新エネルギー財団「導入促進に向けた提言」まとまる⑥地熱

低コストかつ地域との共生ができる地熱の可能性追求が不可欠に

(一財)新エネルギー財団が発表した、令和元年度(2019年度)の再エネ・分散型電源に関する「新エネルギーの導入に関する提言」。提言は、産学で構成される財団内の新エネルギー産業会議(議長:牛山泉・足利大学理事長)で取りまとめられた。既に経済産業省資源エネルギー庁に提出されている。

産業会議には分野ごとに委員会が設けられており、提言もそれぞれの委員会別にまとめられている。今回はその中から地熱発電の提言を考える。

雨水や河川水が2,000m以深の地中深くまで浸透した地下水の一部は、マグマで熱せられて難透水層の下に150度C以上の高温高圧の蒸気や熱水の地熱貯留層を作る。この層から噴出する蒸気・熱水を活用して発電するのが地熱発電だ。

[画像・上:地熱発電の仕組み(資料:経産省)]

地熱発電は発電した後の熱水は地熱貯留層に戻すことで半永久的に発電が可能。また、同じ再エネでも天候により出力の変動がある太陽光や風力と異なり、基本的に出力が一定であるためにベースロード電源としての活用が期待できることも大きな強みになる。さらに発電コストが他の再エネと比較して安く、設備利用率も80%ほどの高い水準を維持できる。発電後の熱水は農業におけるハウス栽培や漁業における養殖業の熱源として活用することでエネルギーのカスケード(多段階)利用を実現することもできる。

そして火山国である日本は、(独法)石油天然ガス・金属鉱物資源機構(JOGMEC)の調査によると、米国の3,900万kW、インドネシアの2,700万kWに次ぐ世界第3位となる、2,300万kWもの地熱資源量を持つと言われている。

そんなメリットの多い地熱発電だが、日本国内で現状導入されているのはFIT制度開始前・開始後の導入を合わせても約58万kWにとどまっている。経済産業省の長期エネルギー需給見通しにおいて地熱は140万~155万kWほどの導入が見込まれており、運開前の認定案件合計約10万kWを合算するとあと約90万kWほどを2050年までに新規に導入することが求められている。そして本提言における①のタイトルがまさに「新規地熱開発への支援」となっている。

地熱の開発については、再エネの中でリードタイムが長い電源であるということをまずは理解しておく必要がある。地表や地下の構造調査から始まり発電所運開に漕ぎ着けるまでに最低でも10年ほどはかかってしまうと言われているのだ。

こうした地熱発電事業特有のリスクに対応し、長期の事業予見性を担保するのがFIT制度なのだが、FIT制度は抜本見直しと新制度導入が議論されている。実際の抜本見直しの中で地熱がどのように扱われるかはまだ未確定だが、今後、「地熱事業を引き続き促進するため、新制度へ移行する場合でも、事業者が現行のFIT制度と同様に予見性を確保できるような価格および長期にわたる交付期間が設定されていることを要望する」としている。

地熱に関する地下資源開発は、JOGMECや新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)の事業として各種が実施されているが、提言ではこれらの開発事業の継続を求めている。また、NEDO事業として実施されている次世代地熱発電である超臨界地熱発電開発(既存の地熱貯留層より深い3,000~5,000mに賦存する374度C以上・22MPa以上の高温高圧な超臨界水を活用した地熱発電技術)については「ベースロードの一角を担う存在となる発電技術」と評価した上で、「技術開発が、今後更に推進されることを期待する」と述べられている。

地熱開発の実務を反映した提案として、「保安林内作業許可(森林法)の緩和」にも注目が集まる。地熱調査および開発における坑井掘削調査では森林の一部を伐採して掘削基地を造成するケースが多く、それが保安林内であれば許可を受ける必要がある。そしてその際の許可期間は原則として2年以内とされているが、坑井掘削調査で3~5年、それに続く調査で1~2年を経て初めて資源量が確認される地熱発電事業においては2年間の許可期間では通常だと作業が終わらない計算になる。そこで、「地方自治体の合意」を条件としてこの規制の緩和・柔軟な運用を求めている。

引き続き提言②では「既設地熱発電所への支援」に言及している。既設地熱発電所におけるリパワリングなどによる発電容量アップの実現は、新規開発と比較して当然ながらその容量分を導入するにあたって必要な時間及びコストを大幅に削減することが可能だ。

そこで既設地熱発電に関して、以下のような提言を行っている。

まず(1)「利用率向上に資する掘削への補助制度創設」では、既設地熱発電所における資源リスクを低減し設備利用率の向上に資する、補充井掘削に対する補助制度の創設を提言している。次に(2)「FIT制度見直しにおけるリプレース調達区分の維持」では、FIT制度見直しにおいてリプレース調達区分を維持することを提言している。(3)「既設地熱発電所開発地域内および周辺調査への助成金適用拡大」では、既設地熱発電所における開発地域内および周辺地域の地熱資源の有効活用に資する「地熱発電の資源量調査事業費助成金交付事業」の既設地熱発電所への対象範囲拡大を提言。最後に(4)「新規地熱技術の導入促進に資する補助制度の創設」では、JOGMECやNEDOで開発された新規地熱技術の導入促進に資する補助制度の創設を提言している。

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