≪特集「自治体向け再エネソリューション」≫特別寄稿・ISEP山下紀明氏「これからの自治体の再エネ政策」
- 2020/5/15
- 特集
- 新エネルギー新聞2020年(令和2年)05月11日付

~再エネと地域の新たな関係構築に向けて~
内閣府の自治体SDGs推進や、環境白書で提唱された「地域循環共生圏」などにより、地域の脱炭素化、経済振興、レジリエンス向上に活用できる再エネ導入が注目を集めている。鍵を握るのは自治体のエネルギー政策であり、政策に貢献するソリューションだ。本特集では認定NPO法人環境エネルギー政策研究所(ISEP)で自治体のエネルギー政策を担当する山下紀明氏に自治体が再エネ導入を推進するためのポイントを解説していただくと共に、自治体のエネルギー政策に適合する再エネソリューションを紹介する。
[画像・上:小田原市長、REXEV代表、湘南電力代表が出席したモデル事業テスト運用開始のお披露目式(提供:湘南電力)]
ISEP山下氏「技術や国の助成を『使いこなす』自治体の知恵が重要に」
●自治体はエネルギー転換の最前線
パリ協定やSDGsといった国際的な要請に加え、太陽光・風力の急速なコスト低下、ゼロエネルギーハウス(ZEH)や電気自動車が示すような電力・熱・建築・交通の統合が世界的に起こっています。日本の再エネ拡大には、長期的なエネルギー目標の設定、送電線の増強、熱や交通との統合など課題も多くありますが、自治体はエネルギー転換の現場であり、最前線となっていきます。
●自治体の再エネ政策枠組み

再エネをまちづくりと統合して進める自治体もあれば、大規模な太陽光発電開発に伴う地域トラブルに悩む自治体もあります。適切な再エネ政策の推進には、首長のリーダーシップが重要なのは当然ですが、首長は交代するリスクもあります。自治体として再エネ政策を継続的に進めていく上では、総合計画や条例での位置付け、民間とのパートナーシップが必須です。また再エネ政策は担当部署だけでできることは多くありません。例えばバイオマスでは農林担当部署や地域住民などと調整していく必要がありますから、担当部署の調整力なども問われます。
●新たな取組み
最近では2050年に二酸化炭素排出実質ゼロを宣言する自治体も増えました。そこで注目すべきは、公共施設での再エネ調達でしょう。東京都はすでに第一本庁舎の再エネ100%電力の調達を行い、今後さらに広げていく予定です。世田谷区の区立保育園などでは、長野県企業局所有の水力発電の電気を購入しています。民間での再エネ電力購入の動きを促進する意味でも、自治体の電力調達を変えていくことは大きな意味があります。
地域新電力も新しい動きです。電力の小売だけでなく、経済循環や高齢者見守りサービスなども一緒に検討することで、地域課題の解決も期待されています。神奈川県小田原市では「EVを活用した地域エネルギーマネジメントモデル事業」が始まりました。地域新電力である湘南電力が自社の再エネ電源を電気自動車のシェアサービスと結びつけ、行政と連携して災害時の「動く非常用電源」として活用することも考えています。
こうしたエネルギーと地域課題を結びつけた取組みを進めるために、環境省が提唱する地域共生循環圏や内閣府が提唱するSDGs未来都市などの枠組みをうまく使って検討することは有益でしょう。新しい技術や助成金があるから検討を行うのではなく、自分たちが目指す地域には何が必要かを行政がしっかりと考えた上で技術や外部のサービスを使いこなしてくことが肝要です。
●再エネで地域課題を解決する
自治体の再エネ政策はもはや、地球温暖化のためだけに、限られた予算からの持ち出しで補助や啓発を行うものではありません。これからは、統合的な再エネ政策を策定し、再エネと地域課題を結び、再エネをツールとして「地域の未来像を変えていく」ことが求められています。
≪やました・のりあき 氏≫
1980年大阪生まれ。京都大学大学院地球環境学舎(地球環境学修士)を卒業後、2005年からISEPにて自治体のエネルギー政策を担当。京都大学経済学部非常勤講師

