≪欧州レポート≫再エネ義務化と脱原発 ~「新型肺炎」渦中でも進行するエネルギー転換
- 2020/6/12
- 国際
- 新エネルギー新聞2020年(令和2年)06月08日付

5月は再エネと脱原発に関して象徴的な出来事が2つあった。1つが、南のバーデン・ビュルテンベルク州(BW州)において22年以降の新築の非住宅建築に太陽光発電設置を義務付ける施策の導入が確定的となったこと、もう1つが昨年末停止したフィリップスブルク原発(カールスルーエ市)の冷却塔が爆破解体されたことである。
ハンブルクに続いて2州目の太陽光義務化
ドイツであっても、再エネ設備の義務化というのは法的に難しい措置である。今回BW州政府は22年より新築の非住宅建物に対して太陽光設備の設置義務化を決定した。南部は日射量が豊富であり、倉庫や工場、駐車場の屋根上の再エネポテンシャルは大きい。州政府は今後非住宅建物以外にも義務を拡張するつもりでいる。
[画像・上:開発中のCO2中立的な街区。屋根に太陽光、エネルギー供給センターにはP2G(パワートゥガス)設備が設置される(出典:©Stadtwerke Esslingen)]
BW州は2016年より中道保守のキリスト教民主同盟と左派の緑の党が政権を担っている。同じく緑の党の市長がいるチュービンゲン市などが以前より太陽光義務化を推進しているが、今後はそれを州全体に拡大することになる。
コロナ禍により、再エネ業界も深刻な影響を受けることが明らかになりつつある。これまでは強気な姿勢を見せていた太陽光業界も2020年のビジネス環境は大幅に悪化すると方向の修正を行っている。こうした中で、太陽光発電を強力に推進する政策が進められることは朗報と言えるだろう。20日には連邦政府も太陽光買取上限(再エネ法=EEGによる買い取り支援を受けられる太陽光設備の設置容量合計を52GWまでとする)の見直しを表明するに至った。今後他州も続く可能性もある。
また、大きな自治体の熱供給計画の策定も新しい州気候保護法に盛り込まれる予定となっている。これらの計画策定にかかるコストは州政府が負担する予定という。熱エネルギーはドイツのエネルギー消費における最大のセグメントであるにも関わらず、これまでは十分な対策が取られてこなかった。そのため、今後は大きな自治体から熱供給計画を定めて熱エネルギーの消費削減と再エネ化を図っていかなければならなくなる。先進的な街区開発計画や地域熱供給網を整備することが考えられる。
昨年、私は州首都のシュトゥットガルト市から陸路10分の距離にあるエスリンゲン市で開発中の街区について話を聞きに行った。ここでは市と自治体出資のインフラ管理会社であるシュタットベルケが共同で事業を行っており、12haの土地に600世帯が居住、仕事ができる街区をCO2中立(カーボン・ニュートラル)にするというプロジェクトが進行中である。完成はまだ先になるが、ここでは街区に電解装置を設置して水素を生産し、系統安定にも貢献することを目指している。
原発時代の終焉に向けて
去る5月14日、フィリップスブルク原発の冷却塔が解体された。同原発は2019年末に停止した原発である。コロナの感染拡大を防ぐ目的で見学客が集まるのを避けるため、冷却塔解体の時間などは非公表で行われた。これは異例なことである。
フィリップスブルク原発はBW州に位置し、稼働開始は1980年3月26日。今年でちょうど40年目を迎えたところだった。これでドイツ国内において現在稼働中の原発は6カ所となり、21年末に3カ所所、22年末にも3カ所が閉鎖されて脱原発が完了する。BW州ではネッカースヴェストハイム2号機(シュトゥットガルト行政管区のルートヴィヒスブルク郡)が22年に最後に停止する予定だ。
しかし脱原発はこれで終わりではない。停止したとはいえ、原子炉の放射線レベルは高く、解体はまだまだ先のこととなる。今回の冷却塔の解体もまだほんの手始めに過ぎない。原発の運営者であるユーティリティ大手EnBW(エーエヌ・ベーヴェー)は10から15年で原子炉解体を終えたいとしており、それにかかる費用を750万ユーロと見積もっている。解体後の敷地には今後も利用される直流変電装置のみが残され後は緑地化される予定となっている。
EnBWはすでにオブリグハイムの原子炉を10年かけて解体した経験があるが、フィリップスブルク原発はそれよりもかなり大きい。またオブリグハイム原発の解体作業はまだ完全に終了したわけではない。

また、地域住民は安全に配慮して時間をかけて慎重に解体することを望んでおり、早期に解体してコストを圧縮したい原発事業者との間で意見の相違もある。今後22年までに6基の原発を停止しても解体は同時には行えないため、脱原発は長い道のりである。また、原発の解体が終わっても今度は放射性廃棄物質の最終処分場建設という難題が立ちはだかる。
脱原発は終わっても原子力発電の後始末は今後も気の遠くなる年月をかけて行う必要があるのだ。
コロナ危機がエネルギー転換を止めないために
すでにドイツ経済はコロナ禍によってダメージを受けており、多様な業界が支援策を求めている。航空業界、自動車業界等は気候変動対策を鑑みながらの回復策が求められる。すでに連邦政府も『グリーンリカバリー』を表明しているが、足元の対策は心もとない。
ドイツには欧州でグリーンリカバリーの旗手となるべく、積極的で協調的な対策を自ら打ち出していくことが求められている。
(西村健佑)
【参考記事】
≪欧州レポート≫新型肺炎の嵐吹く今こそエネルギー投資を考え直す時
≪欧州レポート≫一進一退を繰り返すドイツの再エネ政策 ~それでも最終的に前進するために必要なこととは

