《創刊10周年特集〝エネルギーの来し方10年・行く末10年〟寄稿》環境省 地球環境局 地球温暖化対策課長 吉野 議章「地域脱炭素の旗の下に」

[画像・上:2023年度までの4回の選考で脱炭素先行地域として選定された、全国36道府県94市町村の73提案(資料:環境省)]

◆地域脱炭素の旗

令和2年10月に総理が2050年カーボンニュートラルを宣言した際、「国と地方で検討を行う新たな場」の創設が表明され、12月には「国・地方脱炭素実現会議」が設置された。地域脱炭素の「旗」が立った瞬間であった。その旗印の下で地域の取組と密接に関わる「暮らし」「社会」の分野の脱炭素方策の議論が進められ、令和3年6月に「地域脱炭素ロードマップ」が策定された。

気候変動による異常気象が世界各地で発生し、我が国においても、激甚な豪雨・台風災害や猛暑が頻発しており、地域は大きな影響を受けている。こうした気象災害等を背景に、多くの地方公共団体が「気候非常事態」を宣言し、令和2年11月には衆参両議院において「気候非常事態宣言」が決議される、そんな状況下での動きであった。

同ロードマップは、地域課題を解決し、地域の魅力と質を向上させる地方創生に資する脱炭素に国全体で取り組むために、特に2030年までに集中して行う取組・施策を中心に、地域の成長戦略ともなる地域脱炭素の行程と具体策を示すものである。自治体・地域企業・市民など地域の関係者が主役となり、今ある技術を適用して、再エネ等の地域資源を最大限活用することで、経済を循環させ、防災や暮らしの質の向上等の地域の課題をあわせて解決し、地方創生に貢献する、それがキーメッセージである。

「脱炭素先行地域」は、民生部門の電力消費に伴うCO2排出の実質ゼロを中心に取り組む地域である。2025年までに少なくとも100カ所選定し、地域特性に応じた先行的な取組実施の道筋をつけ、2030年度までの実行を目指している。

◆脱炭素先行地域

これまで全国36道府県94市町村の73提案が選定された。大都市や小規模市町村等の市街地、住宅街、山村地域、離島など、様々な地域において多様な提案をいただき、特に、先進性・モデル性のあるものを脱炭素先行地域として選定してきた。選定地域が増えるにつれ、これまで以上に新たな先進性・モデル性の打ち出しが求められることから、既選定提案との比較や分析等を行っていただき、提案をご検討いただきたいと考えている。環境省としても、先進性・モデル性の観点で際立った特徴があるもので、かつ実現可能性が高いと考えられる、全国のモデルとなる地域を選定していきたい。

環境省では、脱炭素先行地域と脱炭素の基盤となる重点対策を行う地方公共団体を支援すべく「地域脱炭素推進交付金」を交付し、複数年度にわたり継続的かつ包括的な支援している。令和6年度は、当初予算の425億円と令和5年度補正予算135億円を合わせ560億円を計上している。

◆地球温暖化対策推進法による地域脱炭素

再エネの最大限の導入に向けては、地域の合意形成を図りつつ、環境に適正に配慮し、地域に貢献する、地域共生型の再エネを増やすことが重要である。令和3年の温対法改正で盛り込まれた「地域脱炭素化促進事業制度」は、市町村が、再エネ促進区域や再エネ事業に求める環境保全・地域貢献の取組を自らの計画に位置付け、適合する事業計画を認定する仕組みで、令和4年度から施行され、本年4月時点で32市町村が再エネ促進区域を設定している。

本制度は施行後まだそれほど時間が経っていないが、施行状況等を踏まえ、現在、市町村のみが定めることができる再エネ促進区域について、都道府県及び市町村が共同して定めることができることとし、その場合、複数市町村にわたる事業計画の認定を都道府県が行えるようにする温対法改正案を今通常国会に提出している。これにより制度の活用を加速していきたい。

また、令和4年の温対法改正により、株式会社脱炭素化支援機構が設立された。機構は、国の財政投融資からの出資と民間からの出資を原資として、再エネ・蓄エネ・省エネ、資源の有効利用等、幅広い事業領域を対象に投融資(リスクマネーの供給)を行う官民ファンドである。機構の活用により各地で脱炭素事業への民間投資を促進していく。

◆地域共生型再エネの今後の展開

環境省では、今後、①地域脱炭素を通じた地域共生型再エネの導入、②公共施設への率先導入と需要創出、③民間・住宅における自家消費の更なる推進、④効果的・効率的な環境配慮、⑤計画的かつ適正な廃棄・リサイクルの実施、の5本柱で、再エネの最大限導入に取り組んでいく。ご紹介した地域脱炭素の取組のほか、昨年9月には、環境省が事務局となり全府省庁を構成員とする「公共部門等の脱炭素化に関する関係府省庁連絡会議」を立ち上げた。地方公共団体保有施設も含め、公共部門について進捗管理をしながら、太陽光発電の導入等の脱炭素化の取組を着実に進めていく。

2050年ネットゼロに向け、次期NDC(削減目標)の提出、地球温暖化対策計画やエネルギー基本計画の見直しに向けた議論が今後進められていく。GX2040ビジョンに向けた議論もスタートしたところである。2030年度46%削減目標の実現への途上にある今、足元の取組をしっかり固めつつ、再エネの最大限の導入拡大に向けて施策を充実させていく。そして、地域資源である再エネを活用しながら、地域からのGX、経済活性化、災害に強い地域づくりへの貢献、ひいては「ウェルビーイング/高い生活の質」の向上につなげていく。

吉野議章氏(環境省 地球環境局 地球温暖化対策課長 ):1997年、環境庁(当時)入庁。その後、横浜市温暖化対策統括本部環境未来都市推進担当部長、環境大臣秘書官事務取扱、企画評価・政策プロモーション室長、放射性物質汚染廃棄物対策室長、内閣官房内閣参事官(官邸参事官室)などを経て現職
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