熱利用水素製造の主反応を省エネ化【量研/芝浦工業大学/原子力機構】効率40%の水素製造に見通し
- 2020/6/11
- 水素
- 新エネルギー新聞2020年(令和2年)06月08日付

量子科学技術研究開発機構(量研)高崎量子応用研究所(群馬県高崎市)、芝浦工業大学、日本原子力研究開発機構(原子力機構)の研究グループはさきごろ、熱利用水素製造の主反応の大幅な省エネ化(従来比7割減)に成功したと発表した。
[画像・上:ISプロセスの概要(提供:量子科学技術研究開発機構)]
水素の大規模・安定的な製造法の一つに、ヨウ素(I)と硫黄(S)の化合物で水を熱分解する「ISプロセス」がある。研究グループは、熱を利用した水分解である熱利用水素製造のうち、水の直接熱分解温度(約4,000度C)よりも低温で水を熱分解して水素を製造する手法「熱化学水素製造ISプロセス」を用いた。
同手法の主反応であるブンゼン反応(水、二酸化硫黄、ヨウ素から電極での酸化還元を通じて硫酸とヨウ化水素を生成する反応)の過電圧を従来法から7割近くも低減。この成果により、太陽熱で駆動するISプロセスの水素製造効率を40%にまで向上できる見通しを得たという。
反応過電圧の約7割が陽イオン交換膜の抵抗による過電圧なので、膜の低抵抗化が課題となる。これに対し量研は、量子ビームグラフト・架橋技術を用い、従来膜のイオン交換容量を約2倍にして膜抵抗を半減しつつ、膜の機械強度低下を防ぐためグラフト鎖の架橋密度を2倍に高めることで新たな低抵抗陽イオン交換膜を開発した。
芝浦工大は、反応過電圧の残り3割を占める陽極反応(硫酸生成反応)による過電圧を低減するため、多孔質化した金陽極を開発した。また、原子力機構は、膜抵抗や陽極反応活性の温度依存性から、ブンゼン反応の最適温度が50度Cであることを見出した。
研究グループは今後、実用化を目指し、プロジェクトで確立した各要素技術を統合して、ベンチ規模の水素製造試験を実施する予定。太陽熱駆動ISプロセスの技術を確立できれば、大量の水素を製造して燃料電池車や家庭用燃料電池に供給することが可能になる。

