新エネルギー財団「導入促進に向けた提言」まとまる②太陽光
- 2020/5/18
- 政策
- 新エネルギー新聞2020年(令和2年)05月11日付

FIT抜本見直しを経て主力電源化する太陽光目指し提言
(一財)新エネルギー財団は3月、最新となる令和元年度(2019年度)の再エネ・分散型電源に関する「新エネルギーの導入に関する提言」を策定した。提言は、産学で構成される財団内の新エネルギー産業会議(議長:牛山泉・足利大学理事長)で取りまとめられた。なお提言は既に経済産業省資源エネルギー庁に提出されている。
新エネルギー財団の産業会議は「風力発電システム」、「廃棄物発電システム」、「バイオマスエネルギーの利活用」、発電を中心にした「太陽エネルギーの普及促進」、「地域新エネルギーの普及促進」、「水力発電の開発促進」、「地熱エネルギーの開発・利用促進」の各分野で委員会が設けられており、提言もそれぞれの委員会別にまとめられている。再エネの大きな変革期を読み解く提言の数々だ。
総勢79名で構成される新エネルギー産業会議は、各分野の第一線で事業・研究を行う産学のスペシャリスト揃い。そんな産業会議で議論され作成された今回の提言は、再エネ各電源にまつわるトピックをほぼ網羅している。紙面ではその中から内容を絞り込んで、前回に引き続き今回は太陽光発電の提言を紹介する。なお提言の全文は以下の新エネルギー財団のWebサイトからダウンロードすることができる。
https://www.nef.or.jp/introduction/teigen/te_r01.html
①太陽光 ◆太陽エネルギー委員会:委員長=黒川浩助・特定非営利活動法人再生可能エネルギー協議会名誉理事
電力システムや電力需給と一体となり拡大する再エネ・太陽光の可能性
[画像・上:【イメージ】再エネ水素製造施設「福島水素エネルギー研究フィールド(FH2R)」で、水素を製造する際の電源となる20MWの太陽光発電設備]
国内再エネの「主力」太陽光発電が「主力電源」となるために
2012年7月に開始されたFIT制度において認定され、既に運開した再エネ発電所の合計容量は約4,800万kW。そのうち約4,400万kW、93%を占めるのが太陽光発電だ。太陽光の累計導入量は世界の国別で見ると、中国・米国に次ぐ第3位につけている。
新エネルギー財団の太陽光発電に関する本提言は、国内の再エネの中で「主力」である太陽光に相応しく今回の各分野の提案中最多のボリュームを持つ。ページ数にして76ページに及び、前半の提言本体に加えて後半では参考資料として、太陽光や再エネにまつわる政策の流れを提言に沿う形で丁寧に追っている。
新エネルギー財団の太陽光発電に関する提言は、大きく3つの章が立てられた。①「太陽光発電の主力電源化に向けて」、②「電力システム改革と太陽光発電」、③「住宅用太陽光発電の健全な普及」の3つであり、タイトルから明らかなように2020年度末までに実施が予定されているFIT制度抜本見直しと、今年から議論が開始することが予想されている新たなエネルギー基本計画(第6次)が大きく念頭に置かれた提言となっている。
提言①「太陽光発電の主力電源化に向けて」では、再エネの主力電源化に向けて議論されたFIT制度の抜本見直しにまつわる各種の提言を行っている。抜本見直しでは市場統合を図る「競争電源」に分類された大規模太陽光は、FIT制度に代わる新たな制度、FIP(Feed-in Premium)に移行することが有力視されている。

そこでは発電事業者が市場に自らアクセスして売電を行うことになるが、その際に事業者が電力市場に連動してリスクを取れるよう、国による制度環境整備と、FIP導入に向けた一定の試用期間など、十分な準備期間を要望している。
また再エネ電力の市場取引については、十分流動性の高い、国内の時間前市場やバランシング市場の整備が重要としている。そして小規模分散電源を束ねるアグリゲーターの介在が効率的・効果的な市場取引に必要不可欠とも指摘。バランシンググループとして市場取引に参入できるような仕組みづくりへの支援を提言している。
FIT制度における再エネのインバランス特例の見直しに関連する提言として、「インバランスリスクを低減するためには、時間前市場での取引が不可欠となり、予測精度を向上し、予測調整対象を広域化するなどの方策も必要」と指摘した。再エネの発電予測精度を向上させるために、予測情報の公開も提言している。
FIP制度導入に関しては再エネ・太陽光の持つ環境価値にも提言がなされた。将来的には再エネ事業者自身が相対取引や入札によって環境価値を販売できる方向を目指し、そのためのツールとしてP2P(Peer to Peer)取引などの活用も積極的に取り組んでいくべきとしている。
競争電源と対を成す「地域活用電源」に関しても言及されている。太陽光では小規模案件が地域活用電源になるが、小規模事業用における第三者所有モデル(TPO:Third Party Ownership)は「今後普及拡大が期待できる」として、「導入検討にともなう需要家の理解を深めるためのツールの開発や、税制・金融面での組合せによるインセンティブが発揮できる仕組みが必要」と提言されている。またプロシューマーの重要性も強調されている。
発電-市場-系統の融合的発展の可能性
太陽光の社会的受容に鑑みて、地域共生と安心・安全対策に関しても言及された。電気事業法のもとでこの4月から義務化された太陽光発電の環境アセスメントや、小規模再エネ発電も新たに対象に加えられた事故報告・報告徴収などを着実に推進し、太陽光や再エネを「市場で着実に定着させていくことが必要」と指摘する。そして同じ再エネ主力電源化と社会的受容性向上の大枠の中で議論され、2022年7月までに施行されることが決まっているパネルなどの太陽光発電設備の廃棄費用積立て制度に関しても、本制度の適用外であるFIT認定案件も含めて廃棄物処理法などに基づく「適正かつ確実な廃棄等の実施を促すこと」、今後の「大量廃棄時代を見据えたリユースリサイクルの推進よる廃棄等の最小限化」などを引き続き検討していくべきと指摘した。
地域活用電源に関する提言では、「小規模営農型については自家消費負荷がないため、農業委員会等の許可など農業政策と整合する要件のもとで、従来のFIT全量売電制度の適用が好ましい」、地域一体型としての「太陽光発電の潜在賦存量が豊かな農業分野は、農業政策と整合を取りつつ、農業振興をバックアップする形での普及も視野に入れるべきである」など、農業との関係の重要性が複数箇所で言及されていることにも注目される。小規模太陽光の地域共生において、地域産業の代表格である農業と融合するソーラーシェアリングが果たす役割は大きいと言えそうだ。

提言②「電力システム改革と太陽光発電」ではまず、提言①でも触れられた新しい電力市場についての提言から始まる。非化石価値市場、需給調整市場、容量市場などあらたな電力市場が立ち上がり、また今後立ち上がる予定になっているが、電力需給と一体化した形でFIP制度によってこれらの市場の中に再エネが組み込まれていくためには、「十分に制度間の連関性、整合性をもった制度設計が必要であり、再エネ導入による、異なる電力市場取引間での相互影響も視野にいれた市場制度設計への配慮を行うことを要望」している。
電源からの要請に都度対応していたこれまでの「プル型」と異なり、電源のポテンシャルを考慮して計画的に対応する「プッシュ型」に転換するとの方針が経済産業省から示された系統形成については、「再生可能エネルギー推進を加速する目的での地域間連系線ならびに、関連する地内送配電網の整備も併せて負担する投資については、全国負担とするも、再エネ導入促進による便益を定量的に算定し、範囲を決めて導入を推進すべきである」と提言。また経産省の審議会でも大きな議論になった、再エネ発電側課金(基本料金)の導入については、「FIT電源については、すでに買取価格が固定されていることから、発電側基本料金による追加コストを転嫁することが制度上困難」と指摘。「稼働率の低い、太陽光発電や、風力発電については、全電源平均価格では十分に充当されず、事業性を大きく損なう」として、FIT電源については、稼働率に応じた追加調整措置を要望する」としている。
事業者への情報周知が必要
北米や欧州のRE100加盟企業が多く採用している、再エネ電力の直接調達方法であるコーポレートPPA(Power Purchase Agreement)に関しては、「需要家の再生可能エネルギーの直接投資になるだけではなく、再生エネコスト削減のインセンティブになる可能性も期待できる」と評価している。一方で日本国内では、電事法により需要家が発電事業者から直接電力を調達することが認められていない点を指摘。今後は「電力市場取引で、発電側ならびに需要側の計画同時同量のインバランス需給調整機能の役割を提供するサービス会社などの参入なども視野にいれる」などの制度設計を行うことで、オフサイト型PPAの拡大を後押しする可能性を指摘している。
さらに、今後自家消費の拡大に伴う電力の需給実態の把握に関する指摘も行っている。現状では再エネ自家消費を行う設備や発電データの把握を一元的に追跡するシステムが構築されていない。そこで、これからは「再エネ自家消費設備や非FIT電源の統計データを公的な手段で取得し、変化する電力需給に活用していくことが望まれる」と問題提起している。
2019年11月からFIT期限切れの案件、いわゆる卒FIT案件が発生しており、転機を迎える住宅用太陽光に関する提言は③にまとめられている。
住宅用は「2012年6月迄の特例太陽光、2012年7月からのFIT法、2017年4月からの改訂FIT法で運用に違いがあり、また遡及対策も実施されているため、ユーザーにとって分かり難い状況」と指摘。「今回のFIT法改正に合わせ住宅用太陽光発電ユーザーにもFIT法の主旨が簡単に理解できるような運用及び周知徹底を期待する」と、周知・アナウンスの重要性を強調している。
2019年11月に始まった卒FITユーザーは2021年6月までは特例太陽光のカテゴリーに属することになる。そして「このユーザーは電力会社の自主的買取から自動的に固定価格買取に切り替わっているためFIT法に関する詳細な説明を受けていない」という。

それにも関わらず、運転終了時の廃止届、定期点検、事故発生時の報告の要否など、「設置者の義務(推奨含む)に関しては明確な情報が無い」。「特例太陽光ユーザーの義務、推奨する対応をHP等で明確に説明することがFIT法の適正な運用につながると考える」と提案している。
制度変更に関するユーザーへの情報周知の重要性は、2021年度以降にFIT制度抜本見直しおよび新FIT法が施行された場合でも強調されている。
太陽光発電という分散型エネルギーが持つ、災害時レジリエンス強化に関しても提言されている。近年、過去最大級の自然災害による大規模停電が頻発している。系統電力が寸断されるで、分散型電源による対応の有効性がクローズアップされている。特に太陽光と蓄電池を組み合わせたシステムでは昼夜を通して電力供給が行われた事例が報告されており、相乗効果の大きさが示された格好だ。
しかし「過去、蓄電システムに関する助成制度に関しては、太陽光発電との併用によるレジリエンス効果が十分に評価されておらず、蓄電機器の普及・拡大が主目的であった」と指摘。「太陽光発電から蓄電システムへ充電に関しては、発電量の日々の変動に関して、天候予測のような高度マネージメントが要求される。このような先進性を有するような技術・機器に対する支援策を期待する」と提言している。

