IEA「新型肺炎禍でも再エネ伸長」報告の衝撃≪2020年見込み≫一次エネ全体の需要6%減少・再エネだけは1%増加
- 2020/6/8
- 政策
- 新エネルギー新聞2020年(令和2年)06月08日付

疾病・災害レジリエンスと経済を両立させるエネルギーの社会システム構築必要
「一次エネルギー全体の消費が落ち込む中で、再エネ電力の消費・生産だけが伸びている」。…新型肺炎感染症の落とす暗い影が世界の社会・経済を覆う渦中に、IEA(国際エネルギー機関)が発表した2020年のエネルギー展望レポートのこの分析には驚きが拡がった。「新型肺炎は世界の在りようを変える」と言われているが、分散型電源の導入という形で既に進行していたエネルギー転換とのこの「変化のシンクロナイズ」は、今後どのような意味を持つのだろうか。
今般発表されたIEAの2020年エネルギー展望レポート(『Global Energy Review 2020』)の副題は「Covid-19(新型肺炎ウィルス)危機がグローバルなエネルギー需要とCO2排出に及ぼすインパクト」。新型肺炎はエネルギー分野にも甚大な影響を与えていることを示唆する。
レポートによると、2020年第1四半期のグローバルな一次エネルギー需要は、2019年第1四半期比で3.8%減少した。減少の主たる要因はもちろん新型肺炎だ。そしてロックダウンなど新型肺炎への対応による不景気からの回復が遅滞すれば、需要の落ち込みは2020年の年換算で6%に達すると試算した。この減少幅は、第二次大戦以降の約70年間で最大になる。
電源別に見ると、石油・石炭・LNG・原子力の順で減少幅が大きい。石油火力発電は、全体の需要減に加えて物流ストップの影響を最も大きく受けると分析されている。
石炭火力発電の2020年の落ち込みは約8%とされる。石炭火発は全世界・全セクターで依存度が漸減しているが、その中でも前年比約8%の減少は第二次大戦後最大になる。そして石炭の見通しで特徴的なのは、全ての燃料の中で最も不確実性(uncertainty)が高いとされていることだ。その理由は、石炭は電力に用途が集中していて需要が電力需要レベル(特に中国とインド)に強く依存するため、および石炭火発の利用が新型肺炎の影響をあまり受けなかった再エネなどに需要が圧迫されている(squeezed)ためだ。そこから、石炭の不確実性が最も高い、つまりさらに需要が下振れする可能性が示唆される。
火力・原子力が落ち込む中で、2020年第1四半期の消費が前年同期比で1.5%増加した再エネは対照的だ。そもそも再エネ電力は、運用コストの低さで市場に選択されることと、法令により優先給電されることの両面が相まって需要の低さに影響を受けづらくなっているとも分析されている。
2020年第1四半期の再エネの発電量は前年同期比で3%増加し、全電源の発電量中で28%に迫る水準になった。再エネの中でも太陽光と風力の発電量は、新たに稼働した太陽光発電100GWと風力発電90GWからの電力が牽引し、前年同期の8%から9%に増加している。但しバイオマスに関しては、石油火発と同じように燃料の物流の問題が持ち上がりこの期の発電量は減少している。
これらから判断してIEAは、2020年の再エネの需要は2019年と比較して約1%増加すると試算した。また再エネの年間の発電量も増加を見込み、その上げ幅は約5㌫としている。全電源の需要が6%下落すると見られる中で、唯一の増加だ。
新型肺炎禍での再エネ伸長を述べるIEAのレポートを総括すると、今般の事態は緊急時に「再エネが選ばれた」というよりも、「既にそこにあった再エネの対応力・強靭性(resilience)が発揮された」色彩が強い。再エネの需要・供給とも2020年は増加する見込みだが、さらにその先の新規案件の動向はまだ見えない。IEAも述べるように新型肺炎禍がもたらしたサプライチェーンの混乱と労働力不足により2020年の再エネ電力設備導入量は低レベルに留まる可能性がある。
それでもこのレジリエンスは再エネの重要な付加価値であり、社会・経済がこの付加価値を評価したことには大きな意味がある。
現在、新型肺炎禍による経済活動の停滞によって産業由来のCO2排出が抑制されている。IEAによると2020年の世界のCO2排出量は30.6ギガトンになると見積もられており、前年比で約8%の減少となる。この減少量は第二次大戦後の対前年比削減量の総計の2倍に該当するという。地球温暖化に対応する意味では望ましいが、今後経済活動が再開されて排出量が元の木阿弥になってしまっては意味がない。GHG排出削減と経済、さらには疾病・気候災害へのレジリエンスなどを利益相反させず、むしろサイクルさせるために新たな社会システムが求められている。そしてそのシステム構築の核心の一つには再エネがある。再エネ・分散型エネルギーの役割は「ポスト新型肺炎」にこそ重要になる。

