【年頭所感・2023年:学術・研究⑥】飯田 哲也(特定非営利活動法人 環境エネルギー政策研究所(ISEP)所長)「天と地の核融合」
- 2023/2/6
- 特集
- 新エネルギー新聞2023年(令和5年)01月09日付

暮れに核融合がにわかに注目を集めた。米研究所が初めて「投入を上回るエネルギーを発生」させることに成功したと発表したからだ。「地上の太陽」「科学的に大きな進展」「気候危機やエネルギー問題の解決可能性」などメディアがひとしきり賑わいを見せた。GX会議に核融合を含めていた岸田首相にも追い風に見える。
しかしこれは空騒ぎに過ぎない。第一に、核融合反応に用いたレーザーの消費エネルギーで見ると1%以下しか発生していない。第二に、今回の反応継続は数ナノ秒で、現状1日1回のレーザー照射が精一杯だ。これを何時間も何日も何年も継続できるとは到底考えられない。第三に、今回用いた「重水素とトリチウムの凍結金シリンダー」の燃料製造が極めて高コストで、大量生産や商業化はおよそ非現実的である。第四に、仮に大量にエネルギーを生み出せても、原発と同じ蒸気発電するしかなく、そのコスト低下は期待できない。
他方、近年コストが急落してきた太陽光発電と風力発電が、世界のほとんどの国や地域ですでに最も安いエネルギー源になっており、今後もコストが下がる見込みだ。これらは太陽エネルギー、つまり「天にある核融合」である。今後も技術学習効果によるコスト低下が見込め、資源量も人類の使っているエネルギー量の数千倍と膨大にあり、半永久的な持続可能なエネルギー源であり、放射能もCO2も出さない「真の持続可能なエネルギー源」である。
昨夏、太陽光発電と風力発電を中心に2050年までに世界全体を自然エネルギー100%にすることが可能かつ最も経済的で、気候危機1.5度C目標にも間に合うとの考えが科学者の本流になったとの報告もあった。
人類のエネルギー源はこの「天の核融合」であり、「地上の太陽」は無用であると科学技術史的にすでに決着が付いている。

