【特集「地域脱炭素と木質バイオマス」】特別寄稿:森のエネルギー研究所・菅野明芳氏〝木質バイオマスエネルギーの最新動向について〟

地域の特質と強く結びついた再エネ資源である木質バイオマス。ゼロカーボンシティの取り組みの広がりなどを受けて、木質バイオマスに注がれる地域の視線は熱を帯びだしている。他方、産業としての木質バイオマスには、燃料の安定供給などの不確定要素も存在する。そんな木質バイオマスの現在地点と将来展望を、木質バイオマスに特化したコンサルティング業務・リサーチ業務を展開するスペシャリストである森のエネルギー研究所(東京都青梅市)に解説していただく。

[画像・上:森のエネルギー研究所「太陽光発電・蓄電池と薪ストーブを複合活用する木造『ZEB』事務所の概要」]

海外SCの有無が事業性を左右する現実

林野庁が2022年9月30日に公開した木材需給表によると、2021年の日本の木材需要量は8,231万立方m、うち燃料材は1,474万立方m(前年から140万立方m増)と増加傾向にある。そのうち国産の燃料材は935万立方mと前年から42万立方mの微増の一方、輸入量が539万立方mと前年から152万立方mの急増となっている。既に国産燃料材の供給が逼迫する中で、主に未利用木材を燃料利用する発電所だけを見てもFIT/FIP認定済で未稼働のものが138件あり(2022年3月末時点)、今後ますます燃料材の供給が困難になり、集荷範囲も広がり採算性が悪化することが予想される。一例をあげれば、22年10月に稼働開始した和歌山県新宮市のバイオマス発電所(発電出力1万8,000kW)では、年間20万トンのチップ消費量のうち、当初は県内からの集荷は2割にとどまり残り8割は四国や九州からフェリー輸送と報道されている。蒸気タービン発電プラント価格も上昇傾向にあり、燃料材の集荷ルートを持たない民間企業が新規に木質バイオマス発電事業に参入することは極めてハードルが高くなりつつある。

動き出した「再エネ熱」

一方で熱利用分野では、ウクライナ危機による化石燃料高騰とも相まって、燃料費の削減を目的に安価な廃材系木質バイオマスを燃焼可能な熱利用システムを導入する民間企業の動きが進んでいる。兵庫県内では、湊山温泉(神戸市)、花山乃湯(三田市)の民間2施設が、令和4年度に先進的省エネルギー投資促進支援事業費補助金(資源エネルギー庁)の採択を受け、薪ボイラーを導入予定である。また民間企業主導でのチップ燃料による熱供給サービスの動きも国内に広がりつつあり、ゼロカーボンシティを宣言した北海道紋別市では、市営の温水プール「ステア」の脇に地元の民間事業者が自社でチップボイラー(150kW×4基)を整備し、市の初期投資負担額は0円とする代わりに市はそのエネルギーサービスの対価を15年間支払う契約を締結。従来温水プールで消費していたA重油約34万リットルのうち90%を代替する計画で、2023年1月より本格稼働予定である。

「ゼロカーボンシティ」達成に向け活かすべき木質のポテンシャル

自治体での木質バイオマス関連の動向として、11月1日に環境省から公表された脱炭素先行地域選定(第2回)で選定されたモデル自治体20カ所の概要を見ると、木質バイオマス関連の記載が強調されているのは7自治体である。その用途としては、専焼のバイオマス発電計画は愛知県岡崎市(発電出力1,990kW)のみであり、札幌市(大規模地域熱供給)、北海道奥尻町(公共施設へのチップボイラー導入を皮切りにしたチップ・ペレットの普及拡大)、岩手県久慈市(バーク熱利用)、群馬県上野村(道の駅などでの熱電併給・家庭の薪・ペレットストーブ活用)、新潟県関川村(熱電併給)、湖南市(障がい者雇用に繋がる薪製造・福祉施設等での熱利用)といったように、熱利用に重点が置かれている地域が多くなっている。経済性を考慮し再エネ電源は太陽光・風力由来で、熱利用の脱炭素化は木質バイオマスでという方向性が強まると見込まれる。

「省エネに効く」木質バイオマスの在り方

国交省が2021年に公表した「脱炭素社会に向けた住宅・建築物における省エネ対策等のあり方・進め方に関するロードマップ」では、2020年までに国・地方自治体などの率先取組として公共建築物はZEBを標準化していくことが示されている。鉄骨造よりも断熱性に優れた木造は省エネ化を図りやすくZEBに適しており、太陽光発電だけでは賄いきれないことが多い給湯熱源や冬季の暖房熱源として木質バイオマスボイラーやストーブのZEBへの導入が2030年までに大きく広がると期待される。森のエネルギー研究所ではその先駆けとして、自社事務所を2022年2月に木造2F建ての『ZEB』として竣工。太陽光発電(11.9kW)+鉛蓄電池(26.4kWh)+薪ストーブで全てのエネルギーを賄うことを目指し、1Fに入居する障がい者雇用を行う福祉施設と林福連携事業を開始している。

【執筆者略歴】かんの・あきよし、株式会社森のエネルギー研究所取締役営業部長。1980年9月生まれ。2006年3月 東京大学大学院 農学生命科学研究科 修士前期課程 卒業。2006年4月 株式会社森のエネルギー研究所入社。林地残材の集材実証試験・現地破砕実験などの山側・供給側の調査から、チップボイラー・薪ボイラー導入採算性分析シミュレーション及び導入支援など需要側の業務まで幅広く従事。宮崎県・静岡県・秩父市など全国自治体の木質バイオマス関連政策の支援・調査事業など地方行政の施策にも携わる
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