)が担う。

16日開催の第1回設立総会には松本洋平・経済産業副大臣も出席し、「気候変動問題は地球規模の課題。深刻さが増す中で、日本ならではのエネルギー・環境技術により主導的な役割を果たすことが期待されている。また、足下の新型肺炎禍から新しい生活様式で経済復興していくには、気候変動問題にも着実に取り組むことが必要になる。この協議会の果たす役割は大きい」と期待を述べた。
現在および今後の排出のみならず、過去に排出されたエミッションへの対応も開発技術のスコープに含まれる。また再エネ・分散型電源などの新たな電源のみならず、既存インフラの省エネも重要な要素に位置付けている。その具体的な研究項目について会長の柏木氏は、大量導入される出力変動型再エネである太陽光発電と風力発電をスマートインバータによって制御するデジタル型電力ネットワーク、工場排出CO2の海洋生物(藻類など)によるブルーカーボン化、同じく工場から副生される水素を活用したメタネーション、人工光合成などのカーボンリサイクル、そしてアンモニア製造と窒素循環などを含めた再エネ由来水素などを例示した。
「民間企業では対応しきれない長期的なエネルギー需給の視点を補完するのがこの協議会。そもそもエネルギー費用削減以上の脱炭素対応にはなかなか踏み出せないのが個々の企業の現実ではないか。企業どうしが長期的視点を共有し連携・実践することが、ファイナンス面でも重要になる」と柏木氏は説明する。

また経済産業省幹部からは「これまでの民間の脱炭素は自前主義が消えなくて、個々の企業単位の対応止まりだった」との指摘も聞こえてくる。オープンイノベーションによる技術開発と共に情報発信も協議会の大きな役割になりそうだ。
そしてオープンイノベーションを後押しするべく、今後協議会内に設置されるワーキンググループで詳細を項目別に詰め、その内容次第では「予算を付ける」(経産省幹部)。加えて、民間レベルの新技術開発でしばしば各種規制が足かせとなる(電力・水素など)が、協議会の中でそれらの規制の洗い出しを行い、「規制緩和の提言まで持っていきたい」(柏木氏)としている。
本協議会の取り組みは「ゼロエミッション版シリコンバレー」が目指されている。世界には様々なイノベーションハブが存在するが、脱炭素という広範囲の分野にまたがる形でのイノベーションエリア設定は世界初とされている。柏木氏は「パリ協定で定められた、2050年の温室効果ガス(GHG)80%削減目標は極めてチャレンジングだが、避けては通れない。『ゼロエミベイ』はナショナルプロジェクトであり、これまでの個別の対応を国単位でシステムインテグレーションしまとめあげることは世界に与えるインパクトも大きい」と、意義を強調した。
協議会は13者によって設立されたが、6月18日現在で産学官94者にまで増えている。今後も加入者を募集していく。

