【特集「自治体向け再エネソリューション・2021年版」】特別寄稿・ISEP山下紀明氏「自治体の再エネ政策は必須に」

政府は2050年カーボンニュートラルの実現に向け、「地域脱炭素ロードマップ」の骨子案をまとめた。体制構築支援・見える化・制度改革などの重点対策を実施、2030年までに脱炭素を達成する先行地域を100カ所以上創出する。地域の特色を生かした脱炭素化を確立し、先行地域から全国・海外への伝播を狙う。

本特集では脱炭素化の中核となる自治体のエネルギー政策について、認定NPO法人環境エネルギー政策研究所(ISEP)の山下紀明氏に、自治体が再エネ導入を推進するポイントを解説していただくと共に、自治体のエネルギー政策に活用できる再エネソリューションを紹介する。

[画像・上:常時再エネ電力運営の福知山城(提供:福知山市)]

街づくりに電気・熱・交通を結びつけた自治体のエネルギー政策展開を

●2050年のゴールが明確に

菅首相による2050年カーボンニュートラル宣言により、国内のエネルギー・気候変動政策は大きな動きを見せています。自治体にとっても「2050年までの温室効果ガス排出実質ゼロ」は検討すべき項目から達成すべき条件に変わりました。さらに2030年に2013年比46%温室効果ガス削減という目標も示され、短期的にも大幅に取組みを進める必要があります。

●まち全体を結び付ける

その条件を達成するにあたり、地域にとっては再生可能エネルギーと省エネルギーが2本柱となります。両者はゼロエネルギーハウス(ZEH)を考えればわかるように、一体で取り組むべきものです。またZEHはエネルギーを自給するだけでなく、快適さや健康寿命の増進につながります。これからは個別の住宅やビルだけでなく、まち全体を対象として電気・熱・交通を結びつけたエネルギー政策が求められます。さらに高齢化や防災といった地域課題とも結びつけ、技術的解決策と社会的仕組みを組みあわせて対応していく必要があります。

●自治体再エネ政策の課題

ISEPや一橋大学による全国市区町村へのアンケート調査(2020年、回収率74.2%)によれば、地域での再生可能エネルギーの導入目標を定めている自治体は18%に過ぎず、目標の策定を検討している自治体も14%とまだ少数派です。また再エネの利用に関する課題として回答が多かった項目(複数回答)を見ると、ノウハウや経験の不足、景観や合意形成といった地域トラブルの懸念、資金調達に加え、「行政内部における再生可能エネルギー業務の優先度が低いこと」(19.9%)が第5位に入っています。2050年のゴールを考えれば、自治体として目標を持ち、全施策に気候変動・エネルギーの視点を組み込むことが理想ですが、現状はまだまだと言わざるを得ません。

●まずは再エネ電力調達から

地域の施策を進める上で、まず考えてみたいのが公共施設の再エネ100%電力調達です。自治体の新たな方向性を打ち出す事業となり、入札の工夫により追加費用なしで始められる場合もあります。

都道府県では東京都、大阪府、香川県、神奈川県、兵庫県がすでに行なっていて、市区町村では少なくとも15自治体が取り組んでいます。

福知山市では、従来からSDGsの考え方に基づく施策を行ってきました。その一環として、市庁舎や小中学校、町のシンボルである福知山城など40の公共施設で再エネ100%電力を地域新電力から調達しています。さらに、地域の建設業協会などと協定を結び、再エネや断熱促進の取組みも行なっています。地域に根ざした着実な取り組みを進めています。

●再エネ政策でまちを強く

自治体のエネルギー政策は、住民や事業者に我慢やコスト負担を強いるものではなく、利便性や新たなサービス、防災や地域経済効果をもたらす可能性を秘めています。そうした戦略を描くことが自治体の責務になっています。

筆者=認定NPO法人環境エネルギー政策研究所(ISEP)理事・主任研究員 山下紀明氏:1980年大阪生。京都大学大学院地球環境学舎(地球環境学修士)を卒業後、2005年からISEPにて自治体政策を担当。京都大学経済学部・武蔵野大学環境学部非常勤講師

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