新エネルギー財団「導入促進に向けた提言」まとまる⑤バイオマス

国産バイオマス強化で持続可能な地域と産業の実現に貢献を

◆地域エネルギー委員会:委員長=芋生憲司・東京大学大学院教授

(一財)新エネルギー財団が発表した、令和元年度(2019年度)の再エネ・分散型電源に関する「新エネルギーの導入に関する提言」。提言は、産学で構成される財団内の新エネルギー産業会議(議長:牛山泉・足利大学理事長)で取りまとめられた。既に経済産業省資源エネルギー庁に提出されている。

産業会議には分野ごとに委員会が設けられており、提言もそれぞれの委員会別にまとめられている。紙面ではそのポイントを紹介してきた。前回までの風力・太陽光・廃棄物発電に続き、今回は今回は「バイオマス・地熱・水力」の提言を考える。

[画像・上:国内における木材供給量と木材自給率の推移(資料:林野庁)]

事業体の合理化も提言

本提言の分野が対象としているのは木質バイオマスと、排水処理汚泥や畜糞などの湿潤系バイオマスで、今回は3つの提言を行った。

最初の提言①「国内林業・木材産業の生産性向上と投資環境改善に向けた提言」では、木質バイオマスの導入拡大のために必要となる関連産業の環境整備が提言されている。そのための要点となるのはインフラ特に林道の整備による生産性向上と、ファイナンス面における不確実性の縮減だ。

日本国内には大規模な森林ポテンシャルや木材市場があるにも関わらず、木材需要の大半を海外からの輸入で賄っている。国産材の供給が限定的である要因の一つとして、本提言は林道インフラの整備不足を指摘。林野庁は現状で19万kmほどである国内の林道の総延長距離を2025年までに24万km、そして最終的には33万kmまで増やす目標を立てているが、ここ10年の林道、特に大型の作業車両が走行可能な林道の新規整備は殆ど行われていない。

そこで、「民間の林業事業体の経営コスト及び初期投資リスクを最小限に抑え」るために、「国主導による林道整備事業の強化」を提言している。

また、零細企業を含む中小規模工場が大宗を占める国内の林業・製材業の産業形態も国内木材の供給にネガティブな影響を与えている要因と指摘されている。これにより、国内の木材エンドユーザー(チップを含む)が供給能力を理由に海外材を選択するケースや、価格交渉力で不利になるケースもあるからだ。林業では従事者の高齢化や人員減少が既に著しく進んでいることも踏まえ、持続的な産業競争力保持のために補助金や税制優遇などにより合併を促進し、林業・製材業の事業体の集約化を進めることを提言している。

再エネ熱導入促進のインセンティブが必要

林業のファイナンスの安定化については、新設された森林環境贈与税(森林整備などを目的に国民から徴収する国税で、国に納付された後に自治体に配分される)の活用に加えて国主導で林業投資に係るファンドを設立し継続的な長期投資を行うと共に、「地方公共団体を跨いで活動する民間企業や金融機関のESG投資のリスクを担保する仕組みの構築」を提言した。

バイオマスの利用状況(資料:農水省)

次の提言②「木材およびバイオマス需要の創出に向けた提言」では、提言①と同じく国内の林業・木材産業の持続可能な成長のために必要なこととして、国産材の活用やバイオマスエネルギー利用を促進するための仕組みの構築を指摘している。その柱は、建築資材としての国内材(製材)の利用促進と、電気に加えて熱の製造・利活用における国産バイオマスの利用促進の2本だ。

国産材(製材)の利用促進では、非住宅部門を対象にしたCLT(Cross-Laminated-Timber:直交集成板)の利用や生産にインセンティブを付与する仕組みづくりを提案している。CLTは挽き板を並べた層を重なるように板を貼り合わせた製材。高層建築物でも利用可能な強度の高さ・変形のしにくさを持つ。国内でも一部の自治体で導入が進んだことから技術的・低コスト生産の競争力が存在するとされている。提言では自治体レベルの取り組みにとどまらず、地域性にとらわれずに全国的な国産材CLTの普及を促すべきとしている。

熱分野におけるバイオマス活用促進の提言では、「長期エネルギー需給見通しにおいても2030年時点でバイオマスは667万kℓ相当の熱利用を目指すことが掲げられているが、熱利用のインセンティブは発電に比べて小さくバイオマス熱が利用されている部門は限定的」と言及。バイオマス熱・再エネ熱の取り組みで先行する欧州、特に英国のRHI(Renewable Heat Incentive)のような再エネ熱の利用に関するインセンティブを導入することを提言している。

厳しさ増す都市型バイオマス

湿潤系バイオマスに関する提言として表明されたのが、提言③「バイオガス利用の加速化に向けた提言」だ。現時点で食品廃棄物では約29%、下水汚泥では約68%にとどまるとされている湿潤系バイオマスの利用率を引き上げることが提言の焦点だ。

その中の柱の一本目である「食品廃棄物系バイオマスのメタン発酵残渣の肥料利用を促進」では、成功事例の分析からメタン発酵の工程における原料(食品廃棄物)の不純物の少なさが事業性の可否のカギとなることを指摘。原料の純度を引き上げるべく、学校・自治体でゴミ分別に関する教育を行うこと、発酵不適物が少ない生ゴミの処理費用を安くするなどのインセンティブ制度を導入することを提案している。また不純物除去のために現状行われている人力による除去作業を、光学センサなどを用いて自動化・機械化する促進策と技術開発も提案した。
人工減少と連動して長期的に緩やかな減少傾向にあること、後継者の確保の難しさから民間の廃棄物焼却施設が近年減少傾向にあること、自治体が所有する処理施設が更新時期を迎えておりインフラ維持が難しくなりつつあることなど、湿潤系バイオマスを取り巻く環境は厳しさを増している。そこから今後、廃棄物処理施設・清掃工場・下水処理場などの統廃合が進むとの見通しも本提言は示している。

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本提言の全文(各分野)は以下の新エネルギー財団のWebサイトからダウンロードすることができる。https://www.nef.or.jp/introduction/teigen/te_r01.html

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新エネルギー財団は令和2年度「新エネルギー大賞」の募集を開始した。今回は「商品・サービス部門」・「導入活動部門(普及啓発活動を含む)」に加えて「分散型新エネルギー先進モデル部門」と「地域共生部門」が新設された。
募集は2020年7月31日(金)まで。詳細は以下HPを参照。
https://www.nef.or.jp/award/boshu/boshu_r02.html

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