≪解説≫Ampt 太陽光発電「リパワリング」の可能性(上):長期安定稼働を視野に

今年でFIT制度は施行から9年目を迎えようとしている。そのような中、再エネ主力電源化の要件の一つである「長期安定電源」となるべく、これからも持続的に発電事業を行うためのメソッドとしての「リパワリング」を提案するのが太陽光のスペシャリスト、アンプトだ。その要点を解説していただいた。

[画像・上:ミスマッチ損失を発生させる森林の影]

「性能回復」以上が期待できる事例も

日本国内における太陽光発電所のリパワリング実施の際に、事業主が考慮すべき課題について設備面・制度面(電気設備技術基準)の観点から概説する。ここでの「リパワリング」の意味は調達価格の変更の発生しない条件の元で、太陽電池パネル・パワーコンディショナ(PCS)・ケーブルなどシステム構成機器の経年劣化で低下してきた発電量損失を回復して発電量をアップさせることに加えて、長期にわたってのシステム安定性を向上させることを言う。

【◆説明するスペシャリスト◆】アンプトジャパン 日本支社長 近藤 茂樹 氏

欧州においてはFIT制度が2000年にドイツで開始されたこともあり経年で劣化が進行し数年前からリパワリングが活発化している。日本ではFIT制度が2012年に始まり8年が経過しようとしている。2020年6月での運転開始量は約52GWに達している。その内の約8GWは発電開始から5年以上が経過している。導入初期の太陽光発電所は初期投資を抑えるためにコスト重視で太陽電池モジュールを採用したケースも多く、品質の劣るモジュールの劣化により経年と共に想定発電量よりも低くなる発電所が目立ってきた。

また、一部のPCSメーカーの撤退により故障修理が困難となる発電所も増えてきた。PCS価格は2012年当時と比較すると大幅に低価格化しておりPCS交換も検討できる。最新のPCSは変換効率も高く売電収入が増加するのでリパワリング効果がある。

このような状況の中で、一部の事業主による発電所の見直しとリパワリング検討が始まってきている。20年というFIT期間の中で、リパワリング投資のペイバックのための残り年数を考えると10年目前後でのリパワリング実施が経済的に効果的である、15年目では遅い。リパワリングはそれに要する投資コストと売電収入の増加分によって経済性が決まるので、調達価格の高いFIT初期の発電所では短期間で投資回収可能である。

事業主がリパワリングを考えるときにまず必要なことは、何が問題でパフォーマンスが悪くなっているのかを洗い出すことである。原因がわかれば、例えば配線レイアウトの変更や影の原因である木々を伐採しパフォーマンスを向上させることができる。

複雑な地形が原因でのアレイの向きの違いや伐採のできない森林が原因の場合は、リパワリング機器を利用してパフォーマンスを向上させることができる。リパワリングのために使用するストリングオプティマイザは、影や太陽電池モジュールの経年劣化によるストリング間のミスマッチ発電損失の低減に使用される。森林による影がパフォーマンスを大幅に低下させていた発電所において、ストリングオプティマイザ導入後に発電量が1年目では5.6%、2年目では7.5%向上した実例がある。

【次回(下)に続く】

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