【年頭所感・2023年:政策⑤】斉藤 鉄夫(国土交通大臣)

斉藤国交相 年頭所感 ポイントと要旨
◆国土交通分野のGX推進、民生・運輸部門の脱炭素化への貢献…住宅・建築物・公共交通・物流などにおける省エネ化、インフラを活用した太陽光や水力、バイオマスなどの再エネの導入・利用拡大(創エネ)、輸送・インフラ分野における非化石化などを推進
◆住宅・建築物の省エネ強化…改正建築物省エネ法に基づき省エネ基準適合の全面義務化を進め、優良な都市木造建築物などや中小工務店などが建築する木造のZEHに対する支援も実施
◆洋上風力(港湾・一般海域)導入を引き続き促進…改正港湾法に基づき脱炭素化に配慮した港湾機能の高度化や水素の受入環境の整備などを図るカーボンニュートラルポート(CNP)の形成を推進、再エネ海域利用法に基づく案件形成や基地港湾の計画的な整備などにより洋上風力発電の導入を促進

令和5年という新年を迎え、謹んで新春の御挨拶を申し上げます。

昨年8月に第2次岸田改造内閣が発足し、引き続き国土交通大臣の任に当たることとなりました。本年も国土交通行政に対する皆様の変わらぬ御理解と御協力を宜しくお願い申し上げます。

現在、我が国は、国難とも言える状況に直面しています。

少子高齢化や人口減少に伴う国内需要の減少、労働力不足等の厳しい状況に直面する中、令和2年からの新型コロナウイルス感染拡大は、我が国の社会経済や国民生活へ甚大な影響を及ぼしました。

また、ロシアによるウクライナ侵略を契機として、世界的な物価高騰、円安が進行し、経済に大きな影響を与えているほか、エネルギーの安定供給が脅かされるなど、外交・安全保障環境も一層厳しさを増しています。

さらには、気候変動に伴い、自然災害が激甚化・頻発化しています。

こうした難局を乗り越えるためには、政府一丸となって、あらゆる政策を総動員し、着実に実行していく必要があります。

新型コロナウイルス感染症については、感染状況を見極めつつ、地域経済を支える観光の本格的な復興の実現、地域の暮らしや産業に不可欠な公共交通の確保等に取り組んでまいります。また、水際対策の緩和など「ウィズコロナ」という新たな段階に向けて、明るい兆しも見られることから、円安を活かした地域の「稼ぐ力」の回復・強化を図ってまいります。

物価高騰については、国土交通省の行政分野でも、資材価格や住宅価格、自動車・船舶・航空機等の燃料価格の高騰など、現に影響が生じています。国民生活や事業活動を守る観点から、関係省庁としっかり連携し、迅速かつ着実に必要な対策を進めてまいります。

気候変動に伴う自然災害の激甚化・頻発化により、昨年も、8月、9月に発生した大雨や台風により、全国各地で甚大な被害が生じました。被害に遭われた方々に謹んで哀悼の意を表します。

私は、災害により犠牲となる方を少しでも減らすことこそ、政治の役割であるという想いをもって、政治家としての活動を行ってまいりました。その想いのもとに、災害を防ぎ、国民の生命・財産を守るという国土交通省の持つ極めて重要な役割を果たすべく、事前防災対策の更なる強化を含め、防災・減災、国土強靱化を強力に推進してまいります。

今後も、国民の皆様と丁寧に、そして誠実に対話し、小さな声ひとつひとつをよく聞き、真摯に受け止めるとともに、国土交通行政において、現場を持つ強み、総合力を活かして、施策の立案・実行に全力で取り組んでいく所存です。

引き続き、特に以下の3つの柱に重点を置いて諸課題に取り組んでまいります。

①国民の安全・安心の確保
②コロナ禍からの経済社会活動の確実な回復と、経済好循環の加速・拡大
③豊かで活力ある地方創りと、分散型の国づくり

①国民の安全・安心の確保

【東日本大震災からの復興・創生】

東日本大震災からの復興の加速は、政府の最優先課題の一つです。引き続き、現場の声にしっかりと耳を傾け、被災者の方々のお気持ちに寄り添いながら、震災からの復興、そして福島の復興・再生に取り組んでまいります。

国が主体となって整備を進めてきた復興道路・復興支援道路550kmについては、令和3年12月18日に全線開通しました。引き続き、常磐自動車道における暫定2車線区間の4車線化及び小高スマートICの整備を推進してまいります。

住宅再建・復興まちづくりでは、避難解除区域等内の復興・再生を図るため、福島県内の復興再生拠点の整備を支援してまいります。このほか、東日本大震災からの復興の象徴である国営追悼・祈念施設について、一昨年整備が完了した岩手県・宮城県においては引き続き適切な管理を行うとともに、福島県においては令和7年度の整備完了に向けて着実に取り組んでまいります。

観光関係では、福島県に対し、観光振興に向けた滞在コンテンツの充実・強化、受入環境の整備等の取組を総合的に支援するとともに、ALPS処理水の海洋放出による風評への対策として、岩手県・宮城県・福島県・茨城県の沿岸部に対し、ブルーツーリズムの推進について支援を行ってまいります。

【自然災害からの復旧・復興等】

昨年は、8月の大雨や9月の台風第14号及び台風第15号等の自然災害が発生し、全国各地で河川の氾濫及び内水等による浸水被害や土砂災害による被害等が生じました。記録的な勢力を保ったまま九州に上陸した台風第14号では、過去最多となる129のダムでの事前放流の実施や防災・減災、国土強靱化のための5か年加速化対策等による河道掘削等のこれまでの対策の効果が見られました。一方、降雨量があと少しでも増加すれば氾濫するところまで水位が上昇した河川も多く、今後、気候変動による降雨量の増加も予測されていることから、更なる事前防災対策の必要性を改めて認識したところです。

昨年発生した自然災害により被災した地域に加え、平成28年熊本地震、令和2年7月豪雨等で被災した地域も含め、被災者の方々のお気持ちに寄り添いながら、引き続き、生活再建の支援に向けて、必要な取組に注力してまいります。

【盛土対策】

令和3年7月に熱海市で発生した土石流災害を受け、盛土による災害を防止するため、昨年5月に盛土規制法が公布されました。現在、本年5月の法施行に向けて、ガイドラインの検討等を進めており、都道府県等による早期の規制区域の指定に向けた支援など、本法による規制が実効性をもって行われるよう、引き続き、取組を進めてまいります。

②コロナ禍からの経済社会活動の確実な回復と、経済好循環の加速・拡大

新型コロナウイルス感染症によりお亡くなりになられた方々に改めてお悔やみを申し上げますとともに、直接的、間接的に被害を受けられた全ての皆様に、心よりお見舞い申し上げます。また、コロナ禍の中、献身的に尊い使命と責任を果たしていただいている全てのエッセンシャルワーカーの皆様に、心から敬意と感謝を申し上げます。

【国土交通分野におけるGXの推進】

近年、気候変動の影響により、自然災害が激甚化・頻発化するなど、地球温暖化対策は世界的に喫緊の課題となっており、我が国においては、2050年カーボンニュートラルを目標として、GX(グリーントランスフォーメーション)の実現に政府を挙げて取り組んでいるところです。地域のくらしや経済を支える幅広い分野を担っている国土交通省としても、民生・運輸部門の脱炭素化等に貢献するため、住宅・建築物や公共交通・物流等における省エネ化、インフラを活用した太陽光や水力、バイオマス等の再エネの導入・利用拡大(創エネ)、輸送・インフラ分野における非化石化等を推進してまいります。

脱炭素社会の実現に向け、住宅・建築物の省エネ対策等を強化することとしており、昨年成立した改正建築物省エネ法に基づき省エネ基準適合の全面義務化を進めるとともに、優良な都市木造建築物等や中小工務店等が建築する木造のZEH等に対する支援を行ってまいります。また、都市のコンパクト・プラス・ネットワークの推進等とあわせて、街区単位での面的な取組などの効率的なエネルギー利用に向けた施設整備等の取組、都市空間の緑化などの脱炭素に資するまちづくりを推進してまいります。さらに、緑と自然豊かな民間都市開発や都市公園整備、道路緑化等を通じてグリーンインフラの社会実装を推進することにより、都市部におけるCO2吸収源対策やヒートアイランド現象の緩和等を効果的に進めるとともに、環境を重視した民間投資の拡大を促進してまいります。

コンテナターミナルなどにおける「カーボンニュートラルポート」(CNP)構築のイメージ(資料:国交省)

建設施工分野においては、直轄工事において省CO2に資するコンクリート等の建設材料の現場試行を実施するなどの取組を推進します。

このほか、近年の気候変動の影響による水害の激甚化・頻発化を踏まえた治水対策とともに、2050年カーボンニュートラルに向けた取組を加速させるため、治水機能の強化と水力発電の促進を両立させる「ハイブリッドダム」の構築に向けた取組を進めています。治水と発電の双方に利益のある形で進めていけるよう、取組の方法や進め方等の具体化を図ってまいります。

下水道分野においては、本年度に創設した「下水道脱炭素化推進事業」等を通じた下水道の脱炭素化に資する事業に対する財政的な支援や、技術開発を推進するとともに、温室効果ガス排出量の見える化など、下水道管理者や民間企業等が効率的な取組を進めるための環境整備等も実施してまいります。

運輸部門の脱炭素化に向けて、財政支援や財政投融資等の拡充を進めています。こうした支援策を通じて、交通分野においては、EV車両や充電器設備の導入、その運用を可能とするためのエネルギーマネジメントシステムの構築など、交通GXを推進してまいります。

物流分野においては、コンテナ専用車両の導入支援等によるトラックから海運・鉄道へのモーダルシフトや共同輸配送といった取組を着実に推進するとともに、物流施設における再エネ施設・設備等の一体的な導入支援を行うことなどにより、物流施設の脱炭素化を推進します。

自動車分野においては、次世代自動車の普及促進を図ってまいります。関係省庁と連携し、グリーンイノベーション基金を活用した貨物・旅客事業での実証に向けた取組を進めていくほか、燃費規制や税制優遇、導入補助等の取組を進めてまいります。

航空分野においては、改正航空法に基づき昨年12月に策定した航空脱炭素化推進基本方針に基づいて、持続可能な航空燃料(SAF)の導入促進、空港の再エネ拠点化等により、脱炭素化の取組を推進し、国際民間航空機関(ICAO)において採択された2050年までのカーボンニュートラル目標の実現を目指します。

鉄道分野においては、鉄道アセットを活用した再エネの導入や、鉄道車両・施設等の脱炭素化を促進するとともに、燃料電池鉄道車両の開発の推進やバイオディーゼル燃料の導入の促進等の取組を進めてまいります。

船舶分野においては、国際海運2050年カーボンニュートラルの実現に向け、ゼロエミッション船の技術開発支援を行っており、アンモニア燃料船については2026年、水素燃料船については2027年の実証運航開始を目指します。また、国際海事機関(IMO)において、我が国が米英等と提案した国際海運2050年カーボンニュートラルを世界共通の目標とすべく、本年夏の「GHG削減戦略」の改定や、ゼロエミッション船の導入を促すための経済的手法や規制的手法など国際ルール作りを主導してまいります。加えて、ガス燃料船の供給体制整備を推進するとともに、内航海運の低・脱炭素化に取り組みます。

港湾分野においては、昨年12月に港湾における脱炭素化の推進等を図る「港湾法の一部を改正する法律」が施行されました。今後、今回の改正法に基づき、我が国の産業や港湾の競争力強化と脱炭素社会の実現に貢献するため、脱炭素化に配慮した港湾機能の高度化や、水素等の受入環境の整備等を図るカーボンニュートラルポート(CNP)の形成を推進してまいります。また、再エネの導入拡大に向け、再エネ海域利用法に基づく案件形成や基地港湾の計画的な整備等により洋上風力発電の導入を促進してまいります。

このほか、引き続き、気候変動の適応策を推進するとともに、昨年12月にカナダのモントリオールで開催されたCOP15において、「昆明・モントリオール生物多様性枠組」が採択されたことを受け、グリーンインフラの取組等により生態系ネットワークの保全・再生・活用、健全な水循環の確保等を図り、2030年までに海と陸の30%以上を保全する目標の達成に貢献してまいります。

【国土交通分野におけるDXの推進】

デジタル技術を活用して地域の課題解決、新たな価値の創出を図る「スマートシティ」に関しては、昨年、関係府省と連携し、合同で公募・審査を行い、スマートシティ実装化支援事業として先進的な都市サービス等の実装化に取り組む14地区を選定しました。引き続き、官民連携プラットフォームを活用した好事例の横展開や「スマートシティモデル事業等有識者委員会」を通じた先進的な取組の知見整理等を実施するとともに、本年は都市マネジメントの高度化等の先進的な取組を行う地域に重点的な支援を行うなど、スマートシティの実装化を一層推進してまいります。

交通分野においては、地域交通が極めて厳しい状況にあることから、財政支援や財政投融資等の拡充により交通DXを推進することで地域交通の持続可能性と利便性・生産性の向上に取り組みます。具体的には、MaaSの実装や交通分野でのキャッシュレス決済手段の導入、自動運転の実証調査等を推進してまいります。特に、MaaSについては、移動の利便性を大幅に向上し、地域の公共交通の維持・活性化や移動手段の確保等の地域課題の解決に資する重要な手段であることから、現在、全国各地でモデル構築に取り組んでいるところです。引き続き、ウィズコロナ・ポストコロナ時代における新たなニーズへの対応も含めて、移動に求められる様々なニーズに対応できるMaaSを推進し、免許を返納した高齢者、障害者の方々、さらには外国人旅行者も含めて、移動しやすい環境を整備してまいります。また、地域交通の移動サービスにおいては、自動運転の活用が期待されているところです。昨年より自動運転による地域公共交通実証事業を全国9つの地方自治体で実施しており、本年は更に対象地域を拡大して自動運転の実用化につなげてまいります。また、交差点等の車載センサだけでは検知困難な道路交通状況を把握するため、道路インフラから適切な情報提供支援に取り組むこととしています。引き続き、レベル4自動運転の実現に向けた環境整備など、自動運転の高度化や自動運転サービスの全国展開に向けた取組を推進してまいります。

③豊かで活力ある地方創りと、分散型の国づくり

【コンパクトでゆとりとにぎわいのあるまちづくりや都市再生の推進】

生活サービス機能と居住を拠点に誘導し、公共交通で結ぶコンパクト・プラス・ネットワークのまちづくりについては、昨年7月末までに立地適正化計画の作成に取り組む市町村が634都市、作成・公表した市町村が460都市、立地適正化計画と地域公共交通計画を併せて作成した市町村が336都市と着実に増加しています。今後、都市の骨格となる公共交通の確保や都市圏全体でのコンパクト化の推進等を図る支援施策の充実等に取り組み、持続可能な多極連携型まちづくりを推進してまいります。

変化・多様化する人々のニーズに対応するため、まちの資源を最大限に利活用し、エリアの価値を向上させることにより、ゆとりと賑わいあるウォーカブルなまちづくりに取り組んでまいります。昨年までに70を超える自治体が、法律に基づく区域を設定し、居心地が良く歩きたくなるまちなかづくりに取り組んでいます。国土交通省としては、引き続き、法律・予算・税制等のパッケージによる支援を実施してまいります。加えて、多様化する道路空間へのニーズに対応するため、賑わいのある道路空間を構築するほこみち(歩行者利便増進道路)制度の普及を促進するとともに、道路空間の柔軟な利活用による地域の魅力向上、賑わい創出を推進してまいります。

都市の国際競争力の強化に向け、昨年は、9件の民間都市開発事業を認定し、金融・税制支援を行いました。引き続き、これらの支援により民間投資を喚起するとともに、重要インフラ等の整備への支援を行ってまいります。また、地方都市のイノベーション力の強化に向け、地方都市と大都市の連携を促進してまいります。これらの取組を通じ、都市再生を推進してまいります。

さいごに

統計の不適切処理に関する問題につきましては、昨年8月に再発防止策となる「国土交通省統計改革プラン」を取りまとめました。公的統計に対する信頼回復に向け、「開かれ、使われ、改善し続ける統計」を基本原則に、このプランを着実に実施してまいります。

本年も国土交通省の強みである現場力・総合力を活かして、国土交通行政における諸課題に全力で取り組んでまいります。国民の皆様の一層の御理解、御協力をお願いするとともに、本年が皆様方にとりまして希望に満ちた、大いなる発展の年になりますことを心から祈念いたします。

(原文から本紙用に一部省略し改編)

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