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「VPP構築実証事業」最終年度の採択実施【経産省/SII】需給調整市場へ実装前提にさらに高度化・精緻化
- 2020/6/18
- エネルギーマネジメント
- 新エネルギー新聞2020年(令和2年)06月08日付
5月、経済産業省のVPP(バーチャルパワープラント)構築実証事業の令和2年度(2020年度)の採択が、事業予算の執行団体である(一社)環境共創イニシアチブ(SII)により行われた。
[画像・上:2020年度VPP構築実証事業のイメージ(資料:経産省)]
工場や家庭などにある蓄電池・自家発電設備・電気自動車(EV)を始めとする電動車(xEV)などの分散型エネルギーを、高度なエネルギーマネジメント技術により遠隔・統合制御し、あたかも一つの発電所(仮想発電所=バーチャルパワープラント)のように機能させることで、電力の需給調整に活用する技術、VPP。平成28年度(2016年度)から実施されている本VPP構築実証事業は、事業全体で50MW以上の電動車や蓄電池を含むエネルギーリソースをVPPとして制御する技術の確立を目指し、再エネの導入拡大や更なる省エネ・電力の負荷平準化を推進する。
予定だとVPP構築実証事業は今年度が最終年度となる。この5カ年度の間に実証はますます高度化・精緻化されている。アグリゲーターがデマンドレスポンス(DR)指令を発報しこれに分散型エネルギーリソースが実際に対応するまでの時間である応答時間ひとつを取って見ても、事業開始当初は数時間スケールだったが現在は数秒スケールにまでなっている。
今年度の実証では、電力システム改革で誕生する電力の新市場、特に2021年度以降に開始される需給調整市場の参入要件・技術要件を踏まえて制御技術・システムの構築を目指す。これによりVPPアグリゲーターの参画を実現し、ひいては容量市場や卸電力市場など他の電力市場でのビジネス展開を図る。
また、「EV充放電器や家庭用電量電池『エネファーム』を中心に統合制御を行うエネルギーリソースの種類拡大」や「電力システムに接続するためのサイバーセキュリティ対策」、「周波数調整などのより高度な統合制御技術の確立」も行う予定だ。
VPP構築実証事業はA・B・Cのタイプ分けがされており、今回採択されたのはA事業とB事業だ。A事業は「VPP基盤整備事業」で、VPPアグリゲーターの実証を支援し事業課題などの調査・分析・必要なシステム開発を行う。早稲田大学と、東京電力パワーグリッドおよび関西電力送配電が採択された。B事業は正に「VPPアグリゲーション事業」で、DR指令を受けてVPP実証を行う中で、VPP構築に向けた技術実証、制度的課題の洗い出し、またはxEVを活用したV2G(Vehicle to Grid)実証を行う中でV2G構築に向けた技術実証、制度的課題の抽出を行う。関西電力・東京電力ホールディングス・SBエナジー・ローソン・アズビル・エナリス・中部電力ミライズ・九州電力・豊田通商・東北電力を幹事会社としてのべ71社が事業参画企業として交付が決定された(採択されたのはのべ107社)。
さらに、VPPそのものの実証に加えて、ダイナミックプライシング(DP)によるxEVの充電シフトに関する実証も今年度から本事業の枠組みで実施する。小売電気事業者が卸売電力市場に連動した時間別料金(ダイナミックプライシング)を設定し、EVユーザーの価格シフトを誘導。ひいては系統のピークシフトを実現して効率的な電力ステム構築を目指す実証だ。
DP実証は令和4年度(2022年度)まで3年間実施予定で、本年度は三菱自動車、JXTGエネルギー、日産自動車などが採択されている。
【令和2年度「需要家側エネルギーリソースを活用したバーチャルパワープラント構築実証事業費補助金」採択結果】
[A事業:VPP基盤整備事業]
①早稲田大学
②東京電力パワーグリッド/関西電力送配電
[B事業:VPPアグリゲーター事業]
*各項冒頭は幹事会社、以下は次の通り:<AC>アグリゲーションコーディネーター/<RA>リソースアグリゲーター/<実証協力>実証協力事業者
①関西電力
<AC>関西電力
<RA>関西電力/JXTGエネルギー/住友電気工業/ダイヘン/横河ソリューションサービス/イオンディライト/NTTスマイルエナジー/エネゲート/京セラ/きんでん/四国電力/シャープ/パナソニック/日立製作所/フクシマガリレイ/北陸電力/三菱商事/Looop
<実証協力>関西電力/関西電力送配電/出光興産/三社電機製作所/デルタ電子/ニチコン/日本ベネックス/日本ユニシス/富士電機/YAMABISHI/エリーパワー/JXTGエネルギー/住友電気工業/ダイヘン/横河ソリューションサービス
②東京電力ホールディングス
<AC>東京電力ホールディングス/Goal Connect/日本電気
<RA>日本電気/積水化学工業/東京電力エナジーパートナー/エネ・ビジョン/エフィシエント/MULユーティリティーイノベーション/エリーパワー/大崎電気工業/関電工/京セラ/グローバルエンジニアリング/サニックス/静岡ガス/竹中工務店/東京ガス/東洋エンジニアリング/日本工営/日立システムズパワーサービス/ファミリーネット・ジャパン/八千代エンジニヤリング/ONEエネルギー
<実証協力>東京電力パワーグリッド/東光高岳/一般財団法人日本気象協会/三菱自動車工業/日立システムズパワーサービス
③SBエナジー
<AC>SBエナジー
<RA>SBエナジー/SBパワー/エネマン/エフィシエント/サニックス/ダイレクトパワー/ハンファQセルズジャパン
④ローソン
<AC>ローソン
<RA>ローソン
<実証協力>慶應義塾大学SFC研究所/北陸電力
⑤アズビル
<AC>アズビル
<RA>アズビル/日本工営
<実証協力>JXTGエネルギー/東京電力エナジーパートナー
⑥エナリス
<AC>エナリス/KDDI
<RA>エナリス/MULユーティリティーイノベーション/京セラ/グリムスソーラー/西部ガス/Sassor/JXTGエネルギー/スマートテック/中国電力/東邦ガス/ナンワエナジー
⑦中部電力ミライズ
<AC>中部電力ミライズ
<RA>中部電力ミライズ/エフィシエント/大阪瓦斯/中部電力/トヨタエナジーソリューションズ/明電舎
<実証協力>京都大学
⑧九州電力
<AC>九州電力
<RA>九州電力/エフィシエント/九電テクノシステムズ/サニックス/自然電力/ニシム電子工業/日本電気/日本ユニシス
<実証協力>一般財団法人電力中央研究所/三菱電機
⑨豊田通商
<AC>豊田通商
<RA>豊田通商
<実証協力>中部電力パワーグリッド
⑩東北電力
<AC>東北電力
<RA>東北電力/エフィシエント
【令和2年度「需要家側エネルギーリソースを活用したバーチャルパワープラント構築実証事業費補助金(ダイナミックプライシングによる電動車の充電シフト実証事業)」採択結果】
①アークエルテクノロジーズ
②MCリテールエナジー/三菱自動車
③JXTGエネルギー/日産自動車
④ダイレクトパワー