農業用水を利用した「再エネ熱」ヒートポンプ空調技術開発中【農研機構/ジオシステム】施設園芸に加えて家屋やコンビニなどでの導入も視野に

(国研)農業・食品産業技術総合研究機構(農研機構)では、地中熱システムの開発・コンサルタントなどを行うジオシステム(東京都練馬区)と共に、農村地域にある農業用水路をヒートポンプの熱源として有効活用するためのシート状の熱交換器開発が進められている。

土木資材の取り扱いや測定計測を行う民間企業のジオシステム(大阪市西区)と共に、農村地域にある農業用水路をヒートポンプの熱源として有効活用するためのシート状の熱交換器開発が進められている。

[画像・上:シート状熱交換器は側壁に沿う形で設置。流入物・本体たわみ対策でエキスパンドメタルと一体化した(提供:農研機構)]

ヒートポンプは省エネ・省ランニングコストで稼働による排出CO2がゼロであるだけでなく、熱源として暖房だけでなく冷房や除湿も行うことができる。農業用ハウスなどの施設園芸に必要な熱源は、これまでは石油焚きのボイラが主流だった。一方で、施設周辺の外気(空気)や地下水、井戸水から熱交換する「再エネ熱」の技術である、ヒートポンプの導入も徐々に始まっている。

熱交換を効果的に行うことのできる流水がある農業用水は、ヒートポンプの熱源として優れていると言える。しかし農研機構によるとこれまで熱交換器を農業用水路内に設置した事例が無かったという。そこで農村工学研究部門(茨城県つくば市)の実験棟内に、幅1.6m-側壁高1.6m-長さ15mの農業用水の模型を構築し、流速条件や設置方法の違いによる熱交換特性を実験により明らかにした。

シート状熱交換器の構成。軽量・コンパクトに加えてコスト面にも配慮して構成されている(提供:農研機構)

熱交換器として用いたのはシート状の熱交換器(高さ0.9m-長さ5.6m)。従来の熱交換器より熱交換面積が大きく、軽量・コンパクト・安価という特性を持つ。農研機構はこのシート状熱交換器に関して、農業用水で運用する上で想定される、ゴミなどの流下物付着を低減するために水路壁側に沿って設置する方法なども含めて独自に開発を行っている。なおシート状熱交換器開発は、新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)の再エネ熱技術開発事業「地中熱流水熱利用型クローズドシステムの技術利用」の採択も受けている。

実験では、シート状熱交換器の水路内流速毎分10mの流水条件下(冷房運転時)における熱通過率(熱交換のしやすさ)は、1ケルビン平方mあたり0.255㌗であるとの結果を得た。これは静水条件下の同1ケルビン平方mあたり0.100㌗の約2.5倍、土中設置の同0.017の約15倍、従来型スリンキー式熱交換器(採放熱管をループ状=スリンキー状に配した熱交換器)土中設置の同1ケルビン平方mあたり0.01㌗の約25倍の高い性能が得られることが判明した。

加えて一般的な農業用水の流速条件である毎分24m以上で実験したところ、本シート状熱交換器は1ケルビン平方mあたり0.21kWの熱透過率を持つことが分かっている。

農業用水においてシート状熱交換器を用いたヒートポンプを設置することを前提にした実験のシステム構成(提供:農研機構)

シート状熱交換器は、ゴミなどの流下物保護および本体のたわみ防止のために、熱交換器をエキスパンドメタル(網目状の金属板)と一体化して施工した。熱交換器とエキスパンドメタルは結束バンドで一体化してある。また上流側にゴミ流入防止用の上流端遮断板も設置した。以上の構成は水路管理者に施工できる前提でシンプルな設定とされた。設置に要する施工費用は熱交換器単体の約3分の1程度に抑制されている。本熱交換を用いることによって、熱交換器設置のコストは地中に採熱用の穴を掘る方式と比べて約50%削減できるとされている。また、熱交換器を含めた熱利用システム全体の設置コストは約25%削減できる。

シート状熱交換器を用いた本ヒートポンプ技術は、農業施設以外にも農村地域に存在する戸建住宅、集合住宅、コンビニなどでの利用・応用も可能だ。国内で年間に利用される水資源総量約800億立方mのうち、約3分の2にあたる約544億立方mが農業用水として利用されており(国土交通省資料より)、農業用水の再エネ熱としての賦存量は大きい。農研機構のシート状熱交換器開発は今後、農業用水路設置で想定される水路内流況への影響、藻類や水草などへの対策、維持管理労力、耐久性など、実用化を念頭に置いた側面の検証も実施していく予定だ。

  • このエントリーをはてなブックマークに追加
Web版ログインページ
有料契約の方はこちらから
Web版ログインページ
機能限定版、試読の方は
こちらから

アーカイブ

カテゴリー

ページ上部へ戻る

プライバシーポリシー