《【特集】300号記念イベント 講演抄録》ISEP・飯田哲也氏:脱炭素・人口減少の時代の街づくりで重要性高まるEVと充電インフラ整備
- 2025/10/27
- 特集
- 新エネルギー新聞2025年(令和7年)10月20日付

特定非営利法人環境エネルギー政策研究所(ISEP)
所長
飯田哲也氏
「地方自治体のEV普及戦略」
再エネ電力-交通分野の「結び目」としてのEV
EVの拡大は、再エネ・分散型エネルギーの社会実装拡大とセットの現象である…飯田哲也氏は講演の冒頭を、今回の話題の核心部分から切り出した。
飯田氏は太陽光発電・定置式蓄電池・EVを「三羽ガラス」と呼び、その一体的導入の拡大が世界にもたらしている「破壊的影響」に言及した。2024年までの10年間で、世界の太陽光の累積導入量は12.5倍(2,250GW)、同・蓄電池は100倍以上(240GWh)、同・EVは53倍(1,750万台)にまで増加し、それぞれの性能向上・学習効果によるコスト削減が実現する上に、3電源が組み合わされ、融合されて市場展開する中で相乗効果により導入が更に拡大し、そして規模の経済によりコストが低下する、という「ポジティブ・フィードバック」が発生している。
こうした「分散型電源の融合的導入・活用」を飯田氏が重視するのは、電源の融合の先に、異なる分野間の融合、つまり、「更に安価になっていく再エネ電力の、温熱・輸送・産業分野への展開」があるからだ。電力分野で進みつつある脱炭素化・再エネ化を、他分野に波及させる分野融合、「セクターカップリング」の中でEVが、再エネ電気―交通両分野の「結び目」の一つになる。
欧州・デンマークの地域熱供給における再エネ活用が著名だが、セクターカップリングを効率的に実現するためには、各分野が連動した設備・インフラの導入設置形態である必要がある。つまり今後の脱炭素・地域脱炭素の時代においては、都市設計・街づくりにおいてセクターカップリングを念頭に置いた構成が必要になる可能性がある。地域におけるエネルギーインフラ整備の「統括役」である自治体の、腕の見せ所だ。

中でも飯田氏は、今後、EV普及が及ぼす都市交通への影響の大きさを指摘している。特にEV充電形態の中でも、自宅や職場で行う基礎充電と、宿泊地や買い物先で行う目的地充電という、市民生活に密着した充電形態を重視し、また地域特性も勘案した上で、自治体が充電インフラを地域に計画的に整備していくことにより、従来だとどうしても「道路(自動車道路)拡大・拡張」のプライオリティーが高かった都市交通設計において、市民の快適な生活を確保しつつ、柔軟性と自由度を増加させる設計が可能になると飯田氏は考えている。
飯田氏は、2017年頃から導入が急増したEVの動向を「EVのiPhoneモーメント」と名付けている。エンジンやシャーシなど車両の機械面・ハード面を改良することで性能向上と市場拡大を目指してきた従来の自動車と異なり、EVは、まさにスマートフォンなどのようにソフト面・アプリケーションの「アップデート」だけ(ソフト・ドリブン)で使用可能な環境・利用可能な状況を拡大でき、それを武器に市場も拡大した。
EV「ChatGPTモーメント」が街づくりにもたらす可能性
そして今後のEVは、AI自動運転による「ChatGPTモーメント」に移行していくとも飯田氏は指摘する。この新世代EVに関して、人口減少により先細りが顕在化しつつある、地方の公共交通で採用することを飯田氏は提案している。公共交通のみならず、ガソリンスタンドなどの既存のエネルギーインフラまでもが地方では減少する中、電力、ましてや今後も導入の増加が予想されている再エネ・太陽光の電力で充電し、動力源にすることができるEVを「地方の住民の足」とすることには合理性がある。既に北海道厚沢部町や山梨県甲斐市など、国内各地で「公共ライドシェアEV」につながる取り組みが行われていることも飯田氏は指摘している。地域における計画的な充電設備の整備による市民の「充電の権利」と、ライドシェアなどにより移動弱者・交通弱者でも町中を移動できる「移動の権利」を確保する、住民視点でのEV普及と充電インフラ整備をするべきと飯田氏は強調する。
国・経済産業省は、交通部門の脱炭素化にもつながるとして、現状約3万口ある充電インフラを、2030年までに30万口にまで増やす目標を立てている。飯田氏は「国が全体の規模感としてこうした(大きな)数字を示すことは大事なこと」と同目標を評価しつつ、「それと同時に、プラグ&チャージ(EVに充電プラグを接続するだけで充電と決済を自動的に行うシステム)や従量課金の普及に向けた表明など、数値目標提示からもう一歩先の方針を示すこと、充電体験の質を向上させる方向を示すことで、国内の環境整備とEV導入増加につながるのでは」と提案した。

