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- 《創刊10周年特集〝エネルギーの来し方10年・行く末10年〟寄稿》経済産業省 資源エネルギー庁 省エネルギー・新エネルギー部長 井上博雄「再生可能エネルギーの最大限の導入拡大に向けて」
《創刊10周年特集〝エネルギーの来し方10年・行く末10年〟寄稿》経済産業省 資源エネルギー庁 省エネルギー・新エネルギー部長 井上博雄「再生可能エネルギーの最大限の導入拡大に向けて」
- 2024/6/10
- 特集
- 新エネルギー新聞2024年(令和6年)06月10日付

[画像・上:日本国内の電源構成の推移と、現行エネルギーミックス上の2030年度電源構成(資料:経産省/資源エネ庁)]
●世界で加速する脱炭素化に向けた動き
我が国のエネルギーを取り巻く情勢やエネルギー需給の構造は、この10年間で大きく変化している。
世界中で脱炭素の動きが広まっており、2050年までのカーボンニュートラルを表明している国・地域は日本を含め146に及ぶ。欧米では、各国政府が積極的に新しい政策を打ち出し、グローバルに、カーボンニュートラルに向けた投資競争が始まっている。また、昨年に開催されたCOP28においては、議長国であるUAEとEUが主導し、再エネについて「2030年までに発電容量を世界全体で3倍にする」という目標を掲げた決定文書が採択された。
地政学リスクの面においては、天然ガスや石油等の主要生産国であるロシアによるウクライナ侵略により、ロシアへのエネルギー依存度が高い欧州諸国を中心として、エネルギーセキュリティの重要性があらためて世界的に再認識されることとなった。EUでは、ロシアによるウクライナ侵略を受けて発表した「REPowerEU計画」において、省エネの推進に加えて、天然ガス等のエネルギー輸入元の多角化と再エネへの移行等によって、エネルギーの安全保障の確保を目指すという方針を打ち出した。
日本の電源構成については、福島第一原発事故の後、国内の全ての原子力発電所の稼働が停止したため、10年前の2014年は、電源構成における火力発電比率が約87%もあり、再エネ比率は約13%にしか過ぎなかったが、2012年度からスタートしていたFIT制度による後押しにより、再エネ比率は2022年度には約22%まで高まった。再エネの中でもリードタイムが短い太陽光発電は、2014年度の2.2%から2022年度には9.2%と急速に導入が拡大してきた。こうした再エネの導入拡大も寄与し、我が国の温室効果ガスの排出量は2050年に向けて順調に減少傾向にある。
●再エネ産業の競争力強化と強靭なサプライチェーン構築に向けて
我が国のエネルギー安全保障やカーボンニュートラルの実現、そして、今後、グローバルにクリーン市場が拡大していくことが見込まれることを考えれば、地域との共生を前提に、国民負担の抑制をはかりながら、再エネを最大限導入していくことが重要である。また、電力ネットワークの次世代化や蓄電池等の調整力の強化を進めるとともに、太陽光発電や洋上風力等の産業競争力の強化やサプライチェーンの強靭化、人材の育成等を強化していかなければならない。政府としては、エネルギー安定供給を前提に、排出削減と産業競争力強化・経済成長を同時に実現することを目指したグリーントランスフォーメーション(GX)を実行するため、今後10年間で150兆円を超える官民投資を実現する目標を掲げ、政府も20兆円規模の先行投資支援を行う方針である。昨年12月には、「分野別投資戦略」をとりまとめ、重点16分野についてGX実現に向けた方向性や投資促進策、必要な規制・制度的措置の考え方等を提示した。
地域と共生した形で再エネの導入を進めるため、事業規律を強化する改正再エネ特措法を今年4月に施行し、関係法令に違反する事業者には、早期の是正を促すために、FIT/FIP交付金を一時停止することとしており、4月2日には、森林法違反が明らかな9件に対して、交付金の一時停止の措置を実施したところである。現地調査体制や自治体との連携も強化し、違反事例に対しては厳正に対処していく方針である。
●再エネの「光と影」と向き合いながら、再エネ政策を推進
太陽光発電については、FIT・FIP制度による足下の導入拡大に加えて、日本発の技術であり、軽量で柔軟という特徴を有し、建物の壁面などこれまでに設置が困難な場所にも導入可能なペロブスカイト太陽電池の技術開発、量産体制の構築、社会実装を進めていく。主な原材料のヨウ素は日本が世界第2位の産出量であり、特定国からの原料供給状況に左右されることなく、より強靭なエネルギー供給構造の実現につながることを期待している。こうした次世代型太陽電池に係る取組への支援に加え、今後見込まれる太陽光パネルの大量廃棄へ向けて、廃棄・リサイクルに関する制度整備についても関係省庁と連携して検討を進めていく。
洋上風力は、大量導入ができる可能性等の観点から、カーボンニュートラル実現の切り札として期待され、2030年までに10GW、2040年までに浮体式を含む30~45GWという目標を掲げて、再エネ海域利用法に基づき着実に領域内の案件形成を進めている。さらに、遠浅の海域が少ない日本では浮体式洋上風力の導入も重要であり、我が国の広大な排他的経済水域において、洋上風力発電設備の長期間の設置を認める制度等を含む再エネ海域利用法改正法案を国会でご審議いただいているところである。また、浮体式洋上風力の欧米との連携も視野に入れた技術開発や国内サプライチェーンの構築、洋上風力の保守メンテナンス等を担う人材の育成も進めていく。
鉄鋼や化学等の脱炭素化が困難な産業分野、いわゆるhard to abateセクターやモビリティ分野などにおいては、燃料や原料を再エネ等に由来する低炭素水素等に転換していくことが不可欠である。先日、国会で成立した水素社会推進法においては、先行的で自立が見込まれるサプライチェーンを構築していく上で、国内事業を最優先に支援を行っていく方針であり、国内の再エネの有効活用等にもつながることを期待している。
今年度はエネルギー基本計画を見直す節目の年である。再エネの「光」をのばし、「影」にしっかりと対処する政策を力強く進め、エネルギー安全保障の強化、再エネ産業の競争力強化を進めるとともに、2050年カーボンニュートラルに貢献していきたい。


