≪特集「自治体向け再エネソリューション・2022年版」≫特別寄稿・ISEP山下紀明氏「再エネ政策でまちを強く」
- 2022/5/16
- 地域, 特集
- 新エネルギー新聞2022年(令和4年)05月16日付

2030年温室効果ガス(GHG)46%超削減(2013年度比)・2050年カーボンニュートラルの目標設定と平仄を合せる形で、この4月から施行された改正・地球温暖化対策推進法(温対法)。改正温対法ではGHG排出削減に向けた国の実行計画策定に加えて、地方自治体にも実行計画策定を定めた(中核市以上が義務、それ以外が努力義務)。排出削減のための再エネ関連事業が展開される促進区域の設定も可能になることから事業者からも注目を集めている。「環境と成長の好循環」が具体的に回りはじめようとしている今、好循環のツールとしての再エネと、好循環におけるハブとしての機能が期待される自治体が念頭に置くべきことは何か。地方行政・再エネ行政に詳しい環境エネルギー政策研究所(ISEP)の山下紀明氏が解き明かす。
地域インフラとしての付加価値を持つこれからの再エネの在り方
●脱炭素が法的に定められる
2021年5月成立の改正地球温暖化対策推進法と同年10月閣議決定の第6次エネルギー基本計画によって、「2050年までのカーボンニュートラル実現」は法的な裏付けを得ました。
さらに、地域脱炭素ロードマップや地球温暖化対策計画では、少なくとも100カ所の「脱炭素先行地域」を形成していくことが表明されました。2022年4月26日に第一弾となる26件が公表され、再エネを通じた地域作りのモデルとなることが期待されています。
●再エネは地域課題にも解決策にもなる
一方で、再エネ、なかでも太陽光発電事業に関係する地域トラブルがしばしば報道されています。再エネの開発を規制する条例の新設も相次いでおり、全国で170件以上が確認されています。こうした状況を受け、2022年4月から「再生可能エネルギー発電設備の適正な導入及び管理のあり方に関する検討会」が開かれていますので、自治体の役割や権限についての議論を注視しておく必要があります。
各自治体においても、地域にとって望ましい再エネ事業とはどのようなものか、脱炭素に加えてどのような地域課題の解決に役立つのかを関係者と議論し、政策的な誘導策を検討する必要があります。
以下ではまだ広く普及していないものの、多くの自治体で促進が可能な営農型太陽光発電と公共建築物のZEB化を紹介します。
●営農型太陽光を儲かる農業と
全国で再生困難な荒廃農地は19.2万haに上り、太陽光に換算すると100GWを超える大きな導入ポテンシャルがあります。
福島県二本松市で2021年9月に竣工した営農型太陽光発電事業は、地域主体による高収益農業との両立を目指す地域エネルギー事業の事例と言えます。6haの農地に生食用ブドウやエゴマを栽培しながら、高さ3mの架台に3,900kWの太陽光発電を設置して発電を行っています(図1)。CO2削減量は159トンと推計されています。こうした営農型太陽光発電と儲かる農業を農業者自らが行えば、農業の活性化が見込め、地域への経済効果も大きくなります。
[画像・上:図1=二本松市内の営農型太陽光発電]
●既存庁舎もZEBに

断熱性能と再生可能エネルギーを備えたゼロ・エネルギー・ハウス(ZEH)やゼロ・エネルギー・ビルディング(ZEB)を増やしていくことは気候変動問題やエネルギー代金の削減だけでなく、健康寿命の増進などからも重要です。行政でも、新しい公共建築物をZEBとして設計していくことが議論されているでしょう。さらに、既築庁舎などでもZEB化ができる場合もあります。岡山県備前市の株式会社備前グリーンエネルギーはZEBプランナーとして福岡県久留米市環境部の既存庁舎などのZEB改修(図2)を行いました。そのCO2削減効果は年間53トン以上と推計されています。
●再エネ政策でまちを強く
再エネは脱炭素のツールであると同時に、暮らしや産業を支えるインフラでもあります。自治体にとって、再エネ政策を使いこなして、地域を変えていく競争が始まっています。


