【年頭所感・2023年:協会・団体・自治体④】加藤 仁((一社)日本風力発電協会 代表理事)「2023年 年頭ご挨拶」

明けましておめでとうございます。
長らく続いたコロナ感染防止の規制も緩和され、観光客の姿も急増し、漸く市街地にも活況が戻りつつあり、皆様におかれましては待望のWithコロナの「新しい日常」が始まるという期待で新年を迎えておられるところかと思います。
さて、昨年2月のロシアのウクライナ侵攻により世界のエネルギー事情は大混乱に陥りました。欧州では深刻なエネルギー供給不足により電力価格が高騰し危機的状況となり、この冬の過渡期的対策として原子力、石炭火力の延命が議論されていますが、脱炭素の基本路線に変更はなく、むしろ脱ロシアを加速・達成するために2030年の洋上風力の導入目標をEUでは150GW、英国では50GWと大幅に引き上げました。また米国でも2030年の導入目標を30GWに設定しました。

わが国でも輸入化石燃料の高騰が電力会社の経営を悪化させ、電気料金の規制料金の上限を超える更なる値上げで国民生活への影響が深刻になってきています。
今まで安くて安定している(と思い込んでいた)輸入化石燃料への依存の脆弱さに直面することになり、再エネの導入=エネルギーの構造転換が遅れているわが国にとっては「エネルギー安全保障(自給率)の重要さ」を改めて認識させられることになりました。

わが国でも再エネの最大限導入が政策の柱として打ち出されており、第6次エネルギー基本計画では、2030年の電源構成として風力で5%(陸上風力:17.9GW、洋上風力:5.7GW)の導入目標が設定されています。更に、わが国は四方を海に囲まれた世界有数の海洋国家であることから浮体式も含めた洋上風力発電への期待は大きく、政府の掲げるグリーントランスフォーメーション(GX)の中でも、新たな産業として大きな経済波及効果をもたらす電源として期待されています。

しかしながら、わが国の洋上風力発電の現状は期待と話題が先行しているのが実情で、実績と呼べるものは秋田港・能代港の港湾プロジェクトが1件あるだけで、一般海域の案件は工事着手もこれからという段階にあります。

昨年は「待ちに待った洋上風力の導入が始まった!これからどんどん推進していく」という旨の楽観的な年頭挨拶をしましたが、今年は急激に変化する欧州、米国市場を目の当たりにして、わが国の洋上風力導入の成否がかかった正念場になると感じ、このままでは台湾・韓国という近隣諸国からも取り残されてしまう可能性もあるという厳しい状況に置かれていることをひしひしと感じています。
一方で、浮体式洋上風力については、欧州や米国を中心に想定以上の速度で技術革新や導入計画が進んでおり、日本でも排他的経済水域(EEZ)を活用する方向で政府による議論が進んでいます。浮体式基礎の商業規模の大量生産技術は海外でも確立されていないため、造船技術に優れる日本にも十分なチャンスがあるものと認識しています。

2020年12月の第2回洋上風力の産業競争力強化に向けた官民協議会では2030年までに毎年1GW以上の公募を実施し、日本市場の蓋然性を示し、その間に洋上風力関連産業の育成/成熟を計り10年間で欧州に追いつくという目論見を設定したのですが、最近の情勢の変化を受けて、従来計画の見直しが必要になってきたように思います。

系統・港湾のインフラ整備、国内産業の育成/サプライチェーンの形成、電力取引市場の整備・ルール作りなど課題が山積みであり、一方で将来案件のパイプラインを示し日本市場の魅力を積極的にアピールする必要もあり、何を何時どのように実施するのかを明確にした洋上風力導入のグランドデザイン/具体的なシナリオを早急に策定することが不可欠となっています。
また、陸上風力についても2030年までに17.9GWを稼働させるには、ここ数年は2~3GWの案件形成をする必要があり、FIP適用市場のルール整備、系統整備などは待ったなしの状況となっています。

2050年のカーボンニュートラルを実現するためには、風力発電、特に大型模な洋上風力の導入は必須であり、2030年以降は毎年3~4GWの洋上風力案件の公募をしていくことが必要です。毎年数千億円規模の案件が3~4件公募に掛かるという状況となるのです。わが国の発電所建設の歴史の中でも、これだけの規模の新規案件が毎年出来てきたことはなく空前の大市場となるのです。
その為には、今それを支える成熟した洋上風力産業を形成する必要があるのです。
国内には、欧州のサプライチェーンに匹敵するほどの要素技術・知見をもった企業がそろっています。これらの企業が安心して参入できるような市場制度・環境を整えることが今年の大きな目標であります。市場の無いところに技術は育たないし、技術の無いところに安定した市場は育ちません。
また、海外ではCO2フリーの電気で製造した製品しか購入しないと言うビジネスモデルが出来つつあり、再エネ導入の遅れは日本の輸出産業にも大きな影響が出ることになります。
政府として化石燃料から再エネへのエネルギーへの移行を国全体としてどのように進めて行くかのグランドデザインと具体的な移行の手順、方法を策定すべき時に来ています。
エネルギー社会の転換は、国として明確な方針の下に進められるものであり、この方針の下で洋上風力を始めとする日本の再エネは新たな雇用、経済波及効果をもたらすように導入推進されるべきであると考えます。
今年は、エネルギー安全保障と経済安全保障を第一義にグランドデザインと具体的な移行手順と方法の策定の実現に協会として全力で取り組んでいきたいと考えております。皆様の益々のご支援ご指導をお願いして年頭のご挨拶とさせていただきます。

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