≪新エネルギー・テクニカルレビュー≫英弘精機の「新型風況観測用ドップラーライダーシステム」
- 2019/2/15
- 風力
- 新エネルギー新聞2019年(平成31年)02月11日付

レーザー光の反射利用、高高度でも高い測定精度確保
英弘精機はさきごろ、鉛直方向風況観測用のドップラーライダー「WIND CUBE」のバージョンアップを発表した。
[画像・上:新型風況観測用ドップラーライダーシステム「WIND CUBE V2.1」]
風力発電での風況計測はIEC61400-12基準に準拠した気象観測マストでの計測が規定されているが、近年は風車の大型化によってハブ高度が上昇しており、気象観測マスト(通常は60m/h以下)では測定が難しくなっている。そのためライダーでの測定が増加しているが、気象観測マストなどとの比較試験で計測性が保たれている必要がある。WIND CUBEは第三者機関での評価により、計測性が証明されている。
測定原理は、波長1.54μmのパルスレーザーを天頂から28度の傾斜で上空4方位へ出射し、4方位上空に浮遊するエアロゾル粒子からの後方散乱によるドップラーシフト信号から4方位の視線速度を計測する。これらの4方位の視線速度から高度別の水平風速、風向が計算される。鉛直風速についてはライダーから鉛直に出射した5方位目のレーザーを通過するエアロゾル粒子の後方散乱ドップラー信号から鉛直視線速度が計測され、鉛直視線速度がすなわち鉛直風速となる。
昨年11月に「海洋再生可能エネルギー発電設備の整備に係る海域の利用の促進に関する法律」が国会で可決された。陸上での風力発電は立地規制などもあり適地が減少している。一方で洋上風力発電は占用許可などの問題で、中長期の見通しが立てにくいことがネックとなっていた。
経産省の調べでは、一般海域における洋上風力発電の賦存量は、着床式だけでも約91GW(約9万1,000MW)ある。国内の洋上風力導入実績は、一般海域・港湾区域合せて6基・約20MWに留まっており、一般海域において占有して洋上風力事業を行う利用ルールなどを定めたこの法の成立で、洋上風力発電の導入は加速すると見られている。エネルギーミックスでは2030年度までに陸上と合わせた風力発電全体の導入量は1,000万kW(1万MW)となっているが、洋上風力の発電コストが下がり国際的水準に達するようであれば、さらなる拡大もあり得る。
WIND CUBEは陸上と同様に洋上での風況計測も可能。現在、WIND CUBEでの洋上での風況計測は、銚子沖洋上鉄塔風況観測、響灘沖洋上鉄塔風況観測、 福島沖浮体式洋上風力プロジェクト、産業技術総合研究所での比較測定など、各地の風力関連事業者で使用中また使用が予定されている。
■新型WIND CUBEの仕様・特長
・陸上、洋上問わず使用可能
・上空200m以上にわたり12高度の風況観測が可能
・コンパクトサイズ、軽量化を実現
・3年間保証(原則)
・世界各国での豊富な納入実績と高信頼性
・複雑地形補正ソフト標準搭載予定
・Stage3※の機器(※DNV.GL Classification of RS devices)
なお本装置はLeosphere社で製作され、英弘精機は日本における販売総代理店である。昨年秋にLeosphere社はVaisala社の傘下となったが、ライダー装置に関しては英弘精機が事業を継続する。
「第7回 国際風力発電展(WIND EXPO)」で展示予定(ブース番号:E43-2)だ。